My First Vision  Track0001 : "等身大の地球儀" 


アイドルマスター 天海春香 等身大の地球儀
2007/12/29 17:10再投稿
使用曲:泉川そら『等身大の地球儀』 作詞・作曲 泉川そら 泉川そら1stシングル『等身大の地球儀』、1stアルバム『そらへ』収録

動画説明文(初投稿):不明
旧マイリストコメント:
三部作その1。右も左もわからない、新人アイドル春香さんと駆け出しPのお話。

動画説明文(再投稿):
再アップロード版

新マイリストコメント:
0001_処女作 2007/08/09 18:37:19投稿
三部作その1。右も左もわからない、新人アイドル春香さんと駆け出しPのお話。


処女作。
ななななな~PというアイマスMAD作者が、ニコマスデビューを果たした動画。
作者自身のコメントに、「右も左もわからない、新人アイドル春香さんと駆け出しPのお話」とある。つまり、作者がデビューを果たした作品の中において、春香もまた初めてのステージを踏んでいる、ということになる。
至極当たり前のことのようだけれど、その言葉には、ななななな~Pというプロデューサーの本質が、はっきりと顕われている。
すなわち、ななななな~Pが生み出した春香動画においては、そこにいる春香が、アイドル活動の中のどの時期、どんな状況の春香なのか、ということが常に明確に意識されている、ということ。それは処女作のこの時点から、一貫しているのだ。

具体的にどの動画が何を表しているかは、これから順を追って書いていくわけだが、たとえば既に記事とした『アイドルマスター 天海春香 Dream'in Love』は、アイドルになる前夜の春香の物語。そしてこの『アイドルマスター 天海春香 等身大の地球儀』が、右も左も分からない新人アイドルと駆け出しPの初ステージだ。
そしてそれだけでなく、「三部作その1」と明記されている通り、この『等身大の地球儀』は、1作で独立したメッセージを伝えるものではなく、三作セットで天海春香を表現する一部となることが、最初から企図されていた。

先程当たり前のようだけれど、とわざわざ言ったのは、それを私が、当たり前だと思わないからだ。
再度強調するが、この動画はP自身のニコマスデビュー作でもあるのだ。デビュー作を投稿する心理として、これから初めてする行為が、他人に見てもらえるのか、受け入れてもらえるのか、表現するにふさわしいスキルが自分にあるのか、諸々の不安や迷いが存在する筈であろう。
反応など気にせず自分のやりたいことをやればいい、と口にするのは簡単だ。だが、作品を他者に向かって投じるとは、作者もまたステージにその身を晒すことに他ならず、それは不安と恐怖と緊張の真ん中に精神をおくことに他ならない。

ところが、である。(初投稿時の動画ページは既に消滅しているので、実際にそれが投稿された時の作者の様子は私には知りようもないが。)だが、少なくともこの動画の中からは、作者自身の、自己を顕示することへの期待や不安、表現することへの迷いや恐怖が、(「右も左もわからない」「駆け出しP」というコメントとは裏腹に)見当たらないように思える。ここにはただ、この動画を以て、天海春香のファーストステージを表現し、それはこれから表現していくべき物語の端緒である、という明確な目的意識、表現内容への確信のみがある。

では、その目的とは何だったのか。
彼は、引退を宣言した動画に、「とりあえず言うことは言ったので、ひとまず引退します。」と書いている。ななななな~Pは、「言うこと」があるから、ニコマスPとなった。
その言いたいことが、どのような形を取っていたかは、最初に述べた。彼の動画においては、そこに居る春香が、アイドル活動の中のどの時期、どんな状況の春香なのか、常に明確に意識されている、と。
すなわちそれは、彼の動画を全て繋ぎあわせてみた時、それは天海春香がアイドルになる前から、アイドルとして過ごす1年間、そして更にその先までが描かれた、1枚の大きな絵になっている、ということだ。ななななな~PというニコマスPの軌跡は、アイドルとなった一人の少女と、それに伴走する人間の物語を形にしていくものに他ならない。
その意味において、彼はまさしく、(「作者」である以上に)「プロデューサー」なのである。

無論、『等身大の地球儀』を発表したこの時点で、最終的に辿り着いたゴールまでの全てが見えていたわけではあるまい。けれどもおそらく、『等身大の地球儀』『そらへ』『ヤッホー!』の三部作を構想した時点で、それと表裏ともいうべき『許されない恋』の物語は既に心の内に存在しただろうし、そこには後の作品につながる問題意識が内包されていたであろう。
C.S.ルイスは、自身が執筆した『ナルニア国物語』について、こう説明している。初めから彼の中では、「ナルニア」という世界の誕生から滅亡までの大きな物語が、1枚の絵のように浮かんでいて、その細部を一つ一つ取り出すようにして書いていったのだ、と。私は、ななななな~Pが生み出した春香動画もまた、それと似たような形で描かれていったのではないか、と思わずにはいられない。

ここで少し動画そのものを離れて、ななななな~Pがこの動画に至るまでの経歴について、想像を逞しくしてみたい。

この処女作の表現内容の確固性から一つ想像できるのは、これは彼自身にとって初めての創作経験ではないのではないか、ということ。動画周辺の言動から推定される彼の世代や趣味の範囲から言っても、MADやフラッシュの制作に手を染めていたり、2次またはオリジナルの創作を執筆した経験があることは充分にあり得る。
実際に彼は07年末に、ニコマス以外で挙げていたらしい動画の権利者削除が原因で、アカウント停止の憂き目を見た一人でもあるし、後のKAKU-tailParty参加時には手描き絵を披露してもいる。

もう一つ興味深いのは、本動画において、曲の短縮加工がなされていることだ。
原曲と比較すると、タイトルの言葉「等身大の地球儀」を含む2番のパートが削除されている。記憶があやふやで確信が持てないが、サビの繰り返しも一部が省略されていたかもしれない。この編集は、少なくとも、単純にフルの動画製作が困難なので短縮した、というレベルではなく、表現目的に合わせて曲を最適な形にする、という編集意図を一定以上含んだものと考えられよう。
これは他の動画にも指摘できることで、ななななな~Pが作品において原曲をそのままフルで使用したことは、ほとんどない。彼がニコマス動画で使用した曲は、アーティスト自体、曲自体に対して強い思い入れが示されているものばかりであるにも関わらず、だ。

ななななな~Pの動画に対して、特に同業のニコマスPからなされた評価の多くに共通することとして、演出の技術的な巧拙はともかくとして、演出意図の明確さ、全体構成への意識の高さを賞されていたことが挙げられる。
そのようなMAD作者としての特質は、曲に対する態度において、既に表れている。
またこれは、武器にするほどのものではないにしろ、MADを製作するに困らない程度の音いじりのスキルをあらかじめ持っていたということでもあって、後に彼は公式曲の音源を加工して全員Ver.にした動画を作って、気づいてもらえなかったとボヤいたりしている。


動画の話をしよう。

この動画が、ななななな~Pにとって、ななななな~Pの春香にとって、アイドル活動の、プロデュース活動の第一歩に他ならないことを踏まえた時、この動画に選ばれた曲の重みが、理解できる。
『等身大の地球儀』は、これからアイドルとして羽ばたく天海春香に一番ふさわしい歌として、初めてステージに立つ春香が唄うべき歌として、ななななな~Pが贈った歌なのだ。

私は、この動画の中で具体的にどんなステージが行なわれていたのか、ほとんど何も憶えていない。
春香が、どんな舞台で、どんな表情で、どんな踊りを踊っていたのか。まったくわからない。どんな衣装を着ていたか、なんて憶えやすいことですらわからなくなっている。イメージ的には普段着のまま舞台に立っていたような気がするのだが、自信はない。
この動画が、ななななな~P作品の中で私がとりわけ好んで見た動画の一つで、2010年の9月19日、一番最後に見た動画の一つであるにも関わらず、それから一二週間と経たないうちに、既にそうなっていた。

不思議なもので、動画の中には、どんなシーンでどんなことが起きていたか、という細部の記憶が鮮やかに固着する動画と、ディテールはあっというまに形をなくして、抽象的なイメージだけが強く残っていく動画とがある。
この動画は、私にとって、後者だ。

そうして、ディテールが消えて私の中に残ったもの、この動画から得た私の心の動き。
光り輝く何か、胸に明かりを灯して駆動させる何か。
それはちっとも薄れた気がしないけれども、未だに私にはそれを言葉にする術がない。
だから、私はただ、ななななな~Pが春香に最初に贈った言葉を、ここに書き写すのみとしよう。


 この歌声の帯 呼び覚ます力になる
 大地揺らすような 動かす力になる


ステージに立って開口一番、春香が発した言葉は、「歌声」だった。
たったいま彼女が歌いはじめた、まさにその声が、力になる、と歌うところから。
春香の舞台は始まったのだ。


 無数になびく旗 名誉と栄光背負って
 汚されたくない フィールドを持っているから

 勝利や敗北なんか 恐れるな!
 裸の自分を信じよう

 少し遅れたって すぐに取り戻せるから
 体しびれるほど 思い切り迷えばいい


ここには既に、泉川そら三部作において、そしてその後の動画を通じて、幾度も問い直し続けられるキーワード、「信じる」という言葉が現れている。
忘れるべきでないのは、ここで歌われている「信じる」は、他者へ向けられたものではない、ということ。
春香がプロデューサーを信じるのでも、プロデューサーが春香を信じるのでも、二人が二人の関係を信じるのでもない。
自分を、裸の自分を、信じる。それが、ななななな~Pの「信じる」の、はじまりにおかれた言葉だ。

その「信じる」があるからこその、「恐れるな」であり、「迷えばいい」である。


 すべて道の途中 こんなとこがゴールじゃない
 大陸踏み鳴らし 思うままに立ち向かえ


この言葉はちょっと不思議で、面白い。スタートに立ったばかりなのに、ファーストステージなのに、「道の途中」で「ゴールじゃない」だなんて、当たり前じゃないか。
そして、だからこそ、この言葉は、このファーストステージの真髄を顕しているのだと思う。

すべて道の途中だ、と、こんなとこがゴールじゃない、と。

それは、アイドル活動の道半ばにある時にも、失敗して挫折した時にも、頂点に上り詰めた時にも、さらにその先にも、再び始まりを迎える時にも、等しく歌うべき言葉だ。
その言葉を歌っているからこそ、このステージは、どんな時にも立ち戻ることの出来る原点となった。

より皮相的な部分に目を向けるならば、つまりこの時ななななな~Pと春香には、「立ち向かう」べき対象が存在したことにもなるが、それはまた後の話としよう。


 この歌声の帯 呼び覚ます力になる
 大地揺らすような 動かす力になる


この動画の中に、たとえばプロデューサーとの思い出というようなものは、表現されていない。ただ、ステージに立って歌い踊る春香の姿のみがある。
そして歌い終わると共にそのステージも消えて、最後に映されるものは、地球だ。

春香の足が踏みしめているのは大地で、歌声は地球すべてとつながっている。
その歌声は、今はまだ小さいかもしれない。
だけど、きっとそれは、大地を揺らすような、動かす力になる。
春香の歌声は、等身大のまま、地球すべてに響くのだ。

いろんな時、いろんな瞬間に、私はななななな~Pのあの動画が見たい、この動画が見たいと感じるわけだ。
その中でも、落ち込んでいる時、元気が出ないと感じる時、道がわからなくなったと感じる時、真っ先に思い浮かぶのが、『アイドルマスター 天海春香 等身大の地球儀 』だ。
そして何度、この動画を見て力を取り戻したか、道を見出したか、数えきれない。

それはきっと、ここに、右も左もわからないけれど、地球を踏みしめて、裸の自分を信じて、この声で大地を動かすよと歌っている春香が、いつでもいるからだ。

時々、無性にこの歌を歌いたくなる。ニコマスに出会って、就中、ななななな~Pの動画に出会って、時々聴きたくなる歌はたくさんできたけれど、歌いたくなる歌は、この歌をおいてない。


ところで、再投稿されたこの動画には今までに、全部で67のコメントがついている。
きわめて普遍的な現象として、その中には動画そのものを見ているのではないコメントが多く含まれている。

動画の最初には、「春香のためなら死ねる」という言葉が書かれた静止画のアバンがあって、その言葉に反応したコメントがまず付いている。
そしてステージが始まると、コメントの話題はもっぱら二つに集約される。
一つは、この曲と歌手をあらかじめ知っている人による、曲の思い出を語るコメント。
もう一つは、横浜ベイスターズについてのコメント。この曲は、ベイスターズの山下大輔元監督のAAを使ったフラッシュのBGMとして使われていて、そのフラッシュの内容を動画の上に書き写したコメントと、そのフラッシュについての思い出を語るコメントが大量についている。
つまるところ、そこにあるのは自己の思い出の投影であって、歌そのものを聴いてコメントがついたのでも、踊っている春香を見てコメントがついたのでもない。

それが途中から、ほんの少しだけ、変わる。
2分22秒に、「春香にあった良い曲ですねー」というコメントがついて、それから「いいなあ。元気が出てきた」、「gjだぜ春香!!」と、少しずつ歌について、動画について、春香についてのコメントが現れて、ラストまで続く。
それは、それほど大きな話題になったわけでもない動画の、それほどたくさんついたわけでもないコメントの中の、ほんのちょっぴりの変化でしか、ないかもしれない。
でも、たしかに春香のステージは、塗り固められた視界を越えて、誰かの心を呼び覚ましたのだ。

等身大の春香の歌声は、すでに、大地を動かし始めている。

「アイドルマスター 天海春香 等身大の地球儀」。




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