ぎりぎりのリレー


うろ覚えで語ろう劇場版シリーズ。劇場での再公開って、まだやっているんでしたっけ。

劇場版アイドルマスターのネタバレを含みますが、劇場版の内容についてどの程度正確な記述がなされているかは、非常に怪しいです。





春香が全員を集めて、振り付けを変更するかどうかのアンケートを取る場面。
春香が、「でも、まあ可奈ちゃんも戻ってくるかもしれないでしょ?」「できたらそのことも、可奈ちゃんときちんと話してから決めないと」と言った、このあたりでのことだったと思いますが。
望月杏奈が、はっと顔を上げていましたよね。

このすぐ後で、杏奈は春香に、矢吹可奈から届いていたメールを見せに行き、

「急にメールが来て、どうしたらいいかわからなかったから、レッスンが終わってから相談しようと思ってたんですけど…」

と言います。
つまり、この会合が始まった時点で、杏奈の手許にはすでに、可奈からのメールがあった。にも関わらず、彼女は「どうしたらいいかわから」なくて、ずっとそれを言い出せなかったわけです。
以前の記事で私は、バックダンサーズの後半での行動が、仕事全体に、「みんな」(特に765プロ側)にかかる「迷惑」、を気にする意識によって強く規定されている、と述べました。
この場面での杏奈の「どうしたらいいか分からなかった」心理も、単に可奈からいきなりびっくりするような連絡が届いてとまどった、というだけではなく、「迷惑」の意識が強く影響している、と見ることができるでしょう。
なにしろ、メンバー全員がものものしく集まって、仕事全体が成り立つか成り立たないか、というレベルの話をしている時、なおかつ自分自身が仕事の足を引っ張っている、という意識に苛まれている時に、可奈のことはどうしようか、と周りに向かって発信していいものか、言い出せるものか。
もちろん、可奈のことが心配でない筈がありません。相談したくない筈がありません。言いたい、でも言い出せない。

けれども、そこで春香が、私は可奈のことを忘れていないし、可奈の意志を必要としている、と明言した。みんなの前で。
それは、「どうしたらいいかわから」ない気持ちを、自分ひとりの内に抱え込むしかなかった杏奈にとって、拠り所になり、そして後押しする言葉だった。いまここで打ち明けていいし、打ち明けるべきだし、それを受け止めてくれる相手がいるんだ、と。だから、ここで誰よりも、杏奈がその言葉に、その言葉の意味に反応する。

もし、このタイミングで春香のこの発言がなかった場合。もちろんその場合でも、春香個人は可奈を放置はしないでしょうし、杏奈は台詞の通り、個人的に相談をしていたことでしょう。そしてその結果、春香が動いたり伊織が差配したりして、可奈を連れ戻すこと自体は可能だったかもしれない。
けれどもその場合、実際の経過のように、ここで可奈の問題がメンバー全員、ライブ全体の問題として共有されることはなかった。そして、志保の「全員のライブの練習より何よりも、一人の かもしれない を確かめることが、大事なんですか?」という台詞が引き出される展開も生まれなかったでしょう。
そんな if を想像してみると、このタイミングで可奈からのメールが届いていて、春香が「可奈ちゃんと話してから」の一言を発して、杏奈がそこで動いて、というこの場面のシークエンスが、各々ほんのちょっとでもずれていたらこんな風には繋がらない、ぎりぎりの細い繋がり方で成立していたと感じます。

この話をなんで書いているかというと、一つの理由は、これから劇場版について書いておきたいいくつかの問題の、起点になる話だと考えているからです。
もう一つの理由はもちろん、2度目以降の視聴で、この場面が印象に残ったから。個人的には、再視聴時の私にとってのクライマックスはここだったな、と。


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