材料③


アニメ版シンデレラガールズ7話までの全面的ネタバレを含みます。












5話 補遺:

・末尾の、島村卯月・渋谷凛・本田未央のユニット名が決まる場面。Pが仮に書いた「ニュージェネレーション」という名前に対して凛が「いいんじゃない?」と言って、Pは「えっ?」と意外な顔をする。

→前記事での書き忘れ。Pが意外そうなのは、Pにとって凛がこんな風に好意的で積極的な反応をするのが珍しいからではないかと思う。そして、そんな珍しい反応を凛が示したのは、この名前が気に入ったから、というよりも、ストライキを起こした前川みくに対して誠実に対応して事態を収拾したPを見ていてPへの信頼を回復したからであって、彼女なりに信頼を表明するリアクションだったのではないか、と。
いやまあ、単に「ニュージェネレーション」というネーミングが、Pにとっては適当に考えた仮称に過ぎなかったけれど凛のセンスには合致した、というだけのことかもしれないけれども。


6話 補遺:

・Pと千川ちひろの会話
ちひろ「毎晩遅くまで大変ですね」
P「いえ」
ちひろ「いよいよですね~。みんな頑張ってますけど、目が離せないですよね。お城へ続く階段はまだまだ長いですから」
P「そうですね」

→前記事での書き忘れ。ちひろの「お城へ続く階段はまだまだ長いですから」。5話の「プロデューサーさんに、かかってますからね」もそうだが、ちひろのPへの対応は、立ち位置や口調から漠然とイメージするとPに寄り添っているようでいて(いや実際、心情的にはずっとPのことを気遣っているのだろうけれど)、内容的には、Pの肩にいかに重責がかかっているか、ということを喚起するようなものばかりである。
Pが自分のやっていることに自信を持てていて、周囲とも意志を共有できている、と思えている間はこれでいいのだろうが、Pが迷った時に、どうなるか。それでいいんだよ、と背中を押してくれる人は彼の周りに居るのだろうか? ということは、ちょっと気にかかる。


7話:

・未央の欠席をめぐる最初の問答。
凛「未央の家、教えて」
P「それは、こちらに任せてください」

→5話での「まだ決定ではないので話せませんでしたが、」という台詞もそうだったが、Pがアイドルに言う ”それは出来ない・言えない” という言葉はいつも、どこまでがPの一存では動かせない決まりごとで、どの程度がPの自己判断による決定なのか、聞く側からすると判然としない。
視聴者的にはそこがはっきりすると、要するにPの判断は間違いだったんだね、とか、結局会社のPより上のやり方がまずいんだよな、とか、”失敗をもたらした悪者” を容易に断定できてしまうわけで、よく考えられたつくりだ、とも言えるし、他方そんな曖昧なことではすっきりしなくて困る、と思う向きもあるのだろう。


・未央の家から戻ったPと、帰宅する島村卯月・渋谷凛が遭遇する場面。
卯月「プロデューサー?」
凛「追い返されたの?」
卯月「私、やっぱり未央ちゃんちに言ってみようと思うんです」
凛「住所、教えてよ」
P「それは、出来ません」
凛「なんで?」
P「本田さんが、今は会いたくないというのなら、その意志を、汲みたいと思います」
凛「それで、いいの?」
P「用事があるので」
凛「ちょっと」

→この会話を受けて、凛から卯月への「このまま、あの人に任せておいて、いいのかな?」という発言になる。Pの言動を観察して、信頼できるかどうかを量っているのは5話のストライキ事件の時と同様。しかし、5話の時よりも凛の質問は直截的であり、心情の移り変わりも、何度もの問答の繰り返しによって細かく段階を追って表現されている。

・卯月の欠席後、凛とPの会話。凛の最後の長台詞のみ引用。
凛「逃げないでよ」「あんた言ったよね。ここに来れば、今までと違う世界があるって。」
凛「私、見つかるような気がした。夢中になれる、何かってやつ。でも今は、見つかる気がしない。教えてよ。見解の相違って何? なんで未央を連れ戻さないの? あんたは、何を考えてるの?」
P「申し訳ありません」
凛「信じてもいいと思ったのに」

→7話全体を通じてのキーワードである、「信じる」という言葉が初めて出る場面。
この会話はPの部屋でなされているが、そもそもこんな風に、Pが部屋で仕事をしているところに、アイドルが呼ばれてもいないのに乗り込んでいって質問する、という行動自体、劇中では非常に珍しい。多分、7話まででは凛しかやっていないのではないか。
引用を省略した部分も含め、この場面の凛の台詞に特徴的なのは、
①未央も卯月も来ないという現状をどうするのかという課題
②「何を考えてるの?」「逃げないで」というPに向けての疑問・要求
③「夢中になれる」「信じてもいい」何かがあると思えるか、という凛自身の思いの問題
という3つの事柄が、シームレスに繋がって一まとまりの話題として語られていることである。
振り返ってみれば、5話のストライキ事件の時すでに、①現状の課題・②Pへの要求・③「信じてもいい」もの探し、という3つの事柄は、一体となって凛の言動を形作っていた。
前記事で私は5話での彼女の言葉を、”みく達にきちんと対応できていないPへの不信” ということだけに力点を置いて説明してしまった。けれども、「みく達じゃなくて、私たちを選んだのは、なんで?」という質問、”なぜ自分がアイドルをやっているのか” "なぜ自分がアイドルに選ばれたのか" という問いは、そもそもお話の始まりの時点から、ずっと凛の中にあったものではなかったか?
卯月や みくのように、自分からアイドルという存在に賭けるべき何か見いだして志願したわけではなく、Pと卯月という他人の言葉に導かれて入ってきた、凛。
何かしら問題が起こって状況が不安定になった時、彼女の前にはつねに "なぜ私はこの場所に居るのだろう" ”なぜ私はアイドルをやっているのだろう” という問いが立ち現れてくる。そして、"アイドルをやっている自分を信じられる" ということと、”自分をこの世界に連れて来たPを信じられる” ということは、彼女の場合不可分に結びついているのだ。
また、重要なのは、凛が「夢中になれる、何か」を、(これまでの活動を通じて)一旦は「見つかるような気がした」けれども、「今は、見つかる気がしない」と言っていること。いま見失っているからと言って、Pと出会う前の特に何もない、何もわからない状態のままずっと過ごしてきたわけではないし、7話のこの瞬間になって、突然2〜6話の経験が消去されて1話と同じ状態に戻ったわけでもない。
ところで、6話で23時を回っても仕事していて、ちひろに「毎晩遅くまで大変」と言われていたPが、ここでは凛以外のアイドルが誰も出社しておらず、会社全体ががらんとしている朝に、すでに部屋で仕事している。武内Pのガタイの良さは、つまり、このくらい頑健強壮な体の持ち主でなければ物理的に務まらない職である、ということを暗示していたのではなかろうか。

・新田美波、アナスタシアとPの会話。Pの部屋にて。 
ちひろ「以上が、このイベントの概要となります」
P「もし、わからないことがあれば質問してください」
二人「はい。……失礼します」と帰りかける。
P「あの、……先日のステージ、どう、感じられましたか?」
二人は顔を見合わせてから、話し出す。初めてのライブに出て嬉しかったこと、手応えがあったこと。しかし最後を次のように結ぶ。
「でも、今は、こんな状況で。どうしたらいいのか、わかりません」

→活動を通して、一旦はアイドル業について信じられる何かを掴みかけて、けれども「今は」「こんな状況」だからわからなくなってしまっている、という大きな話の流れは、凛の言葉と同じである。ただ、やりとりの展開の仕方は、凛の時とはかなり様相が異なる。
注目したいのは、二人が、Pの「質問してください」という最初の要望に対しては、何も言わずに帰ろうとしていることだ。もちろん、二人だって初めてライブに出て、Pに言いたかったことはいろいろあっただろう。そしてそれ以上に「今」の「こんな状況」が気にかかっていて、相談したかったことだろう(後段で、「今」のことは聞かれていないのに言及しているくらいなのだから)。でも、Pの前でそれは口に出さなかった(出せなかった)。
Pの「わからないことがあれば質問」という言葉は、前のちひろの台詞を受けているのだから当然、「このイベントの概要」についての事務的なやりとりを求めたのであって、「先日のステージ」や「今」も含めて広く意見を募集したわけじゃない。ちひろがプレゼンテーションして、Pが「質問」を募って、というこの流れは、おそらくアイドルへの事務連絡にあたって日常的に繰り返されてきた手順なのだろう。
未央や みく よりはよほど常識的な礼節や判断を弁えていそうな二人ですら(あるいは、弁えているからこそ)、Pの側から聞いてくれない自分の思いを、話すことはできなかった。(そう考えると、聞かれなくても自分からPに疑問や感情をぶつける凛の態度が、プロジェクトのメンバーの中でいかに特異であるかがわかる。)
退室しようとして「先日のステージ、どう、感じられましたか?」という言葉を掛けられて。美波とアーニャが顔を見合わせる前に浮かべた表情は、私には ”意外そうな顔” に見える。事務的なルーティーンのやりとりを超えて、Pの方から”美波が、アーニャが何を感じているか” なんて話が出てきたから二人は驚いた。そして、Pの方から踏み込んで聞いてきてくれたからこそ、二人はいつもは言えない「今」感じていること、「今」思っていることを打ち明けられたのである。
7話の中で、明確にPの行動基準が変わって彼が動き出すのはどこかと言えば、それはもちろん、卯月の家を出て ”雨の中を走り出す” 瞬間だ。けれども、今まで言わなかった「先日」「どう、感じ」たか? という言葉をアイドルに投げかけた時点で、彼はすでに、ライブの前の彼とは変化しているし、その変化はアイドルに影響を与え、状況を動かしている。
で。じゃあ、なんでこの時に限って、Pはそんな質問をしたのか、というところなんだけど。もちろん一つには、未央に追い返されたり、凛とこじれたり、という状況を受けて、他のアイドルに対して働きかける必要を感じていた、という要素があるだろう。凛を勧誘した時も、そしてみくのストライキや未央の欠席に対してもそうだったように、動かなければならないと思った時はアイドルに対して働きかけようとする人である。
が、それ以上に、P自身にもわからないこと、迷っていることがあって、だからアイドルに対してそれを聞かずにはいられなかった、という側面はないだろうか? そう思って、私はここで書く話の筋を、次の卯月の家でのPの台詞の内容や、zeit氏の記事を読んだ印象から、つまり彼はこの時点で "アイドルとは何か" ということを見失っていて、とするつもりだったのだけれど。考えているうちに、まずは、もっと単純に言葉通りに捉えればいいのではないだろうか、と思った。
つまり、Pはこの時、「先日のステージ」に立ったアイドルの感想を、聞かずにはいられなかったのだ。
未央に「前のライブ」と言われても、城ヶ崎美嘉のライブのことが思い浮かばなかったP。彼にとって6話のライブは、”シンデレラプロジェクトの初ライブ” だった。3話のライブは、別の担当者が運営し、管轄外のアイドルが務めた仕事にお手伝いの人員を貸し出しただけで、彼自身の仕事は6話のライブが最初。……というのは当然なのだが、それ以上に、Pはこの6話のライブをこそ、”自分のシンデレラがアイドルになる最初のステージ” として、ずっとイメージしてきたのではなかったか。
素晴らしい笑顔の持ち主だと、素晴らしいアイドルになってくれる存在だと確信して自分が連れて来たシンデレラたち。彼女たちが、初めてアイドルの魅力を知り、「夢中になれる何か」を見つけて、これから歩んでいく道のたしかな礎となる思い出……。そんなステージになることを思い描いて、Pは6話のライブを準備してきたのではないだろうか。
そして、後の未央との会話で明らかになるように、P自身は実際、ライブは成功だった、素晴らしいステージが出来た、と感じていた。それはきっと、舞台に立ったアイドルたちだって同じ気持ちでいるに違いない、と信じられるくらいに。
でも、蓋を開けてみたら、本田未央はアイドルを辞める、と言い出すくらいに失望し、渋谷凛には「今は、見つかる気がしない」と突き放され、順風満帆だった筈の「ニュージェネレーション」は瓦解寸前である。何もかも、自分が用意した”初ライブ” のせいだ。
アイドルには「夢中になれる何か」がある、と断言した人間の内に、アイドルってこんなものだから素晴らしいんだ、という ”信じられる何か” が存在しなかった筈はない。でも、ライブの結果、それは打ち砕かれた。アイドルが満足できる素晴らしいステージって、一体なんだったんだろう? 自分がアイドルのために出来ることって、自分がやりたいことって、一体なんなのだろう? 
Pもまた、見失ったのだ。一旦は見つけていた筈の ”信じられる何か” を。未央が、凛が見失ったのと同じように、そして彼女たちが見失っていることそのものによって。
だけど、あのライブを体験したアイドルは、「ニュージェネレーション」だけじゃない。まだ「ラブライカ」がいる。想像を逞しくするならば、本当のところ、Pは二人からこんな答えを聞きたかったんじゃないか。ライブに出てこんなに嬉しいことがあって、だから私は今こんなに確信をもってアイドル活動に臨めていて、将来はこんな風になってみたいです、と。Pと同じように、あれが純粋に ”初ライブ” だった二人なら。その後の活動も順調に進捗している美波とアーニャなら。
でも、二人から返ってきた最終的な結論は、「今は」「どうしたらいいのか、わかりません」というものだった。結局のところ、誰に聞いても話は、未央のライブへの失望によって生じた「こんな状況」の問題に帰結する。そして、そうである限り6話のライブは、アイドル全員に ”信じられる何か” を見失わせた、純粋な失敗である。

・卯月の家での会話。長いのでかいつまんで。
卯月「プロデューサーさんも、風邪なんですか?」
P「えっ?」
卯月「なんだか、元気ないような気がして。」

→さて、この場面で卯月は、当たり前のようにPの体調を話題にしているけれども。この物語、果たしてここに至るまで、 ”Pが、他人によってP自身のことを気遣われる” という場面があっただろうか? ちひろには先に挙げた「毎晩遅くまで大変ですね」の台詞があるが、しかし彼女はすぐに「まだまだ先は長い」「プロデューサーにかかっている」という方向に話を持っていく人であり、部長は普段Pとどんなコミュニケーションをしているんだか、どの程度指揮命令しているんだかさっぱりわからない。凛からは疑われ、値踏みされてばかりだし、他のメンバーとはそもそもろくに会話がない。
卯月の他人への接し方については、4話に言及する機会があれば少々書いてみたいが、卯月がいる場面では当たり前だけど、卯月がいない場面では全然当たり前じゃない、という事柄がなんだかいろいろあるお話だなあ、というのは、あちこちの場面で感じることではある。

卯月「私たち、この先どんなお仕事するんでしょう?」
P「島村さんは、今後、どうなりたいとお考えですか?」

→言うまでもないが、6話のライブの後、未央、凛、美波・アーニャと順にアイドルが心情を口にして来て、”この先のお仕事” が話題に上るのは、これが初めてである。
ここで、卯月の側から持ち出した話の流れとは言え、Pの質問が美波・アーニャの時の「先日のステージ」ではなく「今後、どうなりたい」なのがちょっと面白くて、Pの心境をいろいろと想像してしまうが。どうであれ、どちらの話も結局、アイドルの側からは過去・今・今後の話が繋がって出てくる点は一緒である。そして、卯月の話もこれまでの活動で嬉しいこと、楽しいことがあって、というところまでの流れは、凛や美波・アーニャと同じ。
ただ、話の結びだけ違いがあって、卯月は
「次は、テレビ出演できたら、いいなって。」
と言う。ライブの後、アイドル自身が初めて語った「次」への期待、希望。

卯月「実は、この前のミニライブなんですけど。実は、ちょっと心残りがあって」

→この台詞を受けてのPの反応。台詞はないが、膝の上で両こぶしをきつく握りしめる様子が写されている。「この前のライブ」の「心残り」と聞いて、次に出てくるであろう言葉にPは怯えている。たぶん、彼は卯月が、”未央ちゃんがあんなことになって” "私は今、どうしたらいいかわからなくて" ……と言うと思ったんじゃないだろうか。
まあ、ともかく実際に卯月から出てきたのが、その瞬間のPにとって予想を超えた言葉であったことは間違いない。卯月が何を思っていてこうなったのか、というのはたしかに考えがいのあるテーマなのだが、いい加減この記事も長くなってきたし、すでに他の方がいろいろ書かれているところでもあるので、この記事では特に考えない。

・帰社したPとアイドルたちの会話
みく「やっと…、やっとデビューまで信じて待ってよう、って思えたのに。みく達、どうしたら」

→前段の台詞を省略したが、大きな話の流れはやはり、凛とも、美波・アーニャとも同じであることがわかる。一旦は ”信じられる何か” を見い出した筈だったのに、今は”どうしたらいいか、わからない” 。ただ、今度はPの応える言葉が、違うのだ。
前川みくについては、5話について書く機会があれば、また改めて。
この場面では扉外で部長が耳を立てていて、廊下の向こうに美嘉がいる。また、7話ラストの謝罪の場面では、途中で部長が退室する際に、扉外に美嘉が居て、廊下の向こうにちひろが居ることが判明する。ちなみに普段仕事の話をしている時は大抵、ヒマなアイドルが扉外で耳を立てているわけで、よくよく聞き耳する人の多い部署である。




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