ひびまこ夜話


あるいは、私の考えるテキスト系三大夜戦について。







個人的に、テキスト系三大夜戦、と呼んでいるものがあります。つまりは、テキスト系動画の中で、夜に行なわれたアイドル同士のバトルのエピソードで、これは名シーンだなあと個人的に思っているもの三つ。
一つは、さそPの歓声は聞こえず、拍手は遠く(2010年06月01日~3日 全4話)におけるラストシーン、公園での響 vs 真のダンスバトル。
二つ目は、ダイヤモンドP【卓M@s】ボードゲームノススメ「ガイスター」 番外編(10年12月20日)における、響 vs 貴音戦。
三つ目が、眉間飛車Pの『81マスのマーメイド』シリーズ(10年12月11日~)における、黒井 vs 小鳥のエピソード。
で、その筆頭に置いている、というか、そもそもそういうことを考え始めたきっかけであるさそPの作品が、見られなくなったわけですけれども。

今私が挙げた3つのエピソードは、961プロ、プロジェクト・フェアリーの961プロの面々がアクターになっている、という点が共通しています。これらを並べたのは、夜のバトルというコンセプトが先にあったからで、意図して961プロのメンバーを集めようとしたわけではないのですが、しかし私は、これが偶然の一致だとは思っていません。

なぜならば、961プロにある彼ら彼女らは、芸能界の表舞台で、何にも縛られずに心行くままに力を発揮してライバルとぶつかり合う、ということは決してできないし、961プロにあって彼ら彼女らが自分の願い、理想を叶えるエンディングは決してやってこない。アイマスにおける961プロの物語というのはそういうもので、そして挙げた三つの作品における彼ら彼女らは、そういう場所、961プロにいるという物語を踏まえたキャラクターだからです。
そうであるからこそ、仕事もファンも事務所も関係ないパーソナルな空間で、信頼できる相手と二人だけで向かいあった時、そこでしかむき出しにできないものがある。これらのエピソードで描かれているのは、そういうものだと思っています。

さそPの響 vs 真にはもう一つ、その戦いを際立てる要素があります。この相手、この瞬間、このシチュエーションでしか露わにできないものがある、というところでは3つすべてが共通しているのですが、響 vs 真にはそこに、互いにこの相手だけが、真に対等に力をぶつけ合えるライバルであり、ひいては互いを理解できる、受け止められる相手である、という色合いがあります。

真と響が互いに力をぶつけ合えるライバルである、という観念は古くからあって、それはSPパーフェクトサンのストーリー自体に、確かにそう感じられるところがあります。
やよいにしろ春香にしろ、最終的には響から認められるわけですが、しかしそれは響とは別種の力、価値を体現した存在として認められるのであって、響が思いのままに自身の才能を解放した時、そこで正面衝突できる相手、というのとは、たぶん違う。そういう相手がありえるとしたら、それは真なのだろう、という気は、私もします。

そういう、互いに力を解放して心ゆくまで戦える唯一の関係、として真対響を描いた例は、さそP以外にも見られます。たとえば平蜘蛛Pの『ディライトスーパーノヴァ』シリーズのひびまこがそうですし、陽一Pの『Bullet×M@sters』シリーズにおけるひびまこもそうです。
そしてそのいずれも、アイドルアルティメイトなりなんなりのアイドルとしての表舞台からは隔絶された、二人だけの空間でようやくそのぶつかり合いが成立し、そこで初めて彼女たちの望みが成就する、という点も共通しています。


『歓声は聞こえず、拍手は遠く』における響と真の戦いの特質は(前段の物語を含めれば書き足すことはいろいろあるわけですが、とりあえずラストバトルに絞って言えば)、二人の戦いが一旦の中断を挟んで、エンディングにおいてふたたび始まる、というその構成に表れていると思います。

すなわち、夜の公園で二人だけで向かい合って踊り始めれば、そこでそれまでのしがらみや挫折や失望はすっかり吹き飛んでしまい、快と高揚のみのバトルが始まる、のかと言えば、そうではない、ということ。
そこには、いつのまにか初めに願い望んだはずの夢からかけ離れた場所にたどり着いて、何を信じ、何に誇りを持ち、どこへ向かったらいいのかもわからなくなって、それでも目の前には立たなければならない舞台、こなさなければならない仕事があって。そういう、曲がりくねっていてやりきれない、それまで過ごしてきた人生が凝縮されていて。
そうして踊りやめた二人が、描かれた部分の最後の最後、ふたたび舞い始める、その瞬間。

さそPには、個人的に重要だと思う作品も、思い入れ深い作品も、いくつもあります。が、出会いの瞬間の鮮烈さ、忘れられなさ、ということで言えば、この一本、この瞬間であると、今でも思っています。


テラフガシPの『アイドルたちの念能力バトル』大会編(11年03月06日~)が、いま決勝戦まで話が進んでいて(SPパーフェクトサン組の3人 vs プロジェクト・フェアリーの3人)、その第1試合が真対響でした。

このシリーズにおける真と響は、どちらもバトルにおいて、純粋なパワーでのぶつかり合いを志向するキャラクター、として描かれています。
けれども、対戦相手の特性とか戦いのシチュエーションとかもろもろの事情があって、結局ここに至るまで彼女たちは、望むような正面からのぶつかり合いの戦いは、させてもらえていません。
それがこの決勝戦で、互いという相手を得てはじめて成就する、という運びになるわけですが。

私が、ああと感慨深く思ったのは、そういう、彼女たちが何のしがらみもなく、心から楽しめるぶつかり合いが、ここでは大勢のファンに見守られた、表舞台のイベントとして実現しているんだな、ということですね。
ここまで読んだ方はおわかりと思いますが、つまり私は、ひびまこの対決がそういうシチュエーションになったということが、なかなか珍しい出来事だと考えているのです。

もう一点。ネタばらししてしまうと、このエピソードにおける真対響の試合は、相討ちの引き分けという結末になります。
バトルものの団体戦は皆そういうものですが、この大会編のエピソードは、毎回、主人公級のキャラクターが出る大将戦まで試合を回さないといけないので、3試合での星取り勘定を常に考えながらストーリーを組み立てなければならない(しかも、その勘定自体は読者にも容易に読めてしまう)わけです。
それで、この決勝戦の場合、この後に出てくるキャラクターの力関係を考えると、あるいは実際の展開とそれに対するコメントの反応を見ても、この第1試合を最後で真に白星がつく匙加減にしておいた方が、視聴者を納得させやすいという意味では自然な展開になった筈だと思うのです。

だけど、そういうことではないんだ、と。この戦いには、この真と響には、ステージの真ん中で、二人して大の字になって伸びている姿(※)こそがふさわしいのだと。
いや、実際のところそんな風に計算をした上でその計算を無視したのか、端から計算なんかしていないのか、それともこれも計算のうちなのか、私は知りませんしどうであってもいいのです。
ただ、この結末は、それ自体が描かれるべきひとつの理想だったのであり、だからこれは、それをここに具現化するという意志の表示なのだ、と私は思っている、ということです。

テラフガシPが、たとえばさそPの作品や陽一Pの作品を踏まえて自身の真 vs 響を描いているのかというと、たぶんそんなことはなくて、それぞれがそれぞれの思うひびまこを描いているだけでしょう。
ただ、ならば順序として、さそPのひびまこや陽一Pのひびまこより先に、テラフガシPのひびまこが出現し得たのか、というと、それはやっぱりあり得なかったんじゃないか、と私は思っているのです。
どこかで二人だけの夜を踊った彼女たちや、どこかの炎の中二人だけで戦い炎の中で別れていった彼女たちと、何か繋がっているものがあって、その続きを、ここに居る真と響が踊っているのではないか。
まあ、そういう、私にとっては繋がっている線が、私の中ではいくつも走っていて、これはその一つであるわけです。


この記事は、『アイドルたちの念能力バトル』のやよい vs 貴音戦の回が投稿された時に、twitterで音Pがやよいの強さについて書かれているのを見て、なるほどそうだと思って、何か書くならその前の試合のことからだなあ、と書き始めたものでした。


※9月4日追記 今、見直したら、倒れ方は大の字ではありませんでしたね。
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