ボディバランス


アイマスのCDを一枚聞きました、という記事です。



というわけで、1年半くらい前に買って、そのまま仕舞いこんでいたミリオンライブ関連のCD「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER PERFORMANCE03」というものを、昨日聞いたので、感想をだらだらとメモしておきます。
春日未来・横山奈緒・望月杏奈・豊川風花・我那覇響の5人のアイドルがライブをしている様子、という設定で、最初に5人全員による開会宣言的なパートがあった後、一人ずつ順番に1曲歌ってトークをして、最後に全員で1曲歌う、という構成になっています。
このブログは基本的にテキスト系の作品を扱うブログなので、CDの場合もドラマの部分について書く、ということで。
以下、ネタバレを含みます。


























1、開幕
特に言うこともなし。春日未来と我那覇響の二人が何か思いついて提案したり行動したりする、他の3人がそれに対してツッコんだり話をまとめたりする、という展開になっています。しかし、後でもまた書きますが、未来にしろ響にしろ、頭の回転が早いわけでも発想がかっ飛んでるわけでもないので、大したことは起こりません。
その、和気藹々とはしているけれどもどこがどう面白いとも言えない、何やってたんだか印象に残らない感じが、全部終わった後で思い返してみると、味わい深い、とも、考えさせられる、とも言えますが、今は先に行きましょう。

2、春日未来
質問に対して春日未来が答えていく、という形になっていますが、とにかくその受け答えの内容がつまんないな、というのが第一印象w。
彼女は自分で、周りから「大雑把」だとか「考えが足りない」だとか言われる、と言っていますが、全くその通りなんですね。ゲームソフトで出てくるアイマスのアイドルたちも、それぞれにどこかしら常識に欠けている、ものを知らない部分がありますが、その、ものを知らない部分から、なんでここでそういう発想が生まれるのか、なんでこの話題がそんな展開に発展するのか、という発言が引き出されてくる。それがコミュというものの面白さになるわけですが、春日未来の受け答えにそういう発想の飛躍や機知は感じられなくて、単に、ああ、この子はものを知らないんだなあ、という感想にしかならない。
こう、彼女はバカですが、それは "愛されるバカ" ではあり得ても、”面白いバカ” "バカを売り物に出来るバカ" ではない種類のバカなんでしょう。現にこのCDの中の彼女は、自分を認めてくれ、愛してくれる仲間とファンに囲まれてライブをやっています。だから、CDの中では、未来はただバカなだけの未来でいられるのですが、そうでない場所に立たされてしまった時、彼女はどうするのだろう、どうしたらいいんだろう。
そんなことを思ったところで、"あなたにとって「アイドル」とは何ですか?" という、"アイマス究極のテーマ" 的な事柄を彼女がしゃべり始めるわけです。実にどうでもいいようなトークからごく自然にクリティカルな話題へと遷移する、この構成がなかなかテクニカルですが、ともあれ、ここは心を揺さぶられるものがありました。

3、横山奈緒
楽しい。このCDのドラマパートで一番楽しかったです。劇場版アイマスでもそうでしたが、関西弁キャラであり、同時に若干舌足らずでもある彼女の喋りには、他のキャラクターにない抑揚というか節回しと、時々声が鼻にかかった時出る甘さとがあって、単にとりとめのないことをわーっと喋っているだけで、耳に心地よくて、楽しい。ドラマの作り手もそれをわかっていて、奈緒の言葉そのものに焦点を当てて、とりとめのないことをわーっと喋らせるような内容にしてあるんでしょうね。

4、望月杏奈
特徴的なのは、望月杏奈のパートだけ、アイドルがステージ上で実際に声に出している台詞だけでなくて、”心の声” 的なモノローグが挿入されていることですね。つまり、"実際にどこかで行われたライブの様子を収録したもの" という形式が、杏奈のパートに関しては破られている。逆に言えば、"心の声" まで込みでドラマにしないと、どうにも杏奈というキャラクターを表現し切れなかった、説明し切れなかった、ということでもあるでしょう。
で、期待していたのとちょっと違った、が最初の印象としてあります。私は無印コミュの雪歩の、ステージに出る時のわけわかんない弾けた言動がわりと好きなんですが、それと似たような、それを超えるような弾けたステージを見せてくれる子なのか、と、歌を聞いて想像していたんですね。
でも、ドラマパートで喋っている時の望月杏奈は、雪歩的な、条件が揃うともう一人の自分が勝手に目覚めて暴れ出す、的なものとは違う。意識して、気を張って、計算して、”スイッチが入った自分" を作り出している。むしろ春香的なステージの臨み方に近いかもしれない。"素に戻る" という言葉が出てくるところなんか、春香と同じですね。
一方で、ステージ上でいきなり眠り出す、なんていうのは雪歩とも春香とも違って、あえてたとえるなら美希的ですね。感覚・精神が肉体を越えて突っ走るところと、自分の内側に流れている時間と外界の時間に大きなズレがあって、時として外界に対して極めて無頓着であるところ。
また、脇で見守っている仲間たちのことを意識する場面がありますが、ここで彼女は自分-仲間-ファン3者の関係をどう意識しているんだろう、なんてことも、考えれば考えるほど複雑ですね。
全体として、"素の自分" と "ステージ上の自分” の間になんとも複雑で不安定な関係があって、こうなっているんですね、と断定しがたいし、これからどこに行くのかも予測を立てがたいキャラクターだと思いました。難しい。

5、豊川風花
ギャグ系のノベマスっぽいキャラづけだなあ、というのが第一印象。これまでの3人では、感じなかったことです。いや、春日未来が主役のノベマスも横山奈緒が主役のノベマスも知っていますが、それらはキャラクターを生かすための一工夫があるもので、彼女たちの場合、とりあえずボケ役かツッコミ役のどちらかに当てはめて相方を置いて、というのではなかなかうまくいかないでしょう。でも、この風花って人なら、それが成立すると思った。
というか、このドラマ自体がそういう構成で、他のパートでは客席の歓声や笑い声は効果音のようなものですが、彼女のパートに限っては、客席の反応込みでないと成立しない掛け合いになっています。
もう一つ思ったのは、性的な匂いをほとんど全く感じさせないこのCDのドラマの中で、豊川風花のパートだけはそれが濃厚に立ちこめている。身体の持つセックスアピール、言動と身体のギャップによるそのセックスアピールの強調、さらには不特定多数の男性からの性的な視線に身体を晒していることに対する自意識、まで含めてパッケージで売り物になっているのが、豊川風花のドラマ。
なんというか、ちゃんと調べて書いているわけじゃないんで、私は彼女の年齢も経歴も知りませんが、アイマスで大人が主人公になるって大変なんだなあ、と思わずにはいられませんでした。あずささんですら、歩くとワープするとか、食い過ぎて太るとか、"伊織・律子の保護者ポジション" とか、わかりやすい属性をたくさん付け足さないと生き残ってこられなかったわけで。

6、我那覇響
響に頭の良い行動、気の利いたこと、まとめ役っぽいことをやらせたらおかしい(失礼!)。だからそんなことはしない。でも、ちゃんとトリらしい、先輩らしい仕事をしている。という按配が絶妙でした。
具体的に言えば、この人は周りにいる人間のことをよく見ているんだな、と。わかりやすいはっきりした形ではなくとも、響がいつも場にいることで、みんながまとまれる、安心できる部分があるんだろうな、と思えるのです。
そして響のドラマがそういう、わかりやすい武器があるわけじゃないけれど、という内容であることは、トップバッターの春日未来のドラマが、わかりやすい武器を持っていない人間であるところから始まっていたのと、平仄が合っているわけです。ドラマだけ聞いたら、の話ですが。

7、ボーナストラック
終演後の楽屋での会話。
・横山奈緒は食いしん坊キャラだったのか。だから劇場版で佐竹美奈子とセットだったのか。
・響、ペットの能力を使用するというテラフガシPみたいなネタ。
・ここでの望月杏奈の動き方、この流れはどっかで見たことがあると思ったら かーれるPの雪歩だ。喋らないから心の声まで見せないと出番が無いし、1人だけ心の声を出すとしたら置き場所はオチだな、という。そういう意味でも必然的だし、ここまで見せてようやくキャラクターの説明が終わる、という意味でも必然的な流れに思える。


その他、思ったこと。それぞれの歌について、という形で書きますが、必ずしも歌そのものの話ではありません。

1曲目、春日未来。最初、なんとなくすーっと通りすぎて、続くドラマパートを聞いて、もう一度曲だけ一周して、それから再び最初から聞き始めた時に、ようやく歌詞とか少し耳に入ってきた気がしました。
ようは、CD全体の様子が思い描けて初めて本当にしっくりくる、そういう曲であるように私には感じられて、たとえば先頭に響を置いて、ラストに春日未来が来る、なんて選択肢はあり得なかっただろうか、なんてちょっと考えたりしたんです。

が、その後で2曲目の横山奈緒を聞いて、ここはやっぱりこの順番で並んでないといけないんだな、と感じました。
横山奈緒の曲って、タイトルからして「ハッピー」で「ラッキー」で「ジェット」だ! って、ひたすら元気にすっ飛んでいます! 以上のことを言っていないわけです。
春日未来はわかりやすくなんにも持っていないが故に、私には取り柄はなんにもないけれど、笑顔だけは、想いだけは誰にも負けないよ、というわかりやすい物語の主役になれる。ところが横山奈緒の場合には、私はバカで何にも持ってないんだ、というには普通に常識があり過ぎて、気も口も回り過ぎて、ためにかえって、私の悩みはこのポイントだからこう突破するよ、という説明しやすいストーリーを売りにすることができない。まさか関西弁をテーマにして一曲歌うわけにもいかないですし(いや、方言であることを生かした歌や詩ってもの自体は、実際に世の中に存在するわけですけれども)。
二人がアイドルとして直面している問題は、似ているようでいてちょっとズレた場所にある。そしてそれは、未来→奈緒という順番で並ぶことで、初めてクリアに見えてくるものであるように思われます。

4曲目、豊川風花。遠足から全速力で駆けて帰ってくるみたいな望月杏奈の曲の後で、夕焼けの空の下をゆっくり歩きましょう、という展開、美しいと思いました。
ただ、それはそれとして、前の3人と同じ調子で元気一杯で歌う曲も、この人からこそ聞いてみたい、という気もしたのですが、しかし、そうはなっていないことに意味があるのでしょう。
彼女は、元気だけが取り柄! では勝負できない、そこで勝負してはいけない立ち場にいる。自分には何ができるかわからないし、この先どうなっていくのか不安だらけだけど、それでも元気いっぱい頑張っていくんだよ、という、前の3人が描いてきた世界が、豊川風花ひとりの存在によって、相対化され、広げられているわけです。アイドルが抱える問題はそれが全てではないし、たとえ新しい問題に直面して今までの自分が通用しなくなっても、そこにはまた新しい道が生まれるんだよ、と。

5曲目、響。曲の良し悪し、あるいは響に合っている合っていない、の問題ではなくて、どうにもこのCDの中で、1人だけ全然違う方向を向いているようにしか聞こえません。
あるいはドラマの方も、4人のアイドルが偉大な先輩我那覇響に挑む、もしくは和気藹々とやって来たけれども最後に響を通じてこれまで想像もしていなかったような、今の自分には出来ないようなステージに遭遇する、というストーリーだったら、これでも良かったのでしょう。でも実際にはドラマ的には、異常なくらい響が周りのアイドルの中に溶け込みまくっていて、誰も突出しないところが特徴、みたいな内容だったわけで。
こう、SPの時点ですでにあった、ステージの上ではあれこそが "完璧な太陽" だ、という存在で、しかし喋らせると、黒井社長は何をトチ狂ってこの子に "孤高の王者" が務まると思ったのか、という感想しか湧かない、一体、全体としてこのキャラクターを何者と捉えてどこへ向かわせたらいいのか、というもやもやした感じが、ここでもまだ続いているんだなあ、と思いました。

6曲目、全員曲。最後に振り子がこちらに戻ってきて、安心する、というか。3曲目が終わった時の勢いそのまま、ひたすら元気な曲で通してここに来ていたらどんなライブになっていたんだろう、というのは、ちょっと聞いてみたいですね。

さて、3曲目、望月杏奈の「Happy Darling」。まあ、この曲が入っているからこのCD一枚買ったようなもので、結果的にはCD全体、それなりに好きになったと言えますが、やっぱりこの曲だけは自分の中で特別なんだな、と。
この曲の加速感を何にたとえたらいいのだろう、と考えましたが、子どものころの山登り、の下り部分、ですかね。どの程度一般性のある体験かわかりませんが、小学生中学生の頃、遠足とか林間学校とかで山登りをさせられて、そういう時、終わりの方は誰も彼も駆け足になって下りていた記憶というのが、私にはあります。
いわゆるクライマーズ・ハイという奴ですが、山を一度登り切ったことで高揚、興奮していて、その状態でそろそろ道が楽で安全になるあたりに差しかかってきた、と感じた、あたりで自然と早足になって、一度勢いがつくと止まらなくて、どんどんどんどん駆け下りてしまう。後から思うと危ない、というより自分でも頭の中では危ないとわかっているんだけれど、足を止められない。同時にしかし、一日中体を動かしていたので身体を制御する感覚は鋭敏になっているところがあって、ぎりぎりのところでスピードを調節したり方向転換する判断はかなり精緻にしていたりもする。上半身からつんのめるように前に行こうとする動きと、足の方が位置エネルギーを得て勝手に加速していこうとする動きとの、微妙なせめぎ合いのような感覚。
……そんな、つんのめりながら駆け下りていく、衝動と加速みたいなものを感じるのが、杏奈の歌うこの曲で、唯一無二だと思います。どこもかしこも危なっかしくて、でもこの瞬間は無敵だ、という。









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