How do I live on such a field ?


ばんなそかなP TRIM@S (09年03月20日〜14年01月27日完結)


上記作品の、結末までのネタバレを含みます。







『TRIM@S』が完結した。
感慨深い理由はいろいろ、本当にいろいろ、ある。

たとえば、第1話の投稿から4年と10ヶ月、ということは、私にとってニコマスとのお付き合いの中の大部分の時間が、このシリーズとともにあったことになる。このシリーズを好きであることを通じて人との縁が出来たこともあったし、長い時間のうち、ひととび縁の出来た人との別離が生じることもあった。
私にとって、その過ごした時間の長さそのものが、この作品の完結に立ち会うことの中に詰まっている。

あるいは。最終話の中編の説明文に「TRIM@Sはながいながい「はるちは」でした。」とある通り、この物語の焦点が、最終的に千早と春香の関係に収束することは、以前から予測されていた。
ブログ内でも何度か書いた通り、私は、春香視点のはるちは、春香の決断と行動に焦点を当てたはるちはのストーリーに関しては、すでにいくつかの重要な結実があると考えている(アニマス20話も、そのうちに含まれる)。しかし、これだけ多くのはるちはを巡る作品が生まれてなお、千早視点のはるちは、には描き出すに困難な点があって、充分な成果が挙がっていないと思う。その、ひとつの結実と呼べるものが、ここに生まれたのだという、感慨。
もっと言えば、春香との絡みを脇においても、千早というアイドルを主人公に据えて、かくも骨太で、長いスパンと射程を持った物語が完結にまで至った、ということが、ただそれだけで偉業であり、幸福なことだと思う。


連載開始当初の『TRIM@S』においては、千早、あるいは物語を包む空気そのものが、孤独な影を宿していたと思う。
それは、『TRICK』のストーリー展開、雰囲気によってきたる部分もあるだろう。
千早に『TRICK』における山田の立ち位置、設定が強く投影されていたからでもあるだろう。
実際に事務所が寂れかつての仲間たちはバラバラになっている、という物語内の状況が存在したからでもあった。
何より、千早が事件を通して人の心の闇に立ち向かわなければならない時、最後に頼れるものはいつも、ただ彼女自身の決意と知恵だけだった。(だからこそ、常に付かず離れず千早たちのそばに居て、決してぶれない上田という大人の存在は、この物語において重要だった。)
それが、上田とともに様々な事件と遭遇して一歩一歩歩んでいくごとに、千早を囲む人の数は増えていき、最後のエピソードに向かうその時、彼女の周りにはこの上なく暖かく幸福な人の輪が存在していた。

もちろん、この物語においては、元々千早は大切な仲間や頼れる大人を持っていた。ただそれらが、物語が始まった瞬間には見えなかっただけで、ゼロからいきなりそういうものが築かれたわけではない、ということは言える。
しかし、それを踏まえてなお、この物語はとても重要なことを提示しているのだと、私は感じる。
千早の周りに幸福な人の輪が存在しているのは、千早がたとえば「仲間」や「家族」と呼べる人々に囲まれて笑うことができるのは。ただ、彼女に手を差し伸べる心優しく温かい他人が存在したから、なのではない。
誰よりも千早自身こそが自分を見つめ、他人と向き合おうとしてきた軌跡があるから、むしろ誰よりも千早こそが人の輪を築く原動力になってきたからなのだ、と。

そして、その軌跡を通して、誰よりも我が身と人の世に生じる、哀しみ、怒り、不条理と向き合い続けてきた千早だからこそ、最後の最後、辛く厳しい現実の中にいる人間に向かって、断言することができるのだ。

人は誰であれ、いついかなる時であれ、自由と孤独、ふたつの翼で飛べるのだ、と。
歌は、踊りは、アイドルは、そんな人間を後押しするためにあるのだ、と。

『TRIM@S』は、春香が765プロに「ただいま」を言うための物語だった。
誰もが春香の帰還を望み、願っていた。
けれども、その願いを現実のものと出来たのは、春香を連れ戻し、人々を解き放つことが出来たのは、千早だけだった。
何故ならば、他のどんなアイドルにも歌えない歌を、如月千早こそが歌えるのだから。
そして千早がそんな存在であることを証明するためには、かくも息の長い物語と、かくも多く豊かな人間たちとの関わりが、必要だったのだ。

『TRIM@S』と如月千早の歩んできた、かくも長き旅路と、
そして彼女がこれから歩んで行くであろう、長き旅路に。
乾杯。







関連記事
スポンサーサイト

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

TRIM@Sにおける山田と千早

ばんなそかなPのTRIM@Sに関する話です。 Vinegar56%さんのこちらの記事を読んで、 向こうにコメントしようかと思ったんですが、 ややまとまった内容になりそうだったのでこちらで記事にします。 *** 私も『TRIM@S TRICK』に関しては、旧ブログでも当ブログでも何度か記事にしていますが、 (このブログではこれとかこれ) Vinegarさんの記事では、...

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Vinegar56%

Author:Vinegar56%

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
全記事一覧

全ての記事を表示する

検索フォーム
リンク
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数: