うどんを巡るステルシーな戦い


タイトルは、単に流行の言葉を二つ並べたかっただけです。


「よううるお」を名乗る人物により、この動画が上げられたのが、2012年01月19日0時18分。

【うどんm@ster】未知との出会い 情熱の夜明け【貴音編】


ついで同氏により「うどんm@ster」コミュなるものが作られ、2本目の動画とともに告知される。同日20時34分。

【うどんm@ster】ラブストーリーは突然に 生醤油の魅力【真美編】


同日中に、K_1155氏が記事を書く。

うどん特集を強いられているんだ! - 箱の外から

翌日、3袋Pが動画を上げ、それについて記事を書く。

【うどんm@ster】ノープラン・ノーレシピでうどん作る動画


袋詰めキャット そんなことより


で、たとえば「うどんm@ster」なら「うどんm@ster」という新たな枠組みが提唱され認知されることの面白さは、その枠組みをめぐって現在未来にどんな動きが展開していくか、だけにとどまらないと思うわけです。
そういう概念が存在することによって、それまで一つのまとまりと認識されずに散在していた "うどんにまつわる動画群” なるものが「発見」されて、ニコマスの中にはこんな風にうどん世界が広がっていたんだね、と認識できるようになる。新たな枠組みが提示されるとは、過去を再発見し再評価する物差しが手に入る、ということでもあります。
勿論それには、ブロガーなりタグ職人なり、そういうことを発掘する好事家がいて、たとえばそういう人が連動して活動するようになるといった波及効果を、新たな枠組みが発生させることが必要です。それが、「うどんm@ster」において起こった、と。

逆に、ことにニコマスというホビー文化がここまで長期化し種々の文脈が蓄積された今、このような波及・流行は、提示された枠組みの斬新さや作品のクオリティのみで起こしうるものではなく、そこにはそれが広く受容されるための土壌が存在したであろう、ということも言えそうです。
うどんの例で言うならば、たとえばアイマスクッキング系の動画の系譜・旅m@s動画の系譜・「ぐるm@s」の開催・貴音×「二郎」ネタの普及・『春香と千早のお料理教室』や『食の小鳥』のヒットetc. そうしたことの積み重ねで形成されてきた、ニコマスと食を絡めて楽しむ文脈というもの。あるいはニコマスと無関係にネット上に存在してきた、香川のうどんというものをエスニックジョーク的に扱う文脈。

そのような、一つのヒット作なり流行なりが生まれるための土壌の存在は、私がもっとも好んで見てきたノベマスというサブジャンルの中で、たびたび感じてきたことでもあります。(勿論その感覚には、後から思えばあの動画もこの動画も似た試みをやっていたな、という後付けのバイアスがどうしても強く働いているでしょうが。)
私がノベマスの中で、2011年に顕在化したと思うトレンドをいくつか思いつくままにあげる(もっと早くから始まっていそうなものも混じっていますが)と、

・TV番組、特にバラエティ・ドキュメンタリー番組とのコラボ
・芸能界バトル(多数のアイドルが複数の事務所に所属して対立する)
・P⇄アイドル以外の人物間の恋愛
・”一般人の目から見たアイドル” を描く
・性的関係の描写

といったところがあります。各々に、たとえば

・『im@s格付けチェック』シリーズ
・「とのばな」 シリーズ
・『アイドルドライバー』シリーズ
・『うちのクラスの天海さん』
・『千早を飼うことになった。』

という、各々のレベルでの話題作ヒット作が存在します。しかし、これらの例において、忽然と一本の話題作のみが出現したのだとは、私は考えていません。類似のコンセプトを有する作品の、再生数的にまったく認知されなかったり、あるいはコアなファンだけが注目しているレベルでの試行の増加・蓄積、それによる方向性の多様化。そういう流れがそのしばらく前からあって、その中でひとつの極点として出現したと感じていました。

うどんに話を戻しますと、とても面白い、というか、やーらしいな、と思うのが、3袋Pの

「後ろ盾も技術もない私レベルの者の便乗が許されるのは、先駆者から数えて最初の2人まで。」

という文章です。
実際に、氏はその「先駆者から数えて最初の2人」目になる動画をあげたわけですが。つまり、そのタイミングで「後ろ盾」や「技術」の充分にある動画が現れたなら、後から便乗する意味は無い、と3袋Pは断言しています。
ごもっともな話で、まったく同じ発想でより凄い技術・知識・労力を投入された作品が先に存在し、それを既に見ているのであれば、受容者にとって、後発の、よりそれらが少ない作品を見る意味は大きく減じます。後発になればなるほど、自作に価値を付与するのに必要な労力は大きくなる可能性が高い。
逆に言えば、速さ、タイミングの良さはそれだけで価値だ、ということ。そして、そういうことをわざわざ言う3袋Pは、後から「後ろ盾」や「技術」のある人がより労力をかけた作品を提示してきた時、それによって塗り替えられないないような価値、オリジナリティをいかにして自作物に付与するか、を多分に意識しているであろうことが想像できます。

この、「後ろ盾も技術もない」者として便乗動画を投下する、という3袋Pが表明したスタンスは、「うどんm@ster」というムーブメント自体の波及を考えると、また別の意味があります。つまり、最初に出現したのがそういうコンセプトの動画ならば、後から同じように「後ろ盾も技術もない」人が便乗する余地がより大きくなる可能性が高い。場合によっては、そういう人が便乗して付加価値を生み出せるヒントにすらなり得る場合もあるだろう、ということ。
このことを考える上で、対照的なサンプルとして面白いのが、上記K_1155氏の「うどん特集をしいられているんだ!」という記事です。
この記事は、動画からのタイミングで言えば「先駆者から数えて最初の2人目」、ブログ記事というフィールドで言えば先駆者そのものです。つまり、圧倒的に速いという、それだけで価値のあるものを提示している。しかも(はてなブックマークのコメントを見るとその衝撃がよくわかりますが)ちょっとびっくりするくらいいろんな動画を集めてきている。能力や労力の大きさという価値も、コンテンツの中で示されているわけです。
その結果、どうなるか。他のニコマスブロガーが同じように便乗記事を書こうとしても、たとえば採録する動画の量、多様性、こんな動画を提示できるのかという驚き、といった部分で勝負しようとしたら、相当量の能力と労力を要求されることになったわけです。(なおかつ、その労力を払ったとして、速くしかも伝わりやすい、というK_1155氏の記事を上回るインパクトを示せるかどうかは大変怪しい。)速くて技術も労力もある先行者は、後続にとっては障害です。
従って、藤田るいふ氏の記事「そんなことより」は、動画紹介という面では、大回転Pの1作しか挙げていません。K_1155氏と同じ土俵での勝負を回避したわけです。同じ土俵で労力をかけても費用対効果が悪いし、それでは速さという、そもそも確保すべき利点が失われてしまいます。
藤田るいふ氏の一枚だけ貼っているスクショ、うどんと聞いてあのシーンそのものをただちに思い出せたのだとするとちょっと怖いですが、たぶん、ワンカットだけでいかにK_1155氏にないオリジナリティを提示するか、というちょっとした工夫と苦心の成果だったんじゃないかな、と勝手に決めつけています。


ちょっと話が変わります。
ムーブメントのきっかけになる動画の特質、ということに私は興味を持っています。最初の方で出した ”枠組み” とか ”土壌” とかいうのは、そのために自分で適当にこしらえた言葉ですが、もうひとつ考えたのは ”隙” です。
ムーブメントを起動する動画は、 ”枠組み” と ”隙” を提示します。たとえばマンタP、呂凱P、ストレートP、ブリッツPといった人の動画が提示したものは、それです。こうすれば 「作品」を生み出せます、というのが枠組みで、 ”これなら俺にも作れそう(便乗できそう)” と感じさせるのが隙。(勿論、それはその起点の動画の完成度が低い、という意味では全くありません。また、トータルとして ”こんな作品を俺も作りたい” と感じさせる魅力を持っていることは大前提です。)
言い方を変えれば、 ”どこを真似すれば似たものを作れるか” という基本型と、 ”どこをアレンジすれば自分なりの付加価値を提示できそうか” という応用の道筋の両方がだれの目にもわかりやすい、ということ。(もっと言えば、何が基本で何をアレンジすべきなのか、の読解の時点で、そのフォロワーがどれだけのものを生み出せるかも、ほぼ決まっているわけですが。)

対照例としてわかりやすいのが『ぷよm@s』と『アイマスクエスト』です。両作は、視聴コミュニティの多さ(すなわち潜在的なフォロワーの数)においては、かつての呂凱PやストレートPを遥かに上回っています。しかし、たとえば、類似した動画が大流行して ”バトルm@s” なり ”冒険m@s” なりの新ジャンルができる、というようなことは起こっていません。(両作が以後の動画に影響を与えていない、という意味ではない)
たとえば『ぷよm@s』のような動画を自分も作りたいと思い、『ぷよm@s』を『ぷよm@s』たらしめている魅力は何か、と考えて、それはあの「ぷよぷよ」バトルの熱さにこそある、と結論づけたとします。けれども、ではその ”「ぷよぷよ」バトルの熱さ” に相当する価値を自分でどうやって生み出すか、となると難しいわけです。
「競技クイズ」という、介党鱈Pにとっての「ぷよぷよ」に相当する武器を持ち、それを当てはめることでフォロワーとしての道を見出だしたのがATP・ピウPの『Qm@s』ですが、なかなか稀有な例です。どうやったら真似できるのか、どうやったらアレンジできるのかが難しい、ということ。(従って、たとえばキャラクター付け、一発ギャグ、有名エピソードといった、 ”どうやったら真似できるか” がわかりやすいものは容易に浸透できる、ということでもあります)
ともあれ、上のようなサブジャンル全体の動向にかかわった動画にとどまらず、模倣とアレンジの繰り返しによる拡散はニコマスのあらゆる局面において起こっていることです。その模倣の起点となる存在の特質に、私は非常に興味を惹かれています。

うどんの出ない話が長くなりましたが、3袋Pの「先駆者から何人目」という視点の面白さと、それからブログ記事の乗っかり合いという事柄にもそういう視点は使えたんだな、ということに「うどんm@ster」ムーブメントの初動を見ていて気付かされたのでした。

えーと、まだ書くネタがあったような気がするのですが、最近の私の集中力からして、ここで続けようとすると間違いなくそのまま未完になるので、終わりにします。ステルシーと戦いはどこに行ったんだと思われるかもしれませんが、どこにあったのか私が知りたいです。



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[動画紹介]うどん包囲網をなんとかしたい

なんか私がうどんバカみたいな雰囲気になってるので、それを払拭したい。 何より、無意識にうどん動画について考えてる自分の頭を払拭したい。 それに先立ち、うどんm@sterに関わる諸氏、及び前回の記事を取り上げて下さった皆様に感謝いたします。 . というワケで、まずは

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No title

うどん記事のスクリーンショットの件は大体お察しの通りです。
というか、あのうどん特集を読んだら、これ以上うどん動画を探してくる意味があるのかという気もしますしね!
SS1枚で持たないシーンなら、冒頭まるごと削っていたのではないでしょうか。

うどんm@sterがジャンルとして確立された所で、上げられるのはうどん動画だけなのですが、
「うどん動画を作ろう」という意識は製作・投稿のモチベーションに幾らか影響するのではないでしょうか。
実際「うどん動画を作ろう」だけで私の物も含めて2本の別口動画が翌日には投稿されていたわけですし。
そういった意味で、新しいサブジャンルの誕生は嬉しいものですね。
うどんブームという現象は、ある意味で魔王ブームとも近い物なのでしょう。

Re: No title

藤田さん、いらっしゃいませ!

私も『箱の外から』さんの特集記事を読んで、これ、自分がこの後乗っかったとして何か書けることがあるんだろうかと想像してみて、すごく難しいな、と思ったので、あのスクショは、なるほどうまいやり方があるものだなあ、と感動しておりました。

そうですね、意識づけ、モチベーションという部分はとても大事だと思います。その結果として、その題材の面白さや可能性も掘り起こされていく。確かに魔王ブームもうどんブームも似た魅力があると思います。

では、コメントありがとうございました!

No title

こんにちは。
御指摘の記事、確かに私にしては珍しく、ネタの鮮度を意識してみました。
3袋Pほどの深慮があったワケではないのですけど、わたまきさんPの肉うどんが降りてきた瞬間に「これだっ」となったので。
しかしフォロワーが現れなかったのは残念というか、失敗だったかな。
Vinegar56%さんの仰る「隙」を、もっと用意すべきだったかもしれません。
それだけに3袋Pのワンショットは非常に嬉しかったですね。
この界隈はVinegar56%さんや3袋P、カズマさんの様な方が常駐し、ネタを補足、拡張して下さるので、私などは安心してネタに猪突でき、ホントに有難い事です。
そして何より、突撃するネタが常に生まれ続けているニコマスというフィールドに感謝。
まぁ、正直うどんネタは残弾ほとんど無いので、しばらくは静観させてもらいますが。
ではでは。記事の紹介、並びに興味深い考察を有難うございました。

Re: No title

K_1155さん、いらっしゃいませ!
K_1155さんの記事からいただおたもので遊んでいる側に、
わざわざコメントいただけて恐縮です。
記事中そこまで話がいきませんでしたが、私としてはむしろ、他人にどれだけ乗ってもらえるかなんて回りくどいことは、そういうことに強い人に任せておいて、これはやられた、このネタでは太刀打ちできんと思わせてこそ書き手の本懐ではないかと思っているので(笑)、これはやられたなあと思わせてくれる、K_1155さんの記事を拝見できて、とても楽しゅうございました。
では、こちらこそ、素敵な記事を有り難うございました。
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Author:Vinegar56%

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