かいきんしょー途絶える、の裏で。いや、表だったか。


どこに需要があるのやらという話も、需要のありそうな話と絡んでいるように見せかければ需要のある話に見えるかもしれない、というお話。
というわけで、

介党鱈P 【厨二ノベマス】ぷよm@s part30【厨二架空】 12年06月21日


の全面的ネタバレを含みます。




『ぷよm@s』に限らず、バトルものは、一回の戦いごとに、いかにそのバトルが凄いものであるか、いかに展開が意表をつくものであるか、ということを印象づけることが主眼になります。そのためには、登場人物たち各々がどの程度、どのように強いのか、というヒエラルキーがあらかじめ、読者の中に確固たるイメージとして植え付けられている必要があるでしょう。
ところで、これも『ぷよm@s』に限った話ではありませんが、一つの話の中で直接的に描写できるバトルの量には限りがあります。『ぷよm@s』の場合、いかにダイジェストしても、一話20分前後の中で描ける対戦は、せいぜい2~3組分。じっくり描写すれば優に一組で一話またはそれ以上を消費するわけです。
一組の対戦で、直接戦いぶりを描写できる人数はきっかり2人だけですから、十人を超える登場人物のほとんどは、大部分の回において直接的に描写される機会がありません。この傾向は、トーナメント戦ということで対戦にストーリーが集約されている(公式対戦外での練習などの描写がない)最近の回において、強まっています。
そこで、読者の中に、P・小鳥・アイドル計13人の強さのヒエラルキーを、常に意識させ維持しておくために重要な要素となるのが、対戦時における、観戦者の言動の描写です。読者が、Pや小鳥、アイドルたちの、局面ごとの論評の台詞から、各登場人物のその時点における「ぷよぷよ」理解の深さを読み解き、力関係のイメージを思い描こうとしてきたことは、これまでの『ぷよm@s』語りの諸々を思い浮かべれば、言うまでもないことでしょう。

さて、この記事で少し考えてみようと思うのは、『ぷよm@s』のバトル中の観戦者の言動について、強さのヒエラルキーを印象づける大目的上、どのような描写の工夫が行われているか、ということです。
具体的に見るのは、最新話であるpart30における、千早の描かれ方です。

本回のメインイベントは、言うまでもなく春香と雪歩のバトルです。動画の再生時間上で言えば、約17分間の再生時間のうち、5:00頃の暗転から16:00頃の暗転までの約11分間が、このバトルの直接描写に割かれています。
ここで、5:00の暗転から、BGMが切り替わり「ぷよm@s」「春香 対 雪歩」のタイトルが表示された後、5:50頃から実際の対戦風景が映されるまでの約40秒間、観戦者中の上級者たち(P・小鳥・律子・千早)による、戦いの前口上というべきパートが挿入されています。以下に載せている4枚のスクショは、この約40秒間のシーン中から順番に抜き出したものです。


ぷよm@s 30 5:17

ぷよm@s 30 5:27

ぷよm@s 30 5:40

ぷよm@s 30 5:51


実際のシーンでは、各人に割り当てられた台詞は5~6行分で、2コマに渡っていることが多いので、このスクショでは一部の台詞が飛んでいますが、この前口上には、バトル時における介党鱈Pの描写の特徴がよく表れています。
すなわち、技術的に立ち入った解説を行う場合(Pや小鳥など、相応の格を備えた解説役が一人で台詞を担当する)は別として、煽り口上や感嘆を表現する意味合いの強い台詞を喋らせる場合、一まとまりの意味や流れを持つ台詞であっても、細かく分割して複数のキャラクターに割り振る、芝居における割り台詞のような表現を多用する、ということです。
ここでは、場にいる最上級の実力者たちと想定される4人に、分担して雪歩の特長を語らせることで、強大な雪歩に立ち向かう困難な戦い! という構図がいやが応でも煽られる表現になっているわけですが、ここで注目したいのが、ラストにおかれた千早の台詞の、特殊性と文脈上の重要性です。

前の3人の台詞がすべて、雪歩の強大さへの言及であり、背景にも雪歩の姿が映されているのに対し、千早の台詞のみ背景に雪歩の姿はなく、「あなたはどう立ち向かうというの」と、春香に焦点が当てられたものになっています。この千早の台詞があるかないかで、このシーンの焦点が180度変わってしまうわけです。
そして、この対戦に至るストーリーの流れを考えた時、読者がもっとも興味を抱いていたのは、"既知である雪歩の強さ特長に対して、未知である春香の力がどのように発揮されるか” という点にあり、実際のバトル描写において焦点が当たったのも、(読者の期待通り)この部分でした。
つまり、この前口上において、これから生起する戦いは、まさに ”強大な雪歩に対して春香の力がどのように発揮されるか” を主眼とするものである、という提示がはっきりとなされているわけですが、その提示の核心部分が千早に振られているわけです。

では、その千早は、実際の春香と雪歩の対戦をどのように観察するのか?  
というところで、この試合で、各観戦者が台詞を喋った順序を、簡単にまとめてみました。(春香・雪歩の台詞は省略)
ちなみに、()内は各キャラクターが喋っている際、背景にどちらの盤面が表示されているかを表したものです。大雑把に言えば、これは台詞担当者が盤面のどこを見ているかに対応し、従ってどちらの戦いぶりに注目しているかの傾向を、ある程度表してもいることになるでしょう(あくまでも、大雑把に言えば)。勝敗決着後の感想台詞の場合には、この区分があまり意味をなさないので、表示していません。

それでは、バトル開始。

ぷよm@s 30 5:53



・1戦目(5:52~)
伊織(両)→真(両)→小鳥(春香)→亜美(春香)→[雪歩勝利]→P→律子→伊織→亜美→真→伊織

ぷよm@s 30 5:56

伊織のこの台詞から、観戦者の描写が始まるわけですが、千早は出番なし。


2戦目(6:43~)
真(両)→亜美(雪歩)→律子(両)→伊織(雪歩)→律子(春香)→律子(雪歩)→P(雪歩)→亜美(春香)→小鳥(春香)→小鳥(両)→P(雪歩)→律子(両)→真(両)→P(春香)→[雪歩勝利]→真→律子

2戦目、内容面を無視して単純に登場回数で見ると、亜美・伊織・真・律子・小鳥・Pの6人で、かなり均等に出番が割り当てられていることが見て取れます。
千早、まだ出番なし。


3戦目(8:18~) 
P(春香)→伊織(雪歩)→真(春香)→亜美(両)→P(両)→真(両)→亜美(両)→[春香勝利]→P

3戦目、初の春香勝利ですが、まだまだ千早の出番なし。


4戦目(9:14~) 
真(春香)→亜美(春香)→伊織(なし)→伊織(雪歩)→亜美(両)→P(両)→[雪歩勝利]→律子

4戦目、あいかわらず千早の出番なし。


5戦目(10:15~) 亜美(雪歩)→伊織(なし)→小鳥(なし)→P(春香)→伊織(雪歩)→小鳥(春香)→亜美(春香)→[雪歩勝利]→亜美→小鳥→真→伊織→小鳥→亜美→律子

5戦目、雪歩勝ち抜けリーチで、決着後にかなり長い感想パートがありますが、ここまで千早の出番、まったくなし。
次で雪歩が勝てば試合終了、千早さん、まさかの

「如月千早は今回のシリーズではすっかり忘れ去られていた! 「その1、その2 」で作者が完全に描き忘れたのである! キャラクターの多いマンガではありがちな事件であった!」

パターンなのか!? というところで始まる6戦目。


6戦目(11:31~) 
P(雪歩)→P(なし)→伊織(雪歩)→亜美(なし)→亜美(春香)→小鳥(なし)→

12:10 [暗転/BGM変更ポイント]→亜美(なし)→伊織(なし)→


ぷよm@s 30 12:20

12:19千早(雪歩)

というわけで、なんとなんと、試合開始から6分30秒目にして、ようやくの初登場になるのです。
ちなみにこの後は、

 小鳥の台詞(背景:雪歩盤面)
[春香勝利]
→Pの台詞
春香さんがパンゴシっぽい例のシーン
→雪歩の台詞

と続いて、


ぷよm@s 30 12:57

12:57 千早

で再登場となります(以降は省略)。
面白いのは、この千早の出番が、初めて春香の戦法が完全に嵌まって逆襲が決まる瞬間([暗転/BGM変更ポイント]と記した部分)と、特殊演出つきで春香の印象的な台詞が入るシーン(パンゴシっぽいシーン)という、ストーリー上も演出上もこの試合において最大の眼目となる事象と、完全に呼応して出現する、ということです。

この千早への出番の割り振りには、いくつかの意味が考えられるでしょう。
ひとつは、試合中、雪歩の戦い方に対する千早のコメントが全く描かれなかったことの意味。たとえば今後、いずれかの時点で千早と雪歩の再戦、千早の雪歩対策が描かれるとしたら、その情報を現時点で伏せる意味があるでしょう。
もう一つは、千早自身のこの試合に対する関心、試合の意義の認識がどこにあるか、の提示。春香のもっとも特筆すべき行動に応じて千早の反応が描かれたことは、「この相手に、あなたはどう立ち向かうというの、春香……」という前向上のときの台詞と符合します。すなわち、(他の観戦者と比較しても)”雪歩を相手に春香がどう戦うか” という部分に千早が強い関心を寄せている、ということ。

3点目にして、この記事のテーマ上もっとも注目すべき点は、この千早の出番、あるいはそこから窺える千早の興味の焦点が、(すでに述べたように)試合全体の流れ・意義と完全に呼応している、という点です。
千早は、出番を春香にまつわる核心部分だけに絞られることで、あらかじめ、全ての戦いに出番があることで ”個々の盤面に対する読みの深さ ” だけを競わされているP・小鳥・律子・真・伊織・亜美から、差別化された立ち位置を与えられているわけです。

この差別化を更に強化しているのが、「このざわつく感じ……覚えがある」以下の台詞で、この、春香が発する「ざわつく感じ」への言及は、千早の台詞のみに存在するものです。
”特別な資質の持ち主の異質性を、特別な資質の持ち主だけが感じ取る” という演出は、『ぷよm@s』のみならず、たとえば『アイドルマスター fake story』などでも多用される、強さのヒエラルキーを表現する典型的な手法の一つですが、ここからは、このバトルのもっとも核心的な意義、あるいはこのバトルから看取できる春香の本質を、千早こそがもっとも鋭敏に感じ取っている(のかもしれない)、という構図が読み取れるでしょう。

重要なのは、今述べた私の解釈の当否そのものではなく、観戦者の言動によって強さのヒエラルキーを表現する際、単に誰にどういう台詞を喋らせるかということだけではなく、出番自体のコントロールや出番とストーリーの流れの呼応といった、シナリオ上・動画構成上の工夫(また、それと演出技術上の工夫との結びつき)によって、複層的で鮮烈な印象づけが可能になるのであり、介党鱈Pの動画において、そうした細かい技術的な工夫の集積が、動画全体としての劇的なインパクトに繋がっている、ということです。


本来の記事はここまで。
最後にいくつか、余力があれば言及しようと思っていたけれど飽きてきたのでやらないことにした事柄を、簡単にメモしておきます。お暇な方だけどうぞ。


・『ぷよm@s』近回における、BGMを利用する技術の向上。
非常に大雑把で感覚的な議論をするならば、初期の回と比較した時、

アイマスBGMの使用頻度の減少ーひいては、場面ごとのBGMの使い分けの微細化、多様化
BGM挿入、切り替えのタイミングの精緻化

が見て取れるはずである。
BGM動画を見ていて体感時間が短く感じる、という話があるけれど、たぶんそれは音楽と動画の同期性に強く関連している。


・立ち絵にまつわる技術
汗を描くなどの表情改変、特徴的なBGMや背景絵などのため、やや味の濃い特徴的な映像イメージはあるが、基本的に紙芝居型ノベマスの基本的な素材と演出以上のものを用いない。
多人数のキャラクターを紙芝居型ノベマス上で回す場合、

一つの画面に多数のキャラクターを表示する
少数のキャラクターのみ表示し、頻繁にカットを切り替える

の二つに手法に大別されるが、『ぷよm@s』は後者。上の「割り台詞」云々で言及した通り。特にバトル時には、1つの画面に1人のアクター・1つの台詞、1~数コマですぐに他アクターへカット切り替え、キャラクター1回の出番につき使用される立ち絵は1種類のみ、という原則が貫徹する。
ストPで言えば「みんなのプロデューサー」の技法であり、ストP基本技法ー近年のペドP技法(カメラ固定的・立ち絵の連続的変化による比較的長いシーンの組み合わせ)とは対極的である。
ただしBGMを考慮に入れなければ議論にならないことは言うまでもなく、カットの切り替えとBGM切り替えの同調、とりわけ暗転の利用など、『ぷよm@s』近回と『職業アイドル』近回の共通点は大きい。最近こんな話ばかりしている理由を、書く日が来るのかどうかは知らない。


・言うまでもなく、私は亜美が勝つ方に全部賭けます。

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