07~08年のノベマスの話(5): 0801~0803 ノベマスの確立、紙芝居クリエーター


 07~08年のノベマスについてだらだらと書いているシリーズ。

  前回はまでの確認。
07年5月~
・07年10月までの「Novelsm@ster」タグは作品の多くは、ノベルゲームを題材に、または模倣している。
・ただし、各作品は各製作者の独自の発想から生まれ、互いに影響関係や同一ジャンルに属しているという共通認識はなかったのではないか。
・現在の「Novelsm@ster」ジャンルに内包される様々なサブジャンルの萌芽が既に出現している。
07年9月~
・視聴者数拡大⇄視聴者が製作者に移行というサイクルが生じて、架空戦記ジャンルが発展
07年11月~
・架空戦記として製作され、「Novelsm@ster」タグに移行する作品が現われる
・ノベルゲームや原作コミュを範とする作品は見られない

今回は、この07年末までの流れを受け、08年1月からの「Novelem@ster」タグ作品の状況を調べたい。

 本シリーズを執筆するにあたって多くの方のブログや動画を引用、または参考にしています。お礼を申し上げます。



 このシリーズでは、いくつか本記事内のみで通用する特殊な用語を定義して用いている。第3回参照のこと。


2ー1ー2 08年1月 多様な表現の交錯点

 前回までに見たように、07年末に連載開始した「Novelsm@ster」タグのシリーズ作品は、架空戦記由来の糸冬P、まっこまこP作品と、ノベルゲーム風の陽一P作品の3作しかなかったが、08年に入ると新たな潮流が見られる。具体的にそれを確認してみよう。

すいぎんP 1/3『【アイドルマスター】 奥州風来記 第02幕 前』
       台詞枠/サウンドノベル(縦書き)併用 架空戦記タグあり 初回(12/31投稿)タグ無し 
放置P 1/6『「765プロ最期の日」第0週昼 ある日曜の出来事』
       台詞枠/サウンドノベル併用 架空戦記タグあり
R@gIP 1/21『iM@Sでラブコメ作ろうとしたらテラしくじった[春香] -前編-』
       サウンドノベル
フリージアP 1/27『アイドルマスターfake story 第一話(前編)』 
       台詞枠/字幕併用 im@sTVタグあり
ねももP 1/28『【汝は人狼なりや?】前編:765村の長い一週間』
       台詞枠 
タミフルP 1/28『エロゲーっぽいアイマス 3』
       台詞枠 初投稿動画削除 
 
 以上6作品が現在「Novelsm@ter」タグを持つ。

・意外にも、(現在確認できる限りでは)純粋に架空戦記由来と言えるのはすいぎんP作品のみである。そのすいぎんP『奥州風来記』の表現上の特徴は、基本的に「台詞枠」形式の作品であるにもかかわらず、 第04幕における雪歩と美希の百合シーンを、縦書きの「サウンドノベル」形式で表現した事である。
 この表現は大きな影響を与え、以後に登場する種別が「台詞枠/サウンドノベル併用」の作品のほとんどは、「台詞枠」をベースとしながら百合描写のシーンのみ縦書きの「サウンドノベル」となるものである。
 
・放置P作品は架空戦記タグを持つが、ゲームソフトとのコラボではなく、テーブルゲーム「汝は人狼なりや?」を基にシナリオ化した作品である。昼の会話シーンでは「台詞枠」、夜のシーンでは「サウンドノベル」という場面ごとの使い分けを行っているのが特徴的である。
 続くねももP作品はアイマス×人狼のリプレイ動画であり、以後「im@s人狼」(ノベマス、架空戦記のどちらに分類されるかは不定)は、ストーリー系MADの一分野として確立する。

・フリージアP作品はスポ根ものの影響の強い、完全なオリジナルストーリーの作品であるが、会話の一部での音声や字幕の使用、静止画ではなくコミュやダンスの動きのある画像を用いた映画的・アニメ的な表現等、極めて特徴的な演出方法を用いている。そのため同シリーズには「im@sTV」「ドラm@s」といったタグが付けられてきた。08年時点では他にほとんど類例のない表現形態であるが、こうしたコンセプトの動画がこの時点で既に現れていることは注目に値する。

 さて、残る2作品は07年からのノベマスの流れを考える上で非常に重要である。なぜならば、この2つにおいて初めて、架空戦記発達以前の「Novelsm@ster」タグ作品の系譜上に位置する動画が出現するからだ。

・R@gIP作品は、春香EDの補完・改変を意図した作品であり、原作ストーリーの改変という点で、陽一Pの『ノベルゲーム風アイドルマスター 「天海春香の憂鬱』と似たコンセプトであるが、特徴的なのは、原作コミュに似せた「台詞枠」ではなく、「サウンドノベル」形式による心情の表現を試みた点にあり、このことによって同作品はコミュ改変、捏造コミュとの分類上のボーダーに位置するものではなく、ストーリー系の作品であるという性格を強めている。

・タミフルP『エロゲーっぽいアイマス』は、ノベマス史上のターニングポイントと言うべき作品である。なぜなら、この作品が、07年9月頃に出現した「ギャルゲー・エロゲーのアイマスでの再現」というコンセプトを引き継いでいるのみならず、ポルナレフP「アイドルマスターでベタなラブコメ」の影響を直接受けた作品であることが広く知られてしているからである。
 これによって初めて、「先行する投稿者の影響を受けて、同様のコンセプトの作品を製作する」という現象がノベマスに起こっただけでなく、同シリーズは「タミフルチルドレン」と呼ばれるフォロワーを生んで、さらなる循環現象を起こした。
 タミフルPの出現によって初めてノベマスは、架空戦記側から定義される消極的な概念ではなく、内部での独立した動きによってイメージが規定される、一つのジャンルとして確立したと言えよう。
 なお、同作品はR@glPの場合とは反対に、ポルナレフPのとった「サウンドノベル」形式ではなく「台詞枠」形式を採用している。


2ー1ー3 08年2月~3月 コラボ作品の多様化と紙芝居クリエーターの登場

2月
桃月P 2/3『【アイドルマスター】十珠伝 肇輯第一回』
       台詞枠 架空戦記タグあり
かーれるP 2/5『春香 日常風景(自作コミュ)』
       台詞枠
      2/28『春魂 みんな始めはレベル1』
       台詞枠
しまGP 2/8『Heart to iM@S #01』
       台詞枠 
けろP 2/20『アイドルマスター やよいとマフラー』 
       台詞枠 「im@s妄想コミュ」タグあり
火星人P 2/22『おっぱいが大きくなる薬の効果を検証してみた【前編】アイドルマスター』
       台詞枠
(イヌP 2/25『アイマス紙芝居 ある日の風景2月25日』)
       台詞枠 アイマス紙芝居タグあり 一作のみ
弟切P 2/27『アイドルマスター 弟切草 テスト篇』
       サウンドノベル

3月
(時雨P 3/3『胸の大きい千早もいいかもしれないけどそのままの君でいて』)
       台詞枠 一作のみタグあり
辰三P 3/11『Im@SweetHome 第一話 ~前編~』 
       台詞枠
    3/19『アイ昼ドラ 第一幕 ~あずさ編)~』
       台詞枠
虚空P 3/12『歌姫たちの聖杯戦争 第零話『誘い』』
       台詞枠(上下2段)
話師P 3/16『【アイドルマスター×灰羽連盟】 I羽連盟 第一話Aパート』
       台詞枠 紙芝居クリエーター使用
ぽきーるP 3/18『[01]ぼくらのアイドルマスター Live for you! 第1話 『ゲーム』』
       台詞枠(上下2段)
いとしいさかなP 3/23『【アイドルマスター】The Idol of the Rings プロローグ&OP』 
       台詞枠 架空戦記タグあり 紙芝居メーカー使用
エグザスP 3/28『Schwarzschild im@s / シュヴァルツシルト アイマス 第一話』
       台詞枠 架空戦記タグあり 
chicoryP 3/31『M@STER NOTE page.1:偶像』  
       台詞枠(吹き出し) アイマス紙芝居タグあり

08年2~3月には、単発でタグが付いている作品を除くと、合計13人のPによる15個のシリーズが連載開始しているが、このうち3月初めまでの内訳を見ると、07年末までに登場した全てのコンセプトの系譜に連なる作品が出現していることがわかる。

・原作コミュの改変、補完…けろP、かーれるP『春香 日常風景(自作コミュ)』他
・ギャラゲー・エロゲーの再現…しまGP、辰三P『Im@SweetHome』シリーズ 
・ノベルゲーム(非ギャルゲー)の再現…弟切P
・歴戦系のゲームとのコラボ…桃月P

さらに、3月中旬以降登場したシリーズは、全てアイマス以外の作品とコラボしたものであるが、そのコラボ先がこれまでになく多様化する現象が起こっている。

・漫画、アニメ…かーれるP→『銀魂』、話師P→『灰羽連盟』、ぽきーるP→『ぼくらの』、chicoryP→『DEATH NOTE』
・小説、映画…いとしいさかなP→『指輪物語』
・ドラマ…辰三P『アイ昼ドラ』→昼ドラをイメージした作品
・ゲームソフト…かーれるP→『ドラゴンクエスト?』、虚空P→『Fate/stay nicht』、エグザスP→『Schwarzschild W2』

 これは、架空戦記ジャンルに参入するPの増加によって必然的に起こった現象
・コラボ先する対象が多様化し、歴史戦略ゲーに留まらなくなる
・コンセプトが多様化する(プレイ動画を主とする、グラ芝居を主とする、世界観のみゲームから借りる、等)
によって、従来の「im@s架空戦記」の概念に納まらなくなった作品の受け皿に、「Novelsm@ster」タグがなった結果と言えるのではないだろうか。

 これらの中で異色と言える作品を挙げるとすると、一つは漫画『DEATH NOTE』の台詞改変作品(いわゆるデスノコラ)であるchicoryP『M@STER NOTE』であり、もう一つは火星人P『おっぱいが大きくなる薬の効果を検証してみた 』である。
 火星人P作品は、インターフェースにおいては「背景(事務所の画像)+アイドルの立ち絵+下方に黒帯(文字表示用)」 という原作コミュを踏襲した形となっているが、複数のアイドルと同時に会話し、特定のコラボ作品を持たず、かつ原作コミュとも直接関連せず、バストサイズというニコマスの定番ネタを用いたオリジナルストーリーであるという点で、この作品こそ後にブームとなる「グラ芝居」形式のノベマスの要件を最初に満たしたものと言えよう。


2ー1ー4 07年11月~08年3月の総括

 以上見てきたように、07年末以降、「im@s架空戦記シリーズ」の発展と連動した動きの中で、次第にゲーム、アニメ、漫画等多様な作品とコラボしたストーリー系のMADが登場し、それらが「Novelsm@ster」タグに分類されるようになった。
 一方で08年1~2月には、07年9月以前の「Novelsm@ster」タグ作品と類似のコンセプトの作品が登場して、とりわけタミフルPは「Novelsm@ster」タグ内部で初めて、視聴者が製作者に移行するサイクルを起こした。 この二つの動きによって、08年初頭に至って、「どんな作品が『Novelem@ster』に分類されるか」という概念と、「Novelsm@ster」タグの存在を意識した投稿者・視聴者群が確立し、ノベマスが一つのジャンルとして成立したと言えよう。

 一方で2月にはもう一つ、ノベマス界にとって極めて重大な事件が起こっている。それがすなわち「紙芝居クリエーター」の出現であり、3月に入ると、初めて紙芝居クリエーターを使用したノベマスとして、話師P『【アイドルマスター×灰羽連盟】 I羽連盟』シリーズが登場する。
 次回はこの出来事を受けた4月以降の動向を調査し、「グラ芝居」形式のノベマスがブームとなる前夜の状況をまとめよう。

                                             (続)

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続きマダー?

お待たせいたしてまして申し訳ありません

須藤様、コメントありがとうございます。
お待たせいたしまして、本当に申し訳ありません。
移り気な性格なもので、やりかけの記事を放り出していろいろと思いつきで他の事を
書き始めてしまい、中断したままになっておりました。
加えて、この記事については、本文中でも触れてきた愛識Pや海月Pのブログを読み直していて、
自分が書こうと思っているような事は大体指摘されているのを発見してしまったということもあって、
なかなか続きが書けなくなってしまっていました。
この記事で扱っている作品は私にとってもまさに原点そのもので、きちんと書いておかなければ、昨今の新しい作品についてもきちんと語ることはできないと、何度も痛感しています。
 この通り、予定した事を予定通り進められない人間ですので、何時できると確約できないのが真に心苦しいところですが、必ず続きは書かせていただきます。気長にお待ちいただくとともに、今後も厳しく叱咤していただきたければと思います。


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