代表作のはなし


先々週から先週あたり、他の方のブログ記事に、これに乗っかってなんか書こうかな、と思う話題がいくつかあったのですが、書かないうちに話題が古くなってしまった感があります。まことに時間が経つのは早いものです。
そんな話のひとつで、ab-cd氏のこちらの記事を読んで。

見てれぅ! 代表作は何? 



このPを象徴する動画、このPと言えばこの動画だろ、というのは、私もいろいろイメージがあります。いくつか挙げてみます。

たとえば、ストレートPなら『あっというま劇場』、愛識Pなら『ラノベっぽいアイマス』、事故米Pなら『ちょっとした小話』……。このあたりは、イメージが一致する人も多いのではないでしょうか。
けれども、覆面作家Pなら『【アイドルマスター×北村薫】お嬢様は名探偵!?』となると、かなり異論がありそう。
更に、ぽきーるP(=F.U.C.KP(却下)=グリチルリチン酸ジカリウムP)なら『ぼくらのアイドルマスター Live for you!』、陽一Pなら『Bullet×M@sters』というところで一致できるかとなると、はたしてその作者の中のどこを見ているか、という視聴範囲が問題になってくるでしょうね。
今私が挙げた作品には、全てに共通する点があります。それは、各々その作者にとって最初の長編シリーズ作品だということです。同時に、私がその作者と最初に出会ったシリーズでもあるので、何の深い理由もない刷り込みと言われればその通りかもしれません。ですが、個人的にはもうちょっと理由があるかなと思っています。

今私は、「その作者を象徴する作品」という題目で、上のシリーズを挙げました。しかし、各作者が多彩な活動を行ってきた後の2011末現在の目で、たとえば愛識P、事故米P、覆面作家Pの今挙げた作品を見直すと、必ずしも、その後顕われてきた作者の色、個性、得意領域、もっとわかりやすくは文体やノリ…、が表れた動画とは言えません。
その要因は個別にいろいろ考えられるでしょうが、一つ共通しているのは、いずれの作品も、作者自己とアイマス以外に作品の淵源となる世界を持っている、という点です。
北村薫の作品を原作とする覆面作家Pは明示的な例ですが、明確なコラボ先を持たない前2者においても、愛識Pの場合は”西尾維新的な文体・物語世界”、事故米Pの場合は"ストレートPの確立したコメディノベマスの世界"という、原典として到達目標として、意識されている明確な世界が存在しています。
それらは、確かに各々の作者が愛好し、あるいは憧れた世界ではあるでしょう。けれども同時に、作者自身の作家としての独立した感性・好み・体質とは、完全には一致しない異物でもあった筈です。おそらくは、そういう異質な世界とのマッチアップが、これらの作品に、(異物と衝突する必要なく)作者が己の感性と己の世界の中でアイドルを動かすことができるその後の作品とは、異なるテイストを生んでいるのではないか、と思うのです。
あるいは、たとえばカイザーP。カイザーはインタビューでかなり詳細に自作の位置づけを語っているので、新たに指摘できる点がなくて困るのですが。たとえば『はるゆき熱愛物語』や『はるゆき百合バカ日誌』のように、作者オリジナルで思いっきりやりたいことを爆発させた作品を一方の極とするならば、『雪歩と春香の旅』『アイドルマスターの弟子』のように、過去の作家の文体と物語世界を忠実に反映してアイマスと結び合わせた作品は、もう一方の極と言えるでしょう(極めて雑駁で乱暴な説明ですが……)。私の好みということで言うと、私がダントツに好きな作品は、後者の中にあります(後者二つは、私が好きなカイザーP作品のツートップです)。
アイマスだけでもなく作者だけでもなく、もう一つそこに異質の大きな世界があって、三者が衝突し取っ組み合う時に生じてくる、ナニカ。どうも私が惹かれるものは、そのナニカの中にあるようなのです。

もっと話を広げれば、作家が最初に手がける最初の長編というものは、往々にして、後から考えればとても完成するとは思えないような、壮大で困難なテーマをぶち上げるものです。それをやってやろうという意欲満々であればこそ、ものを書いたり動画を作ったりするようになるわけですから。
陽一Pのアレにしろ、愛識Pのソレにしろ、よくもまあこんなテーマを書き切ったものだ(ネタバレになるのでここでは解説しません)と思いますが、それ故にこそ、そこには技術や理性だけでは到達し得なかったナニカが生じている、と私は感じるわけです。
ストレートPの『あっというま劇場』にも、そういう部分があります。それは何かというと、このシリーズにおいてストレートP(同時期のペデューサーPもそうですが)は、本気でその時代の(未知の)視聴者を掴み、動画でもって時代を引っ張っていくことを狙って動画作りをしていた、ということです。身も蓋もない言い方をすれば、再生数稼ぎの人気取りに血道をあげ、ライバル心むき出しで競争していたということですが、しかし、どこへ進んでいくかわからない時代とか潮流とかいうものと、本気で格闘しそれを突き動かそうとしていたが故のパワーが、そこにはあったのです。
逆に言えば、現在の目から見た時、『あっというま劇場』には古びている部分、時代の中で呼吸していたが故にその潮流の中にないと輝かない部分があって、現在でも通用するという点、単体で誰の視聴にも耐え得る完成度という点から見れば、後の『歌姫奇譚』の方が勝っていると言えます。けれども、それ故にこそ、私はストレートPというノベマスPを象徴するのは、いまでも『歌姫奇譚』ではなく『あっというま劇場』である、と思っているわけです。

先に述べた(作者でもアイマスでもない)異質な世界も、後で述べた、常識や能力の限界を飛び越えるような大きなテーマも、私がそこから生み出されていると感じるものは、多分、根本的には同じです。
作者のコントロールを越えた、アイマスの枠を越えた世界。それと、アイマスが衝突し、作者が格闘する過程で生ずる、ナニカ。私がもっとも惹かれ、言葉にしたいと思っているのは、それなのです。

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