1月25日、蒼い緋色


幸せってなんだ。
好きなシリーズの新作が来ることさ。


以下の作品のネタバレを含みます。

ゆらゆら氏 【卓遊戯】 東方緋想剣 session 【SW2.0】シリーズ (13年07月12日〜連載中)








毎週日曜日に新作が投稿されるシリーズなので、もう次の回が来ていますが、一つ前の週から。




ゆらゆら氏 【卓遊戯】 東方緋想剣 session 11-8 【SW2.0】 15年01月25日
緋想剣 11−8 2:20 のコピー



比那名居天子・八雲紫・多々良小傘・東風谷早苗の4人がプレイヤーであるこのシリーズでは、天子&紫の演じるキャラクター2人、小傘&早苗の演じるキャラクター2人がそれぞれ、4人でパーティを組む以前から長年行動を共にしてきた間柄、という設定になっています。従って、前者のコンビ、後者のコンビの中ではそれぞれ深い結びつき、相互理解があるけれども、同時に2人だけで人間関係が完結しているようなところがあって、他には深い交流のある相手がいない、というのが、シリーズ初期の構図でした。
話数が重なるにつれて、パーティの構成員ひとりひとりに、それぞれ因縁のあるNPCが出来ていき、パーティを中心にした人間関係が網状に広がっていく、というのは、多くのTRPG動画で見られる現象ですが。本作では、全体として、また特に第9章から現行第10章にかけてのエピソードにおいて、最初は各々の連れ合い以外に深い結びつきを持たなかった4人それぞれが、次第にその外に新しい人間関係を築いていく様子が、非常に意識的に、周到に描写されているのを感じます。

そういう流れの中で見て味わい深いのが、たとえば上に貼った場面です。へまをやらかしたヴィオ(紫のPC 左の金髪)をテンシ(天子のPC 右の青髪)がからかおうとしたところに、NPCのルネ(大妖精 中央の緑髪)が割って入った、というシーン。
テンシ(天子)とヴィオ(紫)の間で、何かあるごとに一方が一方をイジるのがふたりのコミュニケーションのありようであり、心のスキンシップ的なものなんだ、というのは、読者には周知のことです。これまでに幾度も、2人のそういう風景を目撃してきたからです。しかし、子どものルネ(大妖精)には、そういうこのコンビの呼吸、機微はわからない。彼女は、"大好きなヴィオお姉ちゃんが本当にいじめられている" と思って、真剣に止めに入っています。

いきなり話が飛びますが、この場面を見て私が思い出したのが、リンドグレーンの『名探偵カッレくん』でした。
主人公のカッレくんは、友人のアンデス、エーヴァ・ロッタと3人で、「白バラ軍」というチームを作っています。もう一つ、「赤バラ軍」という3人組を結成している遊び仲間がいて、彼ら6人には彼らの中だけで通じるいろんな決まりごとや暗黙の了解があり、日々2チームでいろんなことを競って遊んでいる。
カッレ達にとって、「白バラ軍」「赤バラ軍」の仲間うちでの遊びは、何よりも楽しく充実した時間です。けれども、ならばそういう時間がこれからもずっと続いていくのか、というと、たぶん違う。カッレとアンデスはすでに、エーヴァ・ロッタを異性として意識しつつあり、同時に女の子と一緒になって遊んでいることを気恥ずかしく思うようにもなっている。今のままの関係はもう、そんなに長くは続かないんじゃないか、ということが読んでいるうちにわかってきます。
そういう状況で、シリーズ最終巻になって新たに登場するのが、ラスムスくんというキャラクターです。カッレたちより六つか七つ年下のラスムスは、魅力的な年かさの少年たちに憧れてやまず、仲間に入れてもらいたくて仕方ありません。けれども実際のところ、5歳のラスムスは、カッレたちが共有している暗黙のルールとか呼吸とか洒落といったものは、ほとんど理解してないのです。だからラスムスの言動は、カッレやアンデスの目線で見ればまったく空気を読めていない、場をぶちこわすようなものばかり、ということになります。
そんな存在が否応なしにお話の中に入ってきて、さて彼らはどうなっていくのか……というのは『名探偵カッレ』の話であってこの記事の本題ではないので、『東方緋想剣』に話を戻しますが。まあ、この場面のルネ(大妖精)を見て、なんとなく ”カッレとアンデスの間に居るラスムス” というイメージが思い浮かんだわけです。

この場面で始まりかけたのは、二人の間でずっと続いてきて、これからも変わることなく繰り返されるかに思えたもの。他に何もいらないくらい二人だけで満ち足りていて、居心地の良いじゃれ合い。でも今、それはとても自然な形で、中途で水を差されて打ち切られた。二人がこの物語の中で、少しずつ築いてきたものによって。
これからも、二人の結びつきそのものは、決して消え失せることはないだろう。けれども、その結びつきのありようはきっと、この旅行に来る前と同じではない。
本音を言うと、私はそのことがちょっぴり寂しい。そして、だけどその寂しさが、とても嬉しいのです。





緋想剣 11−8 9:20 のコピー



同じ回から、もう一つだけ。極度の人見知りであるテンシ(天子)が、よく知らない相手と二人で会話することになって……、という場面。
テンシの人見知りは、この作品に集う紳士淑女の間では、普段は威勢のいい彼女が初対面の相手を前に急にキョドる、この瞬間の表情を楽しむのが通で……、などと賞味されている名物でありますが。
たぶん、最初は単にネタとして面白がっていたようなそんなキャラクターを、いつしか多くの読者が、慈しんで愛でるようになり、そして今は一緒になって応援している。それは、なんとなしに偶然生じた変化ではなく、作品が細心の注意を払って彼女たちの時間を積み重ねてきたからこそ生まれた空気です。
この回にしても、出来事としては買い物して、人と出会って、家でごはんを食べて、また出発した、というだけのエピソードなんですよね。そんななんでもない日常のちょっとした細部、ひとつひとつに大切な時間が詰まっていて、それが有機的に繋がっているからこそ、彼女たちの今があり、これからがあるのです。

あと、このシーンの最後、一瞬だけテンシ(天子)の表情が変わります。その一瞬の表情がいい、とコメントした人がいたのが、個人的に興味深く、また感慨深いです。
細かな表情の変化と、変化させるタイミング、さらに立ち絵の配置そのものやテキストの表示時間への細やかなこだわりは、私もこのシリーズの魅力だと思っています。(そしてそれは、私がストレートP、ペデューサーP、瑞P、不在Pなどのノベマス動画を通じて、もっとも馴染み、もっとも好んできた表現技法でもあります)。でもまあ、アイマスのテキスト系でもこれだけ素材と編集手法が多様化した当今、こんなシンプルな技法にこだわって突き詰めた表現なんて、そうそうお目にかからないわけで。ましてやアイマスのテキスト系とはかなり異なった経過で発展してきた東方動画の中で遭遇することになるとは。
で、こんな何気ない箇所にも目を止めて、この動画はここが魅力だな、特長だな、という部分を見い出す人が増えていく、また光を当てられる要素が増えていく様子を見ると、作品が読者を育てているんだなあ、と思うのです。

まあなんというかこの作品には、こういうものが好きだな、こういうものがあったらいいな、と私が思うようなものが、あまりにも理想的な形で備わり過ぎているのです。しかもそんな満ち足りた時間が、私が出会ってからだけでももう8ヶ月以上、絶えることなく毎週やってくる、という。こんなに幸せを貰い続けていいのだろうか、と怖くなってしまうわけで。
願わくば、この幸せな時間が、不本意な力に阻害されることなく続きますように。そしていずれ、相応しいもっとも幸せな終わりを得ることを、心から願っています。







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