akame氏の動画について & P活動についての、もやもやした諸々


 昨日のPickupでakame氏の動画について書こうとした所、長くなった上に動画と関係ない方向に話がずれてしまったので、別建てで記事を作ることにしました。

akame氏 『やがて青春』 IM@S (10/10/5)



⒈ akame氏の動画について

 6月にデビューしてからのakame氏の動画をざっと振り返って見ます。

春香 『忘れない』 アイドルマスター (10/6/14)

 「娘の運動会のビデオ編集のために勉強し始めたWMMで作成。」という投稿者コメントから動画内でお父さんと呼ばれることになった、akame氏の処女作。ニコマスに限らず、処女作に持っているセンスや特徴が凝縮されるということはしばしばある現象だと思いますが、この方の場合もそれが言えると思います。
 選曲と、春香のラストコンサートという題材、一つのダンスをスローテンポでじっくり見せる手法などがあいまって、独特の穏やかな空気の漂う動画で、「しっとり」とか「いい雰囲気」といったコメントが多くついています。視聴者にぐんぐん迫ってくる派手な何かがあるわけではないけれど、じんわりと心に沁みてくる、そんな感じですね。

 さて、私は動画作りに関する知識はゼロなので、いつも動画から自分が何を感じたかだけを書いていて、その動画がどう作られたかという話は書かない(書けない)のですが、この方の作品を見ていくにあたっては、ウィンドウズムービーメーカーのみで製作されていることに加え、ニコ動一般会員で、素材も借り物であるという、画質・素材の面でも制限のある製作環境で動画を作られていることに言及しておきたいと思います。

春香『夏色の天使』アイドルマスター (10/6/24)

 2作目。Pickupの時に書いたように、akame氏の特徴として選曲とPのセンス・手法から来るノスタルジックな雰囲気というものがあると思いますが、一口にノスタルジックと言っても動画ごとにやはり随分と色合いの違いがあるわけで、こちらでは処女作の「しっとり」ではなく、爽やかで弾むような空気が流れています。
 意図的に実験したのだと思いますが、処女作とは打って変わって、カットを細かく切り替えたりアップのバストショットを多く挟んだりしているのが特徴的です。前半で無人のアイマス背景を入れているのも印象的で面白いですね。

春香・千早『藍い風の向こうに』アイドルマスター (10/7/8)

 3作目にして、最初のデュオ。この動画では、同曲同衣装でアップとロングの両方が揃った素材を使い、春香アップ・千早アップ・ロングの映像を順番に映しているのですが、この動画でそういった素材を発見して利用したことは、次作以降のakame氏の演出方法を考える上で、大きな意味があると思います。

千早/真/春香/やよい『好きさ好きさレッドビッキーズ』IM@S (10/7/23)
 
 4作目。元ネタのアニメを知らないのですが、前半は千早メイン、後半は真メインで、それぞれ初代と二代目の主人公に擬されているようです。別ステージで踊るチアガールな春香・やよいをコーラス・合いの手のパートで挟むことで、見た目に楽しい変化が生まれ、リズム感が出ています。元アニメの素材もカットとして利用されています。

雪歩/春香/千早『卒業』アイドルマスター【修正】 (10/8/30)

 5作目。曲調と、選択したダンスの相乗効果で、とても軽快かつ決然とした印象を受けます。
 雪歩、春香、千早の三人の名前がクレジットされていますが、トリオで踊り続けるのではなく、前半3/4は、三人各々のソロダンスを順番に見せています。春香から千早へ切り替わる場面の自然さなど、技術的に優れた昨今の動画を見慣れているとつい何でもないことのように思ってしまいますが、限られた素材を凝視し、技術を磨いてきた一つの大きな成果と言えると思います。
 そして、最後のサビに合わせて初めてトリオになり、さらにその直後、今度はアップで三人のウィンクを見せる場面。この盛り上がりが素晴らしい! これもまた、技術的に優れた昨今の動画(ry ですが、デビュー以来培ってきた経験を糧とし、自分の勝負すべき場所を見極めた結果でき上がった、完成度の高い爽快な一品だと思います。

雪歩/千早/春香『乙女日和』アイドルマスター (10/8/28)

 6作目。この作品も三人の名前がクレジットされていますが、3/4ほどは雪歩のソロで通し、最後で初めて春香と千早が登場してトリオとなります。
 私はダンスシンクロに関して理論的なことは何も分からないので、完全に印象だけでものを言っているのですが、前作からこの動画にかけて、精度が上がったというか、非常に気持ちのいいダンスに仕上がっている気がします。前作から、頻繁にカットを繋ぐのではなく処女作と同じように一つのダンスを長回しで見せているのですが、特にこの動画、要所要所の「決まってるなあ」という感じが強い気がします。
 akame氏の動画としては初めて、衣装が動画の途中で変化します。パンキッシュゴシック→ライブフォーヴィーナス→スノーストロベリーの順番で変わるのですが、特に三番目のスノーストロベリーでトリオになる瞬間は、非常に鮮やかで視覚的な効果が大きいですね。
 同衣装・同ステージで多種類のダンス素材を集めることが難しいからという苦肉の策の側面もあるのでしょうが、衣装の視覚的な効果を利用することで、4分間同じダンスで通すことによる飽きが防がれ、継ぎはぎのない長回しのダンスを見せ続けられることになっています。2作目で作れないと書かれていた字幕背景が初めて導入されたのもこの動画で、過去作で工夫を重ねてきた技術・演出の一つの集大成と言えるでしょう。

『輝きの描写』 IM@S 【修正】 (10/9/23)

 7作目は美希、千早のデュオ作品。元アニメの映像をかなり入れているのが特徴的です。07年の動画で時々みられる手法で、これもまた4分間を飽きずに見せるための工夫だと思いますが、元アニメに思い入れがないもので、ちょっとどう評価したらいいか難しいですね。この動画のダンスはまた、前2作とはちょっと違った感触を受けるのですが、何が違うのか全然説明できません(笑)。

『やがて青春』 IM@S (10/10/5)

 4作目と同じ題材、同じ組み合わせによる最新作。千早ソロ→真ソロ→千早・真デュオで、今回もソロからデュオに変わる時に衣装が変わります。チアガールな春香・やよいはバックダンサー。  
 4作目からさらに役割分担が進んで、春香・やよいはコーラスパート、非アイマスの素材は前奏・間奏にと使い分けています。パートによって素材を使い分ける発想は、間奏部分にコミュを入れた処女作からあったわけですが、この動画で一つ、手法として確立した感じになったのかな、と思います。この手法と、5、6作目のダンス+衣装で見せる手法が統合されたわけですね。次の作品ではこのやり方を極めていくのか、それともまた違った演出に挑戦されるのか、楽しみになります。


  ここで動画本体を離れた話になるのですが、昨日のpickup記事を作っている時、ふと気になってakame氏作品の受容史的なものを軽く調べてみました。
 処女作はデビューと、投コメの話題性もあって、それなりにコメントが付いていますし、複数のブロガーさんに紹介もされています。
観月亭-Looking For Bear- クマの14日うpニコマス紹介記事
今日の動画(6/15) とりあえずのんびりと
喝ッ!! 春香『忘れない』 アイドルマスター

 そしてその後、akame氏はほぼ1月に2本のペースで投稿を続けられ、折に触れて紹介記事も書かれています。
2作目
喝ッ!! 春香『夏色の天使』アイドルマスター
5作目
メモ書きライフ あずささん来ました。

 ちょっと検索した限りでは、6作目以降の作品が紹介された例を見つけられませんでしたが、見落としが絶対にあると思いますので、まあこれは参考情報といったところです。ただ、少なくともニコマス界がこぞって話題にするような目立つP活動をされてきたわけではないと。
 気になるのは、再生数に大きな増減はないにも関わらず、作品を重ねるに連れコメント数が21→15→10→5→7と減少して行って、8月後半~9月に投稿された4つの動画は2~3のコメントしか付いてないことですね。この中には同一動画の音量・画質修正版も含まれているのでコメントが分散した面もあるでしょうが、ここ数日の間に付いたコメもあるため、これらの動画は投稿当時、せいぜい1~2人の人が1度コメントしただけだったことになります。
 この9月頃の動画の状況だけ見ると、ひょっとしてこの方の動画はほとんど誰にも知られてないか興味をもたれていないのかな、と錯覚してもおかしくないと思うのですが、数百の再生数が回っていてマイリスしている人が複数いる以上、そんなことはありえないわけです。実際に、私は久々に10以上書き込まれている最新作のコメントを読んで、またTwitterでの反応を調べてみて、この人の動画を見続けて評価している人はちゃんと少なからずいるんだなあ、と当たり前のことを再確認することになりました。


⒉ P活動についての、もやもやした諸々


 ここから先、akame氏の動画とは関係のない話になります。新人Pのデビューを目撃する度に自分の心の中がもやもやしている、というだけの話なのですが。

 ここ数日のうちにも、デビュー作から驚くべき高度な技術や演出を盛りこんだ力作を投稿する方が現れて、ニコマスに活気を与えてくれています。新人詐欺とか開発済みの処女とかいう表現もすっかりありふれたものになりましたが、それくらい、凄い力作を作ってくる新人がニコマスには絶えず出現します。
 そしてそういう力作をみんなが評価して、楽しんで盛り上がる、同時にそういう作品を作ってくれる新たな仲間を熱烈に歓迎する。そんな風土がニコマスにはあると思います。これはニコマスが培ってきた素晴らしい文化です。凄い動画をみんなで一緒に楽しむ、まさにニコマスの原点そのものですね。
 同時に、当然のことながら、そういったデビューの仕方だけが新人Pの在り方ではありません。高い資金を投入して製作環境を整え、磨き抜いた技術を一気にデビュー作からぶつけてくる人もいれば、製作機材や動画の編集経験は持っていないけれども、一から勉強しながら地道に動画を作り続ける人もいる。それは勿論どっちの方が凄いという話ではなくて、いろんなP活動をする人がいる結果、ニコマスの多様性と質が保たれ続けています。
 ただそこで私は、活動の仕方によって製作者が受け取れる評価の差というものを考えてしまうのです。

「デビュー作で話題になり、その後沈黙し続けて半年後にまた超大作を投稿した人」と、
「半年間2週に1度動画を投稿し続けたが1度も話題にならなかった人」

という状況を想像して比較すると、コメント・Twitter・ブログ等で受け取れる反応の総量はおそらく前者の方がずっと多い。それは誰が悪いということではなくて、誰もが限られた時間の中で自分の娯楽のために動画を視聴している以上、動画の内容によって伸びや注目度に差が生じるのは避けられません。
 ただ、それが積み重なって、製作者がニコマス活動全体で受け取れる評価の総量となった所を想像すると、心にすっきりとしない何かを感じます。特に、akame氏の一部の動画の例のように、確実にその人の動画を楽しんで評価している人が存在するのに、動画だけ見るとそれが全く感得できない、みたいな場面をみると心のもやもやが強くなります。

 話を変えます。新人デビューに盛り上がる文化がある一方で、たとえば「07年の動画はこの新人のような凄い技術は使っていなかったが、もっと違う部分が凄かった」といった形で、見る側が記憶している過去と比較しての新人批評も存在しうるわけです。
 そういった批評はニコマスが蓄積した文化や知識の継承に有益ですし、特定P個人の批評を行う上では非常に有効なやり方だと思います。ただ、その時に「最近の新人は」、「昔のニコマスでは」と時代、世代でひとまとめに表現してしまうことに私は抵抗があります。
 同じ「最近の新人」「2010年デビューP」の中にも、BBコマンド全開でオシャレなPVを作る人がいる一方で、07年の借り物Pと五十歩百歩の製作環境で切り貼りだけでPVを作っている人もいます。
 ニコマス初期の時点では全員が何もない所からヨーイドンで一斉にスタートしていたのに対して、2010年の今では、過去のニコマスが蓄積してきた山のどの地点からスタートするか、Pごとに多様なスタートポジションが有り得ている、それが私のニコマスの現在への認識です。時代による作品の傾向や流行が存在しないわけはないので、世代論という切り口は必要なのですが、なかなか扱い方が難しいものだなあ、と思います。

 三点目。見る側の感覚も、動画を考える上での重要なファクターです。高画質で、エフェクトや抜きを駆使した華麗な作品に囲まれた視聴環境にいて、画質も素材も制限があって切り貼りだけのMADの世界に誰もが簡単に入っていけるかと言うとそうではないわけで、感覚をその動画に合わせるというのか、見る側も何らかの集中力を駆使しないと、その動画の魅力を味わえない場合があると思うんですね。
 だからと言って、あらゆる視聴者に「どんな動画でも集中して楽しんで見ろ」と強制することは不可能で、動画を紹介する側が全部の動画の魅力を逐一語るのも不可能な事で、でもせっかく見方が分かれば魅力的な動画がたくさんあるのにそれに気づけない人がいたら勿体ない気がして、なんだか心がもやもや…というより、この辺は動画の魅力を伝えきれない自分の力不足が不満なだけですね。
 こんな辺境のブログでちょっとものを書いてみただけでこんな事を言うのは恥ずかしいのですが、多少なりニコマスについて文章を書いてみて痛感するのは、一人の人間ができることには限界があるという事実です。見るべき作品、考えるべきこと、書くべきことが山ほどあってもその中で実行できることは本当に少なくて、残りはボロボロ手の中から零れ落ちていくのです。
 
 akame氏についてまた少し触れます。氏はずっとP名を名乗られていなかったのですが、その理由について「『やがて青春』im@s」の投コメで、

「己のセンスは別としても現在WMM+一般会員枠という画質等に制約ある縛りのもとで作成しているため、P名を名乗るのを留保しております。見習いという感じでしょうか。」

と述べられています。P名を付けるかどうか、自分の活動に自信を持てるかどうかはその人個人の心の問題ですから、このコメントを理由にして何がどうこう、という話ではありません。
 ただ製作環境や画質を一つの理由としてP名を名乗るのをためらいたくなる、そう感じる人がニコマスの中にいて。誰が悪いということでも何を変えなきゃいきないという話でもないけれど、それは私の心の中にあるもやもやしたものと関係がある出来事のような気がしました。それでakame氏の動画について書いた続きにこんな話を書いたのです。
 
 後半の話に結論めいたものは全くないのですが、あえて述べるならば。
 投稿してもほとんど何のコメントもつかない動画、2~3個どころかそれこそ1個もコメントがつかない、何のリアクションも無い動画だって世の中にはたくさんあります。
 製作し、投稿する労苦に見合った対価をニコマスから得られていなくて、それでも自分の意思と情熱でニコマス動画を作り続けてくれる人がたくさんいて。その結果としてニコマスの過去があり、現在があり、未来があります。
 ニコマス動画を作る・作ろうとする、人の意思と情熱を私は愛しています、と。
 そんなところですかね。

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No title

その想いが、その想いを綴ったこのエントリが、たくさんのプロデューサーを救います。
うまいことは言えませんが、ありがとうございます。心から。

Re: No title

ありがとうございます。記事を書いていると、言葉にして表せるものよりも、書けずに切り捨てるしかないものの方がずっと多いことを痛感します。そういうものへの思いを少しでも言葉にしたくてこんなことを書きましたので、このエントリで救われるプロデューサーがいる、とおっしゃっていただける程嬉しいことはありません。
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