一方その頃、私は服のことしか考えていなかった


記事にするようなことでもないな、と思っていたのですが。

袋詰めキャット 「事務春香」は本当に実現不可能な概念なのか

事務春香と聞いて - 箱の外から

藤田るいふ氏⇄K_1155氏で話題が発展する、というこの流れは何か既視感を感じるな、ということで、せっかくなので便乗しておくことにします。
「今週の日刊天海春香」特別出張版:ユニフォーム765編、と言って、ああそんなコーナーあったなあと思った人(いるのかどうか知りませんが)は、このブログを開設当初から見ている暇人の方ですね。





参考動画:  
かのんP 日刊天海春香 ソロ 「おはよう!!朝ご飯 (B)」 ユニフォーム765 09年07月12日


かのんP 日刊天海春香 トリオ 「i」 ユニフォーム765 08年08月25日



私としてはですね、事務服と言えばすぐにふともも! 絶対領域! 大人のエロス! すりすりしたい! というそういう風潮にはですね、大いに異議を唱えたいわけです。
いやもちろん、そういうストロングポイントをもつ服であることは否定しませんよ? 
しかしながら、年少のアイドルたちが、本来大人の女性たる小鳥さんのために設計された衣装をあえて着こなす、というそういう奥深い事象を味わうのに、ただちにそこに飛びついて思考停止してしまうのは、いかにも美の鑑賞の在り方の可能性を狭める行為だとは言えないでしょうか。
従って私はここに、上半身から始める事務服鑑賞、というものを、春香さんを通して提唱したいわけです。


日刊天海春香08/8/25 0:25
日刊天海春香09/7/12 0:18


まずですね、この長袖のワイシャツ! これを春香さんが着こなしている! ここが大事なわけですよ。
パリッと糊のきいた、おろしたての真っ白のワイシャツを春香さんが着こなしている、このどうしようもないほどの清潔感、爽快感。これなんですよ。これは実は、屋内よりもむしろ抜けるような青空の下でこそ引き立ちます。春香さんの事務服を見るなら上半身から、事務服の上半身を見るならまずは野外ステージから、と言われる由縁は、ここにあるのです。
このワイシャツのポイントは、袖先から首周りまできっぱり全部シャツで覆われて締められている、ということです。周知の通り、春香さんの基本衣装はVo系もDa系も、肌露出面積が大きいものです。特に、Vi系も含めて基本衣装では、春香さんの細く締まった両肩は、必ずむき出しで外気に晒されています。そうして、春香さんのステージを見慣れている者にとってはむしろ、むき出しで外気と対峙している姿こそがデフォルトである両肩が、清潔で整った被服によって完璧にガードされている。これは、事務服の大きな特長です。
いわば、普段の春香さんの肩が、文字通り裸一貫でまっすぐステージに立ち向かってくるアイドル精神の発現だとすれば、この事務服の肩は、その生肌の猛烈な貫徹力、攻撃力をあえて内に封じ込め、内側から厚い外装を通じ、生み出す動作のダイナミズムを通じてパワーをにじみださせてくる、職業人の核心なのです。
肩がシャツでガードされている衣装と言えば学校系衣装ですが、あれは半袖が多い上に、たいがい胸元がゆるい。隅から隅まできちんと締めている感で事務服に匹敵するのは、カレッジオブエンジェルくらいのものでしょう。

では、上半身の被覆率が高い衣装であれば、この清潔感爽快感は当たり前に生まれるものなのでしょうか。決してそうではありません。たとえば、パンキッシュゴシック春香さんを思い浮かべてみてください。あれは、暗い色調、ワンポイントの露出、浮き彫りになる体のラインが、禁欲的で抑制的であればこそのエロスを醸し出す衣装です。
エロスと言い出すといろんな要素が絡んで話が複雑になってきますが、とりあえず現段階の鑑賞においては、事務服に、そのようなエロスは見当たらない、と心得てください。
とにかく清潔。上のスクショをご覧いただければ、バストショットで事務服春香さんを捉えた場合、胸がまったく強調されていないことがわかると思います。それのみならず露出は必要な最低限度にまで抑えられ、なおかつ首周りと袖先の開口部はしっかり閉じて、角度によって動きによって何かが見えてしまうのではないか……という好奇心を起こさせません。扇情的な、直接的にリビドーを喚起する要素が、本当に少ない状態であることがわかります。

扇情的な要素の少ないという点で相通じる衣装と言えば、たとえば他にはポーリータキシードが思い浮かびます。このポーリータキシードとの比較によって、より事務服春香さんの性質が浮かび上がるでしょう。すなわち、ポーリータキシードの男装的性格、正装的性格は、大人っぽい凛々しさ、毅然とした雰囲気を醸し出す方向に働く(あと、胸は結構強調される)わけですが、事務服はそうではないのです。
事務服の場合には、フォーマルに近い性質の服をちゃんちゃんと着るということ、そして体のラインやパーツへの直接的関心から一旦興味がそらされることによって、春香さんの顔立ちの、年相応のあどけなさ、屈託のなさが前面に出てくるわけなのです。大人の服をきちんと来ているからこその、全然大人じゃない、どこまでも年相応の、はつらつとした春香さんの輝きの表出。

さてしかし、もし上半身を覆う衣装がこのワイシャツのみだったなら、その、一枚の薄い被服のみが全体を覆っているという状態、ラフっぽさが、またある種のエロスを孕んでくることは間違いありません。そう、ちょうど律子の私服が含有しているようなエロスですね。ここで重要な働きをするのが、緑色のベストです。
このベストの存在によって、この衣装全体がよりフォーマルで整ったものであるという信号が発せられ、全身被覆のエロスの直接的な発散を抑制するわけですね。

また、ここでもう一つ重要なのは、この緑色のベストは、アイマスにおいて、音無小鳥の姿形を象徴するものである、ということです。
一般に、”セーラー服” にしろ、 "白衣" にしろ、あるいはこの "事務服" にしろ、ユニフォームには、 ”そういう記号性を備えたユニフォームである" ということそれ自体が喚起するエロスが存在するわけです。ところが、アイマスの場合、ユニフォーム765衣装をアイドルが着るということの意味は、”事務服というユニフォームを着る” "女性事務員という記号性を帯びる" ことである以上に、”小鳥さんの格好をみんなでする” ということです。事務服を着ることの記号性は、音無小鳥というキャラクターの属性の中に吸収されてしまって、アイドルからはワンクッションおかれたものになっているのです。(この段落の記述は、「ユニフォーム765の色に「小鳥さん」が染みついている」、という眠れる死人氏の貴重なご指摘に基づいています。)

さて一方、緑といえば音無小鳥、というイメージを脇において考えたとき、このベストの濃くて明るい色調は、時によってやや安っぽい、事務員というよりむしろパチンコ店の呼び込みのスタッフが着込んでいそうな、あるいは雑貨量販店で販売されていそうな、イメージを醸し出します。MAD上において、衣装によってアイドルを様々な役柄に見立てる場合には、この側面も大きな意味を持ちます。しかし、ノーマルなステージで、アイドルがパチンコ店の呼び込みに見えてしまっては困ります。
そうした安っぽさの表出を防いでいるのが、前述した、ワイシャツと、厳密に必要な範囲で露出された肌が生み出す清潔感であり、屈託のない春香さんの顔立ちであり、ここにシャツとベストとは相補いあって、”大人の仕事着をちゃんと着て頑張る高校生の春香さん” を力強く演出しているわけです。

また、上半身(さらには全身)全体におけるバランスを考えるとき、当然ながら見逃してならないのは、春香さんの頭のリボンの働きです。ベストとリボンタイによる画面下方の寒色系の空間に対して、茶味がかった髪に鎮座まします薄桃色のリボンのきらきらしい輝きが、この空間全体に少女らしい、そして春香さんならではの華やぎをもたらしていることは言うまでもありません。
リボンについては話し出すと長くなり、この事務服リボンの特徴的形状、性質、インカムを装備した場合の相乗効果など語るべき話題はつきませんが、ここではその重要性を押さえておくにとどめましょう。

リボンと言えば、ネームプレートとともにこのユニフォーム765に特徴的なアイテムとして存在するのが、青色の大きなリボンタイです(蝶ネクタイと言うべきかもしれませんが)。事務服においては、頭上のリボンに(舞台衣装の場合には附属する)飾りがないため、より小刻みに軽快な動きで跳ね回ることになります。これに対して、対照的な色調で厚く広いタイのリボンは、よりオーバーに堂々と揺れうごき、その頭上と首下との対照的なリボン世界は、さながら日差しの降り注ぐ花畑をかろやかに飛び回る紋白蝶と、閑かな林中を悠然と羽ばたく烏揚羽のごとく。基本的に春香さん固有のアイテムによって構成される他の衣装とは、一線を画したリボン世界を現出させます。

さてここまででようやく、事務服春香さんの上半身の鑑賞についてざっと述べることができたわけですが、ここからさらに、腰回りから足元に至るまで逐一記述していく根性はありませんので、下半身に注意を向けたとき、これまで上半身によって構築されてきた空間にどのような劇的変化がもたらされるか、概要のみ述べておきたいと思います。

ここまで、事務服春香さんの扇情的要素の少なさ、むしろ前面に出るあどけなさ、という側面を強調してきました。
けれども、あらためて事務服春香さんの全身を眺めたとき、やはり胸から腰回りまでの起伏をぴったりとなぞっている服のライン、広がることなく骨盤によりそったスカート、長く伸びた脚をいやが上にも強調し、あざとくも露出した膝上のポイントをスカートとの協同作業で構築するストッキング、そうした、厚くガードしつつも露骨に身体をなぞっている被覆のエロスが窺えることは、明らかです。
そうは言っても、その衣装が覆っている身体は、この衣装が本来装飾するものとして想定されていた、成熟した豊満な女性のものではありません。本来機能として想定されていた、オフィスでのデスクワークに従事するためのものではありません。(特に後者、ユニフォーム765が活発な運動を想定した衣装でない点は、アイマス衣装の大部分は、なんらかの形で活発な運動に従事することが含意されたものであることを思うとき、その特異性が窺われる重要な部分だと思います。)

そのようなアンバランスで、不整合で、どう受け取ったらいいかとまどうようなエロスを、さりげなく風景に溶け込むものとして退かせ、全体を統一できる視野を生み出すのが、先ほど述べた上半身の清潔感、その中で横溢するあどけなさ、溌剌さです。
(この、幾度も強調してきた、フォーマルさを含むからこそのあどけなさという点、かなり似通った性質を備えているのがマーチングバンドですが、しかしマーチングバンドの場合には上半身はより凛々しさを、下半身の短いスカート、露出する脚がより少女らしさを発揮してバランスが形成しているのに対して、事務服の場合には上半身と下半身の間により複雑な相互作用が働くのが、大きな特徴かと思われます。)

こうして事務服を着て元気に頑張る春香さんの、等身大ではなく背伸びした大人の仕事着だからこそ発露される若い輝き、その中に思い描ける、いまと同じ姿形ではないかもしれないけれど、いまと同じ雰囲気でそこに在るだろう、10年後や20年後、事務服を着て仕事する春香さん、ああ春香さんが隣で仕事していたらそこはどんなにか素敵な仕事場になるだろうという風景、しかしそうしてやましい気持ちなど微塵もなく春香さんを見つめてくるはずなのに気づくと這い上るように表出しているアンバランスで微妙なエロス、淫靡さを含有していながらやっぱりあくまで健康、いや健康なようでやっぱり淫靡、そういうものに時折さいなまれる。このような全体が、現在私が考える事務服春香さんの身体的魅力でございます、はい。



さて、服のことを離れて、「事務春香さん」という概念自体について、若干思いつくことを述べておきます。なお、以下は当ブログ的に、あまり新しい内容を示したものではないことを、あらかじめお断りしておきます。

私の中心的な観察対象であるノベマスを考えたとき、歴史的に見て、春香が事務員を務めるという発想はかなり遅く生まれてきたもの(現在でも、確立しているとは明言できない)と言えることは確かだと思います。
その理由は、ひとつには、アイドルから事務員の役を出すならばまず律子、という発想は根強く普遍的に存在していて、春香に限らず、小鳥と律子以外に事務員の役を振るという発想自体、そうそう頻繁には出てくるものではない、ということ。

二つ目には、アイドルたちの設定年齢を考えたとき、たとえ未来を扱う物語であっても、ゲームの設定から数年後というスパンでは、しばしばアイドルたちの大半は(アイドル以外の)社会人になっておらず、通学したり芸能生活を送ったりしている、ということです。りてP『アイドルマスター ちょっとだけ未来のお話』、にわP『starting over』、シンドーコバヤシP『高校生な亜美真美と暮らすノベマス』などの作品を思い浮かべていただければ、このことは納得できるかと思います。

三つ目、これはK_1155氏が言及している「ループ」という話題とも深く関わってきますが、”春香の未来” というものに焦点を当てる場合には、「アイドル」か「恋愛」かという二者択一の世界を想定する観念が根強く存在し続けてきた、ということです。これは、春香単体に焦点を当てた作品にとどまらず、過去から現在まで、多くの作品の様々な局面で、発想の根本をしばしば規定している観念です。

「ループ」という言葉が出てきたので触れておけば、アイマス(のゲーム)の世界はループする世界である、という観念解釈思想、それがほとんど固定的な事実と錯覚されるほどに強固な観念として、しばしば存在してきたことは周知の通りです。
「アニマスで公式にループから解放された」というK_1155氏の記述は、「アニマスで」という部分も「公式に」という部分も私にはあまりピンと来ませんが、アニマスのストーリーからは、少なくとも”記憶のリセット” という観念は生まれないという点では、確かにアイマス世界をめぐる観念に影響力を及ぼすものだったかもしれません。

さて、この「アイマス世界のループ」という観念は、特に春香の無印ドーム成功EDを巡る物語と、強い結びつきを持って語られてきた事柄です。
そうした中で2次創作中に生まれた一つのパターンとして、小鳥と春香を重ね合わせる(同一人物設定とする)というものがありました。具体的に、動画で言えばどの作品が該当するか……というのはネタバレなので言及しませんが、ここには、春香と小鳥を、いずれもアイマスキャラクター群の中で特異的存在と見なし、その立ち位置を重ね合わせるという発想が働いていたわけです。
この場合、”事務員である” ということ自体は話の主眼ではなく、小鳥というキャラクターの、物語世界のシステム上の、あるいは人間関係上の役割が問題になっていたわけで、極めてイデオロギー的、思想的な発想の産物ではありました。ただ、春香と、事務員(という立ち位置、ですが)の間には、古くから意外に接点があった、とは言えるかもしれません。

また別の流れとして、春香が他のアイドルに対して、マネージャー的、プロデューサー的役割を担うようになっていく物語の系譜、というものも存在します。
その萌芽は、春香が様々な人間関係の中心点にいるト・アルP「と、ある」シリーズ(本シリーズはノベマス史上、非常に特異な位置を占めている作品だと思いますが、いまだ詳述する機会を得ません)に見出だせる、と私は考えています。そしてその典型は、たとえば、Pが入院するという事件が起こり、春香がPの役割を代行する展開となる、はいなP『絆の源』シリーズに観察することができます。
アニマスの春香にも、アイドル集団の中で似た機能を担っている側面が強くありますが、このように、アイドルとして第一線で活動することよりも、むしろ事務所の中にいてアイドル同士を結びつけ、他のアイドルの活動を支え後押しすることに重心を置いて春香を描くという発想も、一つの流れをなしています。

春香を事務員という職業から遠ざけていそうな、あるいは場合によっては近づけるかもしれない流れについて、散漫な形で述べました。では、もろそのもの、春香が事務員を務めている設定の作品が思い浮かぶかというと、残念ながら現在の私にはただちには思い浮かびません。
いずれにしろ、近年、アイドルたちの未来像の描き方がよりバリエーションを増していることは確かであり、今後「事務春香さん」という存在がより脚光を浴びるようになることは、充分に有り得ることだと思っています。


おわりに、アイドルが事務服を着る役柄を演じているシーンで、パッと思いついたものを挙げておきます。三つしかないけど。



ちんこうP アイドルマスター 春香さんがアルバイトを始めました(07年09月26日)より
ちんこうP 春香さんがアルバイトを始めました 0:22



のやすみんきP 王レス de アイマス(09年08月26日〜)シリーズより
のやすみんきP 王レス de アイマス 一話前編 19:23



フルプレートP アイマス cross C@sh'n Guns ~パーティーゲーム大作戦~(11年02月22日〜)シリーズより
フルプレートP アイマス cross C@sh'n Guns ~パーティーゲーム大作戦~ 2話 9:18




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