1月24日、3人寄れば


幸せってなんだ。
好きなシリーズの新作が来ることさ。


以下の作品のネタバレを含みます。

EX団氏 東方卓遊戯】EXボスのSW2.0【SW2.0】シリーズ (14年09月07日〜連載中)








【東方卓遊戯】EXボスのSW2.0 5-2【SW2.0】 (15年01月24日)より

EXボス 5−2 6:20 のコピー




このシリーズは週2回というハイペースで投稿されているので、もう次の回が来ているのだけれど、一つ前の話から。
上に貼った場面、旅先で泊まった家で、6人パーティなのにベッドが3つしかない。で、どう部屋割りして誰をベッドに寝かせて、という問題だけでしばらく会話が盛り上がる。部屋割りが決まって、分かれて寝る段になっても、今日の出来事を振り返ったり各々の身の上話があったりで、それぞれの部屋でしばらく会話が続く。その様子を描写して、この回は終わる。

キャラクターの設定の説明がなされる後段はまだしも、前段の "ベッド3つしかない問題” は、依頼を受けて探索して敵と戦闘して戻ってきて、という、ゲーム的なストーリーの本筋には全然関係ない、無くたって何の支障もない描写だ。
でも、このシリーズの作者はそうやって、ゲーム的な手順がひとつ進行するごとに、まっすぐその場のシナリオを進行させるだけなら無くても問題ないような要素を、自然に入れ込んでくる。
いま彼女たちが訪れたこの街にはどんな風物があって、それに興味を示すのはこの中の誰だろう? 
いま入った家の中はどうなっていて、それに対して誰がどんな反応を見せるんだろう? 
そこに、ああ、いかにも彼女たちならこんな時、こんな風に動き回って、こんな風にやりとりしているんだろうな、という光景が立ち上がってくる。あるいは逆に言ってもいい。そういう光景があればこそ、ああ、彼女たちはこんな人間で、こんな関係なんだな、というイメージが読者の中に生き生きと立ち上がってくるのだ。


このシリーズのプレイヤーは、二ッ岩マミゾウ、八雲藍、藤原妹紅、封獣ぬえ、古明地こいし、フランドール・スカーレットの6人となっている。
このうち、ぬえ・こいし・フランの演じるキャラクターは、未成年という設定。描写の上ではこの3人がいつもにぎやかに動き回っていて、マミゾウ・藍・妹紅の3人は ぬえ達に対する保護者、フォロー役みたいな立ち位置である。
こういう、3人組の子どもが前面でにぎやかに動き回って、お話の推進力になる(そして残りの面子がそれをサポートする大人役になる)というパーティ構成のパターンは、卓遊戯では古くから見られるもので、たとえばVictoria氏の【デモンパラサイト】ゆかりんは卓ゲで遊びたいお年頃番外シリーズ(10年06月20日〜最新13年04月29日)における天子・妖夢・霊夢がそういう ”子ども3人組” だし、こーまー氏のガープス・百鬼夜翔を幻想郷住人がプレイシリーズ(10年05月31日〜12年07月03日完結)におけるレミリア・空・霊夢の3人もそうだ。(ちなみに、どちらも大好きな作品です。)

ところで、いわゆる「EX3人娘」という、ぬえ・こいし・フランを3人セットのユニット的な存在として捉える観念が、東方2次創作の中に存在するわけだけれども。
近年の卓遊戯の作者には、この「EX3人娘」を好きな人が少なくないようで、ぬえ・こいし・フランを仲良し3人組としてメンバーの中に組み込んでいるシリーズがいくつも見られる。(たとえば、『さとりとEX三人娘のアリアンロッド2E』、『狂無正の艦これRPG』、『ロリっ娘たちのラクシア・サーガ』、『塔と魔剣と学び舎と』、など。)
そうした作品では、したがって、にぎやかに動き回る「EX3人娘」とフォローするその他のメンバー、という構図が、しばしば生じる。
「EX3人娘」というユニットの存在によって、(もちろん、各々の作者自身は、必ずしも意識的に先行作品のメソッドを踏まえたわけではないだろうが)、”子ども3人組” によって楽しいお話を紡いでいく、という2010年以来の卓遊戯動画の表現の系譜が、現在まで連綿と受け継がれる結果が生まれたわけだ。


本作『EXボスのSW2.0』もまた、そうした ”子ども3人組” を描く動画の系譜の中に、位置づけることができよう。
この系譜の中において比較した時(とりわけ「EX3人娘」を扱う作品の中で比較した時)、本作の特徴は、”キャラクター個人は目立たない” という点にあると思う。他作品と比べて、キャラクターをひとりひとり、個別に観察した時には、独創的で目立った性格づけがなされている、とはあまり思えないのである。
好奇心旺盛でいちばんフリーダムに動き回る こいし、おとなしくて無邪気なお嬢さんキャラのフラン、そして男の子役でツッコミ役の ぬえ、という構成は、「EX3人娘」内での役割分担としてはよく見られるもの。そして、似たような要素を持ち、かつもっと強烈でエキセントリックな性格づけがなされたキャラクターが、すでに先行作品中に存在する。(たとえば、『ロリっ娘たちのラクシア・サーガ』の、おとなしくて無垢だが腐女子要素のあるフラン。あるいは、『困ったちゃんのソード・ワールド2.0』の、誰の言うことも聞かなくて手癖の悪いこいし、など。)
にも関わらず、『EXボスのSW2.0』のキャラクターたちは、とても生き生きとして、記憶にくっきりと残る存在として感じられる。(私ひとりの感想ではなくて、視聴者が寄せたコメントにしばしば、キャラクター同士の掛け合いの生き生きしていることを、本作を見る喜びとして指摘したものが見られる。)
それは、何故だろうか。

何がそんなに印象的だったのだろう、と振り返った時、私の中で思い浮かんでくるのは、たとえばこういうところである。
ぬえ・こいし・フラン3人の中で微妙な年齢差や性の違いがあることで生じる、ちょっとした見栄やライバル心や連帯感。
お姉さん役の妹紅と行動することで引き出される、フランの妹っぽさ。
マミゾウと会話する時に顔を出してくる、子ども組の中に居る時には見えにくい ぬえのシビアで醒めた側面、あるいは逆に、ませているようでまだまだ子どもっぽい側面。
そして、各々単独ではそこまで破天荒でもない彼女たちが、3人セットになってわちゃわちゃすることで、また、それに振り回される役の藍がいることで、大変に奔放で騒がしい集団に見えてくるという、コンビネーションの妙。
”誰のどこが印象に残った” ではなくて、”誰と誰が一緒に居る様子が印象に残った” 。

キャラクターを単体でどう面白おかしく印象づけるのか、ではなくて、キャラクター同士の関係性、コンビネーションの中でそれぞれのキャラクターの個性、面白みが引き出されてくるような作り。
そして、最初に述べたような、お話の細部のそこかしこに、彼女たちが自然に動き出し、会話しだすようなシチュエーションを見いだし、描き入れる営為の積み重ねによって、実際にそれが引き出されてくる。
そういうところが本作の特長であり、自分が惹きつけられた理由なのだと、私は思っている。

だから、この作品について、どの部分が好きなのか、どのキャラクターを気に入ったのか、と聞かれたならば、私はこう答えるだろう。
この作品の中に居るキャラクター全員が好きで、彼女たちが居る風景全体が好きなんだ、と。




【東方卓遊戯】EXボスのSW2.0 5-3【SW2.0】  (15年01月28日)より

EXボス 5−3 1:12 のコピー



せっかくなので、最新話からも、少しだけ。
風景描写が得意な書き手というのは、ニコ動上にも何人もいるわけだけれども、このシリーズは視聴者から、格別に風景描写が個性的な作品、と認識されているわけではないと思う。
で、この場面にしても、 ”森に入りました。遭遇表を振ってください” の一行だけで終わって別におかしくはないところに、さらりとこんな弁舌が差し込まれているんだけど。それを、コメントが特別とも珍奇とも思わず、当たり前の景色として通り過ぎているところが、なんというか、この作品らしいな、と思った。




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