遠い音楽


いとしいさかなP『The Idol of the Rings』のつくりの絶妙さのひとつとして、年若い、ごく普通の(王侯貴族や戦士やエルフや魔法使いなんぞではない、という意味において)女の子たち、という、原作に相当するポジションの登場人物がほとんどいない、いわばニッチと言うべきところに、アイマスキャラクターが見事に嵌って存在している点が挙げられるでしょう。
そしてそのことは、三国・戦国の世界を中心に始まった、im@s架空戦記という分野が最初から持っていた魅力、可能性の、正統な発展である、と言えるのかもしれません。

(以下、いとしいさかなPThe Idol of the Ringsシリーズ(08年03月23日〜10年09月29日)のネタバレを含みます。)






このように、本来物語の中に存在しなかったポジションに、アイドルたちが絶妙にはまり込んで存在することは、アイドルたちの魅力を引き出すのみならず、また原作が胚胎していた魅力を引き出し、原作に新たな光を当てる可能性を持った事柄でもあります。
ホビットたちに伊織、やよいが加わっての会話の模様、旅路のありさまは、その好例でしょう。同年代の異性の仲間、という、各々の原作には存在しないポジションの登場人物との交流が生じることで、双方のキャラクターの魅力が新たに、生き生きと立ち上がってくるのです。


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亜美真美と「灰色港」のエルフたちの出会いのエピソードは、アイマスキャラクターの存在が、『指輪物語』原作に胚胎されていた可能性を引き出した、象徴的な例と言えるでしょう。
「中つ国」の生き物の中でも、もっとも長命で、もっとも超常的な存在のひとつであるエルフに、アイマスの中でももっとも幼く、弱く、感情豊かな亜美真美、という取り合わせ。
「灰色港」でエルフたちと触れ合う亜美真美の、喜怒哀楽に、生の輝きに富んだありさま。その生彩ゆたかな光景は、同時に、「定命」の人間とは隔絶したあり方をもって生きている、エルフという存在の個性をも浮かび上がらせます。
永遠の生を生き続け、世の移り変わりを見つめ続けなければならない、エルフという存在の哀しみ。原作において必ずしもあからさまに、こと細かに描き込まれているわけではない、けれども原作世界の中に確かに織り込まれている要素が、亜美真美という異質な存在との出会いによって、鮮やかに照らし出されたのです。


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『指輪物語』の世界がアイマスキャラクターの魅力を引き出し、アイマスキャラクターの存在が『指輪』世界の魅力を引き出す。そうした関係は、『IotR』のあらゆる箇所に見いだすことが出来ますが、ここではただ、あと二つの例にだけ触れましょう。
たとえば、「死者の沼地」における春香とゴクリの出会いです。過酷な環境でのふるまい、未知で異質な存在に出会い接していくありさまが、春香というキャラクターの持っている可能性を引き出します。
また一方、強大で不条理な力に人生を歪められ、囚われながら生き続けなければならない、ゴクリという存在の悲しみ、苦しみ、怒り、そうして生き続けている彼の人間性。原作の中にも確かに存在しているそれは、しかし、春香との邂逅、という、本来その時その場に存在しなかった筈の出来事によって、さらに豊かに、繊細に浮かび上がることになりました。


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最後に取り上げる例は、千早とゴンドールの人びと(就中ボロミア)の出会いです。
『指輪物語』のゴンドールの大将ボロミアと、『アイドルマスター』のアイドル如月千早。作者が、各々の作品においてもっとも思い入れの深いキャラクターだと名指ししている二人が、物語の中で結び合わされているのは、偶然のことではないでしょう。

千早とボロミアのエピソードは、『IotR』の物語全体を通じて観察される重要なテーマが、とりわけ具体的、特徴的に語られているもののひとつであり、そしてそれはいま、未だ語り尽くされないままに途切れています。
たとえば、アイドルにとっての元の世界の暮らし・人びととの結びつきと、こちらの世界の暮らし・人びととの結びつき、そして二つの世界を通じて持続している、765プロの人びととの結びつき。この物語を考える上できわめて重要な要素である、その3者の関係について、もっともくわしく心情が語られ、考察がなされるのは、千早とボロミアの会話においてです。
同様に、物語全体を通じて重要な要素である、歌、というものについて、とりわけ多く言及、描写がなされているのも、千早のエピソードにおいてです。

ミナス・ティリスの城から裂け谷へ向かう、千早とボロミアの道行きは、そうやって物語を通して千早というキャラクターへの解釈・考察が、千早を通して物語の根幹が語られる場面であるのと同時に、ゴンドールという共同体の個性、ボロミアとその家族たちの個性が、鮮やかに照らし出される場面でもあります。
ゴンドールに暮らす人びとの命運を一身に背負って、確かに存在するものかどうかすらわからない希望を求めて旅立った、ボロミアという人間の心情。ここに至るまでの彼の来し方、思い、誇り。
本来そこに居なかった筈の、千早という ”旅の仲間” を得て、初めてそれは『指輪物語』の奥底に秘められたものから、私たち読者の眼前で豊かに物語られるものに変わりました。

そして、そうしていとしいさかなPの物語の中の、千早を相手に笑い、悩み、物語るボロミアを、楽しめば楽しむほどに、思い入れれば思い入れるほどに。
私たちは、トールキンの物語の中の、瀬田貞二の物語の中の、映画の物語の中の、”実際には” ただひとりで、語る相手もなく旅だっていったはずのボロミアの姿を、(『IotR』の描写の内には未だ存在していない)彼の行く末、運命全体までを、『IotR』での彼の姿の中に、重ね合わせて想わざるを得ません。
ふたりの会話があたたかさに、慈しみに、よろこびに満ちていればいるほどに、まったく同時に私たちは、そこにさびしさを、重みを、かなしみを重ね合わせずにはいられず、そしてそのかなしみが深ければ深いほどに、よろこびもまた深いのです。

そのよろこびとかなしみの呼応、感情の不思議なふしぎな重なり合いを生ぜしめる力にこそ、『アイドルマスター』だけでも『指輪物語』だけでもない、「im@s架空戦記」たる、「NovelsM@ster」たる『The Idol of the Rings』の真髄があるのだと思います。


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