プチシューは砕けない


そんなに長い話じゃないんだけど、どこかにおまけのように付け足すよりは、単記事にしようかな、と思ったので。

アイドルマスター劇場版のネタバレを含みます。





矢吹可奈について。1回目に見た時は、なんとなく、彼女は辛くなって逃げたんだな、という程度の認識しかなかったんだけれども、そうではないんだよね、ということ。


うまく踊れない、周りからは遅れている自覚はあっても、それまではずっと「みんなと一緒」にライブを目指すことにこだわってきた可奈が、ミニライブ後に練習に出て来なくなったのは何故か。
決め手になったのは、明らかに、北沢志保の
「あなたが一番出来ていないんじゃない。」
「みんなでとか、一緒にとか言う前に、自分のことをどうにかしなさいよ。」

という台詞。
これを受けて、可奈は春香に

「次は失敗しないように、みんなと一緒に…じゃなくて、私、頑張ります」

と言う。

つまり、志保の言うことは正しい、「みんなで一緒に」を言う前に、まず自分がひとりで、周りに迷惑をかけないだけ踊れるようにならなければならないんだ、と、可奈は認識した。
まずは出ても周りに迷惑しか掛けない全体の練習などに出ず、自分ひとりで課題を解決する努力をすべきなのであり、それが終わるまでは全体の練習に戻ってくるわけにはいかない。
そう決意したからこそ、可奈は練習に出なくなったのであって、なんとなく居づらかったり、しんどくてみじめだから逃げ出した、わけではないのだ。可奈自身としては、そのうち自分ひとりで上手く踊れるようになったら「みんな」のところに戻るんだ、という気持ちだったのだろう。

お菓子をめぐる行動も、同様で。実際には自分で制御できない暴食になっていたとしても、可奈自身の意識としては、うまくいかない時はまず甘い物を食べて、次に土手で歌って、という、彼女がずっとやってきたルーティーンに従って、問題解決のために行動しているつもりだったのであり、何の展望もなくただ欲求のままにやけ食いをしていたわけではない。

問題は、けれども可奈の中には、自分ひとりで出来ないことを出来るようになるための解法は備わっていなかった、ということで。
自分ひとりでどうにかしようと足掻けば足掻くほど、自分のパフォーマンスも身体も精神も悪化していく。どうにもならない負のスパイラルに陥って、彼女はついに、「みんな」の元に戻ることを諦める。

諦めた後(それがどこの時点かはわからないが)も、可奈はただ逃げ隠れしていたのではなかった。彼女のうちには、辞めるからにはきっちりけじめを付けなければならない、という意識があった。
だからこそ可奈は、最後にもう一度、春香のところに直接電話をかけてくる。もちろんあの電話を掛けた動機には、それまでの各人の働きかけや、可奈自身の未練や、いろいろな要素が混じり合っていただろう。けれども、直接的には、今までのことを謝罪して、辞める決意を明確に伝える、というはっきりした目的があった。

「あの、すいませんでした。私も、天海先輩とこのままお別れするの、嫌だったから。」
「練習、ずっとさぼっちゃってすいませんでした。たくさんの人に迷惑をかけちゃって、すみません。」

練習やミニライブにおいて足を引っ張った「迷惑」。
練習を無断で休むことで掛けた「迷惑」。
春香と特別な関係を結んで、掛けられた好意や期待を裏切る「迷惑」。
最初から最後まで、「みんな」あるいは特定の誰かに掛かる「迷惑」が、可奈の発言の方向性を決定づけているわけだけれども。
そういう、自分がなした一つ一つの「迷惑」を可奈は明確に意識していて、その一つ一つに謝罪した上で、出来ない自分が参加することでさらに「迷惑」がかかるから、自分は辞めなければならない、と告げる。
謝罪と決意をはっきり伝えてから辞めなければならない、という、明確な意志を抱いて行動する有り様。そこには、前半において、出来なくても失敗しても「みんなと一緒」にライブをやり遂げたい、と思って行動し続けた、彼女の明快で強い意志の持ち方が、反転して現れているんだ、とも言えるかもしれない。


可奈自身としてはずっと、どの段階においても、自分は今どうすべきか、というはっきりとした判断と意志のもとで行動していたんだな、と。そこは2回目の視聴で初めて気づいたので、書いておきました。

あと、どなたが書いたことだったか忘れたけれども、ミニライブまでの可奈が、ロールモデルとして春香を意識しながら振る舞っている、というのは、確かにその通りかもしれない、と思いました。(もちろんそれは、彼女自身の元々の性格、行動原理はその振る舞い方に反映されていない、ということではありませんが。)


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