等身大のなんとやら(最近みた「東方手書き劇場」)


なるべく小出しに書いてリハビリテーションしたいねシリーズ、その1。
アイマス動画における「アイマス紙芝居」に相当する、「東方手書き劇場」タグの動画について。

servoss氏 [東方] ガンバレ!射命丸! [手書き]  (12年07月07日)

上記動画のネタバレを含みます。





servoss氏は、投稿作品のほとんどが再生数10万以上、という「東方手書き劇場」界隈の売れっ子作者の1人ですが。
貼っておいてなんだけれども、本作はこの作者の作品群の中で、とりわけ作者の魅力やオリジナリティが強く発揮された代表作、というわけではないでしょう。また、射命丸文を主人公とした作品の中で、特に優れていたり新しい境地を示していたり、というものでもないと思うのです。
けれども、妙に私の心に刺さった。

射命丸文(しゃめいまる・あや)は天狗の妖怪で、東方世界のあれこれを記事にして配って回る新聞記者。直近で、私の興味がもっとも上昇している東方キャラクターであります。
どこにでも首を突っ込んできて、面白おかしく記事に仕立てようとする、というイメージは、話を回す上で非常に使いやすく、東方ストーリー動画における便利屋の一人と言えるでしょう。
つまり、どんなキャラクターが主軸のどんなストーリーであれ、なんとなく適当に射命丸文を出してうろつかせるだけで話がにぎやかになり、最後になんとなく射命丸文がドジを踏んだりしっぺ返しを受けたりするだけで話にオチがつく。
で、本作はまさに、射命丸文があっちこっちに首をつっこんだ末、しっぺ返しを食らってオチになる、あらすじとしてはそれだけの動画です。だから、特に新境地ではないと書いたのですが、しかし、私の射命丸文熱が顕在化した直接のきっかけは、間違いなくこの動画でした。

射命丸文をめぐる設定の中には、すごく強い、とか、めちゃくちゃスピードがある、とか、とっても頭の回転が速い、とかいうものもあるようです。
しかし、本作で描かれる射命丸文の場合、そういう強者的設定はほとんど表現されません。自分より強い者に囲まれておびえて暮らす側の存在で、発行する新聞はいっこう売れず、尊敬されず、何かと運も悪い。(そういう、つましくて、うまくいかないことばかりな生活の実感、みたいなものを生き生きと描き出す巧さは、この作者の特質のひとつでしょう。)
こういう、平凡でいいところのない射命丸文が、ささやかな幸せを得る結末を見てみたい、と私は思ったんですね。

もちろん私は、綺麗で素敵だったり、あるいは知的で狡猾だったりする射命丸文を、存分に魅力に描いた作品が、既にいくつもあることを知っています。
けれども、そういう綺麗でかっこいい文が、ではなくて、こんな文。強さも速さも頭の良さも無く、余裕綽々さも抜け目なさも無く、確固たるプライドやポリシーや有能さに裏打ちされて仕事しているわけでもなく、愛でられ大事に扱われているのではない、東方2次創作の中のいちばん、平凡で、俗で、陳腐な部分に息づいていて支えている。そんな文の、ささやかな幸せが見たい。

もっと言うと、そんな文ならではの、ささやかな幸せのあるべき姿、というものは、本作の中ですでに映像として提示されているのです。そこが、この作品の残酷なところです。

結果として文は、最後にひどい目に合ってしまう。その原因は要するに、彼女が勘違いで出鱈目な記事を書いたこと。
そしてその勘違いは、この文に、目先のスクープより正確な報道を心がける姿勢、とか、取材相手と信頼関係を築いてコミュニケーションする能力、とか、粘り強くネタを掘り下げる取材力、とかいったものが備わっていれば、簡単に防げたものでした。
だから、しっぺ返しを受けた理由は、ようは、彼女が記者としてダメだったからなんだよね、ということになる。

でも、文自身の視界の中では、彼女は一日がんばって取材をした結果、思いもかけない面白いネタに巡り会って快心の記事を書き上げ、いつになく新聞を売り上げる、という目に見える成果まで手にしていたのです。
家でひとりで祝杯を挙げる文の姿には、間違いなく、こんな彼女だからこそ持てる、彼女だけのささやかな幸せがあった。
ただ、その幸せが、かりそめの、偽りの、何の実体もないものであった、というだけで。
それがとても哀しくて、いつかこの文が、勘違いでも暴走でもない記事で、もう一度こんな風にささやかな祝杯を挙げる姿を、見たいと思ったのです。






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