試論:ストレートPとその時代(0)


 前回のエントリで取り上げたストレートP『あっというま劇場』について、少々考えてみたい。といってもストレートPのノベマスの、卓越した技術や戦略については既にあちこちで指摘されているところで、あらためて私ごとき素人が語れることがあるわけでもないのだが。テーマは思い切って大きく構えて、「『あっというま劇場』とはノベマス界にとって何だったのか」……どうすんだこんな大風呂敷…
 ちなみにエントリの内容によって、ですます調と、だ・である調を使い分けていこうかと思っている。




 ストレートPの作品を視聴してすぐに気づくことは、この作者がきわめて冷静に、視聴者の心理を計算して作品群を投稿していることである。戦略的で、確信犯的。
 戦略的であることの例は枚挙に暇がない。たとえば
・5~7分程度の気軽に見られる時間に動画をまとめる。かつ一~数話の短いスパンで一エピソードを完結させ、ハイペースな投稿速度を確保することで視聴者の興味を引きつけ続けること。
・釣りも辞さないサムネやタイトル、投稿者コメントなども含めたあらゆる箇所での集客の工夫。
・動画内でも、冒頭で釣りとも言えるような視聴者の好奇心を引く工夫を用意して、最後にタネ明かしするまで興味を持たせ続ける。ある場合にはどんなコメントがその場面につくか、予測していたとしか思えないタイミングでシナリオを進行させる。
 動画内外のあらゆる場所で、視聴者の興味を引き、一度視聴した者を離さないための工夫が施されているのが「あっというま劇場」という作品だ。
 また確信犯的という言葉は、戦略性とはまた少し違った意味合いで使ったのだが、それを説明するのに、原作であるXbox版アイドルマスター(無印)におけるプロデューサーと、あっというま劇場におけるプロデューサーの性格付けの違いを考えよう。

 アイドルマスターにおけるプロデューサーは、極端な性格的特徴がないうよう配慮された、無色に近い存在の人物である。765プロ就職以前にどこで何をしていたかという経歴の情報は全くない。プロデューサーの心情や思考が示されるシーンでも、そのほとんどは「この調子ならうまく仕事に臨めそうだ」あるいは「◯◯は××が好きなのか、これは意外な発見だ」といった、仕事の成否かアイドルの情報に関わることに限定されている。アイドルに対する感情やその他プロデューサーが何を思考しているかを知る機会はきわめて少ない。そしてアイドルを言いくるめるコミュニケーションは多々あっても、アイドルからの恋愛のアプローチに対しては非常に鈍感で、フラグをスルーすることが非常に多い…。
 こうした性格付けは、プロデューサーが、プレイヤーが操作すべきゲームの主人公であって、アイドルマスターが女の子とのコミュニケーションの疑似体験を大きな眼目とするゲームである以上、いわば自明ではある。すなわち、プレイヤーが感情移入してアイドルとの会話を楽しむために、最大限注意を払って作られた橋渡しの装置が、アイドルマスターにおけるプロデューサーである。

 ひるがえって『あっというま劇場』におけるプロデューサーをみると、「変態だけど有能」という代名詞で知られる通り、きわめてはっきりした性格付けがある。もちろん物語の中の一登場人物である以上、ゲームの中の主人公とは異なる性格付けは当然必要である。しかし上述のゲームの性質から、アイマスの2次創作の視聴者には、男性主人公の立ち位置の人物がいるならば、自分が主人公に感情移入してアイドルたちとの関係を楽しみたい、という欲求が普遍的に存在するはずである。
 ところが、『あっというま劇場』のプロデューサーは、

・アイドルに対し変態的な言動を取り、しかもうまく言いくるめて目的成就してしまう(視聴者にとっては妬ましい、反感を持ちやすい)
・そのくせ有能で、仕事はうまくやってしまう(ますます共感しにくい)
・なんだかんだでアイドルからは好かれている(理不尽、ますます妬ましい)

という性格付けをされている。面白いシナリオを作るために、作劇上は有効かもしれないが、視聴者が感情移入しやすい主人公とは到底言えない。
 結果として「あっというま劇場』がヒットし、「変態だけど有能」はノベマス主人公のスタンダードとなって多くの追随者を生んだため、疑問に思われることが少なかったように思うが、もしフリーハンドで設定を作り、アイマスというフィールドで視聴者の心を掴もうと考えた時、普通はこんな人物を主人公にしようと発想するものだろうか?
 しかし、それを当たり前のように行ったのが『あっというま劇場』という作品だった。それは視聴者の(主人公への)共感などなくとも、作品のキャラクター、シナリオ、会話が持つ魅力だけで充分視聴者を引きつけられる、とこのPが確信していたからではないか…、と思うのである。 いや、あまり自信はないけれども

 さて、ではそんなストレートPの作品がノベマス界にどんな影響を与えたのか…、長くなってきたのでまた今度。
 

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