独りじゃないよ。


ブロガーぷよm@s勢を中心に、周囲が介党鱈Pの新作投下で沸き立っています。なんというか、みんなが見ていて、口々に語り合える共通言語がある、というのは楽しいことだな、と、見ているだけで幸せになりますね。


ブリッツP 【卓M@s】小鳥さんのGM奮闘記R Session7-3【ソードワールド2.0】 


12年11月24日 01:06 

そんなわけで、周りが介党鱈Pで来るならばこっちはブリッツPで……、と考えたわけではなく、さっきの更新の中に入れるつもりで書いていて、内容的に独立させた方がいいかな、と思ったからそうしただけです。

上記動画のネタバレを含みます。




長らくブリッツPの卓m@sには手を出していなかったのですが、ちょっと前に過去作を一気見して、リアルタイムで新着を楽しみに見るようになりました。
順番に見てくるとこのPの作品には、特に初期ほど、こういうキャラクターの扱い方は私とはあまり合わないなあ、とか、TRPGをベースにした動画としてこういう運用はどうなんだろう、みたいな引っかかりを感じる場面が、確かにあります。
それでも結局、面白いので見通せてしまったわけですが、最新の本シリーズはそのあたり、どこをとっても実に成熟した作品になっていると感じました。

巧みなものだなあ、と感嘆するのが、たとえばTRPGのゲーム内で演じられているキャラクターと、演じているプレイヤー、の違いが、実に効果的に扱われている点です。
描かれているエキセントリックなキャラクターたちは、あくまでゲームの中で演じられている仮初めの存在で、その外に、それとは区別された "本物の"アイドル" がいて "仮想上のキャラクター" を操作している。そういう構造を、会話の中で自然に視聴者へ印象づける。
ここで重要なのは、あくまでそれは印象であって、実際にはプレイヤー側の描写は、幕間幕外の、ごくごく断片的なものに過ぎない、ということです。
断片的な情報しか与えないからこそ、読者は自分の中で、自分にとって"本物" なアイドルが物語の裏で楽しくプレイしているイメージを描き出して、保持したまま作品を眺めることができます。それによって、物語の前面で描かれている "仮想上のキャラクター" がいかに自分にとっての”本物” と違う存在であっても、安心して受容することができるのです。(私はこのシステムを、勝手に「雪ねぇ部屋の原理」と呼んでいます。)
プレイヤー側のシーンを描きこんでしまえば、当然そこにも作者の癖や好みが表出してくるわけで、読者が自分にとって理想的なイメージを重ね合わせたまま見ることが難しくなります。その、楽しくプレイしている "本物のアイドル" の存在を印象付けはするが、しかし描きこみ過ぎない、というさじ加減が、このシリーズは絶妙だと思うのです。

キャラクターの描き方そのものもまた、非常によく練られています。たとえば亜美が演じるキャラクターが守銭奴なのは、ブリッツP作品に一貫したキャラクターづけですが、初期のシリーズでは、そうしたキャラクターづけに則った描写が過剰に思われることで、あるいはキャラクターにそれ以外の好感できる要素がないように思われることで、視聴者の一部がキャラクターに対して悪印象を持つ場合がありました。(そうした場合において、シリーズが進行するにつれて、それがどのように変化していったか、あるいはそれに対して視聴者の心情がどのように動いていったか、ということも非常に興味深かったのですが、それは今は置いておきます。)
それ対して本シリーズにおいては、守銭奴のアミにしても、ヤンデレでキマっているハルカディアにしろ、奇矯な部分があってもそれを含めて人格に一本筋が通っていて、読者が共感できる存在として描き出されています。
現在、もっとも難しい立ち位置にいる(反感を持つ視聴者が目立つ)キャラクターはリョウでしょうが、そのリョウにしても、この記事で貼っている当該回において、キャラクターづけ自体は変化させることなく、視聴者が好感を抱ける側面を見せるシチュエーションが、与えられています。絶妙のフォロー、バランス感覚です。
まあ、これだけ多くの視聴者を抱え、存在感の大きい作者なので、何をやっても、何らかの形で反感を持つコメントは生じるわけですが、総じて作品としては、トップランナーとして幾多の経験を重ねて来た作者の、円熟、充実が顕われているシリーズだと思います。


で、この回を貼った理由ですが。言うまでもなく、ハルカディア回だからですね、はい。いや、活躍度という点ではアイちゃん回かもしれませんが。
このシリーズのパーティは、各々が隠し事があったり互いを信用していない者同士の集まり、というのが特徴になっています。そして春香演じるハルカディアは、その、隠し事と他人への不信、という要素を代表するキャラクターです。
しかしながら、演じているGM・プレイヤーたちからすれば、このパーティでシナリオの最後まで一緒に行動していくことは始めから決まっているわけで、そうなるように劇中のキャラクター間の関係を動かしていく必要があります。
従って、どこかの時点で、ハルカディアと他のパーティメンバーの間で、信頼関係が構築・確認されるエピソードが描かれるだろう、というのは、ある意味誰もが知っていたことでした。その、あらかじめ結論自体は想像がついている展開を、説得力と迫真性を持たせて鮮やかに描き出したのが、この回でした。

まあなんていうか、具体的に何がどう良かったのかと言われると、私の表現力ではなんとも言えなくてアレなんですけれども。
つまりね、大事なのは、一番頑張っているのは、エリーですよ、エリー。このエピソードにどれだけの説得力、訴求力を持たせ得るか、という点において、本質的に鍵を握っていたのは、アイでもハルカディアでも他の誰でもなく、エリーの行動であったわけです。
溜めに溜めた最後で、いちばん要のキャラクターにいちばん要の言葉を、一番ふさわしい形で言わせる構成。そしてそこからの、テーマ的にぴったりの、ついでにノベマス史的にも忘れがたいミュージックのスタート! 
テキスト系の変な春香さん大好きで良かった、と心底思うのは、こういう時ですね。


以下、動画とはほとんど、関係ないと言えば関係ない話。

病んでいる春香、というものは、ニコマスの春香の文脈としては、根も葉もなく冗談だけで済む存在ではなく、そして決して過去の存在になったわけでもないのですが。
この動画の春香(ハルカディア)は、病んでいるキャラクターですが、それは何か春香という存在への思想の表現としてそうあるのではなく、単に、あるノベマスにおける春香は芸人である、とか、ある架空戦記における春香は人格円満である、というのと等価な、キャラクターづけの一つの方向性として選ばれているだけです。

ただまあ、私の中では。
こんなものは春香でもアイマスでもないと後ろ指をさされるような春香が、後ろ指をさされたままそれでも延々と大量に生み出され続け、そしてそれに対してそんなものは春香ではないと言った人間によって、もっと病んで歪んだ春香が生み出されていく、泥沼のような世界、なんてものがこの世に実在するのかどうかは知りませんが。けれども、その泥沼の中にこそ春香を抱きしめにいったPも、その病んで歪んだ存在もまた美しくそして生きるべき存在なのだと断言したPもまた、その世界においてこそ育まれたのであり、そういう全ての上に、当たり前に病んだ春香が存在し、当たり前に彼女に手を伸ばす人がいるお話、が描かれるこの作品の世界があって、そしてその手は、病んで歪んだまま、どこへ行く道もなく立ったままの全ての春香に対して、時空を超えて伸ばされている手でもあるのだ、と。

いうような妄想を、たまたま描かれたたかだか数分のシーンに抱くのは、思い入れ過剰だとはわかっているのだけれど、思い入れるのは私の勝手なので、私はそう思っているわけです。

そんなわけで、この回のラストシーンは、どうにも私の脳内妄想機関を刺激するところがあって、このシーンを見ると、愛ちゃん(アイ)と手を繋いだまま走り出して戦闘に入る春香さん(ハルカディア)の絵が、脳裏に勝手に描かれてなりません。(※1)(※2)
では春香さんの、愛ちゃんが握っていない方の手はどこに繋がれているんだろう、と思うと、それは未来の誰かかもしれないし、過去の誰かかもしれないし、春香自身かもしれないし、私自身でもあってほしいのかもしれない。宙にあるその手は誰とともにあるようにも思えて、だから、私のイメージの中の彼女は、片手だけを繋いで走っているのでしょう。


※1 後衛が、前衛と一緒に前線に飛びだして(しかも前衛の手を塞いで)どうする!
※2 春香と手を繋いで走るシーンがある、某ノベマスの影響と思われる。

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No title

 ドーモ。ビネガー=サン。NPです。
 読み応えのあるブリッツP特集、興味深く拝見しました。

 私も前に自分の記事で書いた通り、ブリッツPの作品はつい最近まで見ていなかったのですが、ハマったら全部見るまでにはそう時間はかかりませんでした。さすがに卓M@sジャンルの第一人者の力量だと思います。最近は毎週末の生きる希望となっていますね。


 Vinegarさんが言及されている「TRPG内で独自のキャラを演じているアイドル」と「現実世界でプレイしている本来のアイドル」がひとつの作品内に両立するというのが、ノベマスや架空戦記には無い卓M@sならではの特徴と言える気がします(雪ねぇの部屋なんかは多分に例外的ですが)。ノベマスや架空戦記だとエピソードを体験しているのはアイドル本人となるわけですが、卓M@sだとエピソードはあくまでもアイドル達の分身が仮想的に体験しているもの、言うなれば「ごっこ遊び」の延長線上にある出来事と考えられます。だからこそかなり大胆な性格のアレンジをしても、「アイドル達がそう演じている」という文脈の中で許容されるのではないでしょうか。そして本作を始めとする卓M@sの醍醐味は、その「ごっこ遊び」の世界観の中であたかも本当にアイドル達が命がけの冒険をしているような緊迫感を描き出していることにあると思います。


 あとブリッツPのキャラクターの描き方と言うか掘り下げ方は抜群に上手いと思いますね。Vinegarさんの取り上げられたSession7-3以降のハルカとエリーの関係性の変化なんかは本当に感動モノです。この後のSession7-4での二人のやりとりと、それまでハルエリの争いを「仲が良い」と見ていたアイちゃんが、初めて「ケンカでもしたんですか?」と聞くまでの流れが実に素晴らしいですね。ケンカというのは、心が本当に通じ合った者同士だからこそ出来ることだと思いますから。アイちゃんは二人の関係性の変化を本能的に見抜いたのだと思います。まさに春香さんのヒロイン力と愛ちゃんのヒーロー力が合わさって最強に見える、と言ったところでしょうか。

 ブリッツPのシリーズを考察しながら見ていくと、相当長いこと楽しめそうです。

Re: No title

ドーモ、ニコラス=サン。
ニンジャスレイヤーはまったくフォローしていないにも関わらず、ブリッツPのおかげで忍の風習がわかるようになってきたビネガーです。

テキスト系の見る専として、ブリッツPはいつかは見ないとなあ、と思いつつ、その圧倒的な量になかなか手をダ出せずにいましたが、見る踏ん切りがついたのはNPさんの紹介記事がきっかけでした。ですから、その御本人に面白がっていただけて、嬉しく思います。
仰る通り、定期的に必ず安定したクオリティの新作が見られるという点も大きな魅力で、一週間の大きな励みになりますね。

ノベマスにしろ架空戦記にしろ、テキスト系動画、あるいはMADというもの自体が何らかの形で、別のものに見立てる、仮託する、元と異なるものを導入する、という要素を根本的に持っていて、しかもその対象がアイマスの場合は「アイドル」という存在である、ということで、演じるという事柄はニコマスにおいて非常に重要な意味を持っていると思いますが、TRPGものの卓m@sの場合、作者が何も意識しなくとも、TRPGであるということだけで既に、演じる側の世界/演じられている側の世界、という二重構造と向き合って作品を構築することが定まっている、という点、確かにこのジャンルの重要な特質だと思います。
そしてそこに、「ごっこ遊び」であるということと、「本当にアイドル達が命がけの冒険をしている」体験とが完全に両立している世界が生まれている点、私もまさにこのジャンルの醍醐味だと感じています。

ハルカディアとエリーについては、ええ、本当にもう。
あの場面は、単にハルカディアを説得するだけなら、アイの台詞だけで充分だったと思うのです。けれども、エリー以外のパーティメンバーのような、初めから人間かナイトメアかということを気にしていない、あの世界において特別で異常な人間しか、ハルカディアとの間に信頼関係を築くことが出来ないのなら、本質的なところでは何も彼女の生き方は変えられないわけです。結局、いつか突然アイがいなくなってしまうようなことが起これば、彼女は人間を誰も信じずに生きる世界に戻るしかない。
でも、動画中のコメントでも言っていた人がいましたが、あそこで、偏見を持っている普通の人間で、個人的にもハルカディアとは馬の合わないエリーが、自分の気持ちと向き合ってああ言ったからこそ、その先にハルカディアが人を信じて生きられる可能性のある世界が初めて生まれた。あの瞬間は、本当に素晴らしいものでした。
アイちゃんの言葉については、深くつっこんで考えずにギャグとして受け取っていましたが、なるほど確かに、そういうことなんですね。アイちゃんが普段、ハルカディアとエリーの言い争いに気づかないのは、一見すると無邪気なだけに思えますが、外見に惑わされることなく、人の心の一番本質的なところを読み取っているからこそ、その変化を感じとって「ケンカでもしたんですか?」という言葉として表わしているんですね。目から鱗が落ちる思いです。

同じ魅力的な物語であっても、一回一回いろいろ考察や議論をやりたくなるタイプの作品(ぷよm@sやマスクエなど、その代表ですね)と、受け取って、ああ楽しかったなあ、というだけで満ち足りるタイプの作品があって、ブリッツPの作品はどちらかというと後者だと思うのですが、語ろうとすればまだまだ手をつけられていない、考え甲斐のあることがたくさんあるでしょうね。ともあれ、今後も末長く楽しんでいきたいと思います。

コメント、有り難うございました。好きな作品について、感動を分かち合えるということは、本当に素敵なことです。



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