「15行PoeM@ster」特集


 週末に書くつもりが遅くなってしまいましたが、9/15~9/30にかけて開催された企画「15行PoeM@ster」の参加動画を特集してみたいと思います。この企画については以前の動画pickupでちらりと紹介しましたが、簡単に言えば

 あなたの考えるアイドルマスターの世界をポエム(詩)で表現してみませんか?
 ポエムって言っていますが実際には「ポエムっぽい15行の文章」でOK。
                             (企画告知の投稿者コメントより)

というもの。
 文字、あるいは言葉のもつ表現力と映像の表現力の相互作用は、ニコニコ動画上の表現を考える時の重要なファクターです。言葉の力を生かした動画の新しい形を探る試みとして、個人的にとても興味を惹かれた企画でした。
企画の詳細については、こちらの動画を参照ください。

因幡少将氏 『15行PoeM@ster_十五夜祭り2010』 開催のお知らせ (10/9/1)




ガルシアP 私は、アイドル 【15行PoeM@ster】 (春香 10/9/15)


 Pickupで一度取り上げましたが、トップバッターとなったのがこの作品。祭りの最初を飾るにふさわしい、この企画の可能性と魅力を十二分に体現した動画と言えましょう。
 私がこの「15行PoeM@ster」だからこそ、と感じるこの動画の魅力として、まずは詩そのものが挙げられます。15行の詩という厳しい制約と形式の中に物語を収めるために、丁寧に言葉の吟味が行われた結果、美しくリズミカルで、かつその言葉の向こうに大きな物語を感じられる詩ができあがっています。言葉と映像の双方から余計なものをぎりぎりまで削った結果、視聴者が想像力によって物語を膨らませられる余韻が生じたのです。
 一方で、アイマス素材を生かした映像としての側面も、動画の表現に大きな寄与をしていることも見逃せません。ダンス素材から切り抜かれた鮮やかなグラが文字に合わせて表示されることで、黒い背景と文字という静的な表現に、動的で色彩豊かな力が加えられています。


ガルシアP GO MY WAY  【15行PoeM@ster】 (律子、伊織 10/9/21)


 1作目が1人称の独白だったのに対し、ガルシアPの2作目では二人のアイドルの言葉が交互に折り重ねられるようになっています。二人の言葉が次第に重なり合って一つの物語となっていく盛り上がりを表現する為に、シンプルでありながらとても繊細で精緻な演出が行われています。前作の特長が「詩としての美しさ」「余韻」といったところにあるとすれば、そこに対話、結末への盛り上がりという、より動的で起伏のある要素を加えたのがこの動画と言えるでしょう。


ポーンP 月月に月見る月のPoeM@ster (律子、千早、雪歩他 10/9/22)


 この企画に参加した動画の中でも、もっとも尖ったアイディアに満ちた作品です。一つの動画にあっさりまとめてしまったのが惜しい位、面白い発想が詰め込まれています。
 この動画の他作にない特色の一つ目は、「ポエムを作る」ことをベースにそのポエムの世界に寄り添って映像化を行うのではなく、通常のノベマス式の会話を随所に入れ、ポエム自体を作品内の部分的な要素として扱った事。
 二つ目は、自作の詩のみによって動画を作るのではなく、既存の作品(マザー・グース)に基づいた映像化を行った事。「アイドルマスターの世界をポエムで表現する」ということは、「アイドルマスターのために新たに詩を作る」ことに限らず、アイマス由来でない詩を(で)アイマスで(を)表現する試みも当然ありうる訳で、これも秀逸な着眼点だと思います。
 基本的に「『15行PoeM@ster』に参加するためのネタを考えてみた」的なギャグ基調の動画なので、笑いながらさらっと見ることができますが、新しい動画を開拓するヒントに満ちた野心作だと思います。


ニゴリP 【15行PoeM@ster_十五夜祭り2010】「一年」【後夜祭組】 (オールスター 10/9/23)


 「15行」という形式をどのように生かすか、ということに一つの極まった回答を提示した作品です。1年12ヶ月、というアイマスにおいて大きな意味を持つ時間、そして12組のアイドル。その二つに、この「12+α」というまとまりを当てはめることで、見事に「15行のポエム」という形式を作品のテーマに繋げています。「一年」という題そのままに綴られる言葉から、アイマスへの熱い想いを感じる動画です。
 グラの表示にあたって、目の部分が見えないよう上方を切ってあるのも面白いですね。真っ黒の背景で統一しているガルシアPもそうですが、描かないことで表現する・余計な情報を削ぎ落とすことで物語世界を広げる、という演出が随所で意識的に見られるのも、この企画の特色だと思います。


ガルシアP inferno 【15行PoeM@ster】 (美希、千早 10/9/23)


 ここまで私は、情報を削ぎ落とすことで想像力を働かす余地が広がる、ということを強調してきましたが、この動画においては、ガルシアPの前2作の延長上で、そこに留まらない更なる挑戦が行われています。
 この作品においては、アイドルの画像は画面の隅に小さくあるのではなく、真正面に最大限に大きく置かれ、積極的にその意思を主張してきます。文字もまた、言葉を伝えるためだけに存在するのではなく、意図を持って画面上に配置されて、文字自体の表現力によって語りかけてきます。この映像表現に、言葉を切り詰めた詩を乗せることで生じたのは、「余韻」ではなく「推進力」。強く熱い意思・メッセージをもって迫ってくる動画です。
 『私は、アイドル』『GO MY WAY」『inferno』。ガルシアPの3作は一揃いとなって、詩と動画が織りなす様々な表情、魅力を見せてくれています。


梅子茶P(ぽんぽん氏) 【15行PoeM@ster】 雨は人を孤独にする (千早、春香 10/9/25)


 自らが練った言葉を、映像によって膨らませるという作業を、もっとも徹底して丁寧に行ったのがこの動画です。雨を繊細に表現した背景やぼかされたグラによって構築された淡い世界と、練り上げられた詩が重ね合わされることで、詩の魅力が何倍にも引き出されています。ノベマスが磨き上げてきた動画表現の力が、高い完成度で示されています。


因幡少将氏 【15行PoeM@ster】 手をのばせば・・・【十五夜祭り2010 】 (千早、美希 10/9/30)


 美希から千早に宛てたガルシアPの『inferno』に対して、千早から美希に宛てたこの動画が最終日に投稿されたのは偶然なのか必然なのか、運命的なものを感じます。荒削りな部分もありますが、随所にハッとするような発見、魅力がある作品です。
 この動画においても感じるのは、言葉も映像も厳しく抑えられ、静かであるからこそ、肝心要のところで表示されるアイドルに非常に強いメッセージ、魅力が感じられるということ。グラの鮮やかな「色」自体が強いアクセントになっているという事もありますが、それだけでなく、切り詰められた瞬間的な形で提示されることによって、逆にアイマス素材のもつ究極的な魅力・表現力がストレートに表現され得る、ということをこの企画全体の視聴を通して強く感じました。
 最後におかれた千早の言葉と姿もまた、この動画だけでなく祭りの締めくくりにふさわしい、素晴らしい余韻と希望に満ちたものと言えるでしょう。


 さてさて、そんなわけで「15行PoeM@ster」参加動画を追ってみました。期待に違わず、各々に個性的で、多彩な魅力を放つ動画が揃った、素晴らしい企画だったと思います。惜しむらくは、こうして書いている私の文章がまわりくどく長ったらしく、詩的とはほど遠い…ですが。
 祭り自体はフィナーレを迎えましたが、まだこの企画が秘めていた可能性は掘り尽くされていないと思います。15行という形式にこだわらずとも、言葉と映像の関係に新たな地平を切り開く動画がまだまだこれから現われてくるんじゃないかな、と今後のニコマスを楽しみにしています。

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遅ればせながら

遅ればせながら、ガルシアPさんの記事から訪ねさせて頂きました。
私の動画について記事を書いて頂き、ありがとうございました。

アイマスにおける12ヶ月。
アイマスのアイドルである12組。
そして、今回のお題だった15行。

ガルシアPさんの記事からその存在を知って参加したいと思った時、思いついたのがこの形でした。
本当に突発的なお祭り参加だったので、結局動画に持ち込んだ要素といえばこれと、言葉の少なさに合わせる為の情報の削減だったのですが、どちらもしっかり受け止めて頂けたようで、作った本人としては嬉しい限りです。
本当にありがとうございました。

Re: 遅ればせながら

コメントありがとうございます!
このような拙い記事に嬉しいと言っていただけて、恐縮の限りです。

15行に収めなければならないということで、読む側には想像しがたい苦労があったことと思いますが、たったそれだけの言葉で表現するからこその、1年という時間・12組のアイドルと過ごした時間の尊さをありありと感じました。本当に印象的で魅力的な動画です。
素敵な作品をありがとうございました。


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