2011上半期ニコマス20選novelsm@ster巡り(2)


・批評眼を感じる枠

なかなP

フィーリングで選んだ、と書かれていますが、格無しP『ひなどり、にひき』に「日常という立ち位置を外さないまま進んでいく所がいい」、ハリアーP『スーパースター【短編】』に「なんでもない事を描ける。空気が描ける。ハリアーPの本当の凄さはここにある」、被虐Pの『ランチタイム「M」』に「『美希を相手に場所の移動もなくただ20分会話するだけ』というのをきちんと成立させている」と、一貫した評価軸があることがわかります。
それはノベマスに限った話ではありません。どのジャンルのどの動画に対しても、その作品の何を見てどう捉えたのか、がここまでわかりやすく記された記事は、なかなかないでしょう。
そうやって核心が明快に示されたコメントの中で、ラストの赤ペンPの項だけは言葉が溢れ出している。そこも含めて、全体で選者の動画観を提示する一つのパッケージとして、説得力のあるものになっています。

ところで、今回の20選で被虐Pを選出したのは、なかなP・ヘンリーPの二人で、選んだ動画も同じ『ランチタイム「M」』でした。この二人はまた、20選に初参加以来、毎回被虐Pの動画を選び続けている点でも共通しています。
『ランチタイム「M」』は、なかなPのコメントが表現した、全くそのままの動画です。ところが、表面的には牧歌的なその情景が、過去作から続く物語世界に耽溺している者にとっては、スリリング極まりないせめぎ合いの光景でもある。
そういう特質が、被虐Pが二人のPに選出され続けている理由でもあろうし、また「この回は以前の回踏まえた回」だからとして、なかなPが今回の選出をためらった理由でもあるでしょう。

ぴよすきP

自己の世界を打ち出す。分析的に語る。感情の振幅を見せる。比喩で攻める。ワンフレーズで切り取る。
多彩さと使い分けが目に楽しい、技のデパート的なコメントの数々。
平蜘蛛P『ディライトスーパーノヴァ』で「総合力」と「統一感」という単語を対置的に並べる様や、むろP『Boy Meets Girl』での「我那覇響というキャラクターを良く分かっていて、かつその中に留まらない部分をプラスしていっている。」という表現など、頭の切れ方を感じます。ラストの魔王エンジェル論が熱い。

金のP

今回の20選でどきゆりPは64票を集め、うち63票が『スマイル体』に入りました。残る1票が、金のPから『敗北とヴィクトリー』へのそれです。『敗北とヴィクトリー』はもう一人、サムネ1選で選んだ方がいます。
金のPのコメントは、FRISKPの項で自ら言及されていますが、普通なら「発想が凄い」と表現しそうな場面で発想という語を用いることが、慎重に避けられています。
どきゆりPの動画を評するに当たっても、発想という語は用いられません。般若面というキーアイテムを登場させる理由づけの鋭利さ、般若面が春香の表情を表現し得ているという絵作りの技術が評価のポイントとなっています。
そのように思慮を巡らせて言葉を選ぶ人によって、結果として固有の一本となる動画が選択されたことは、必然的な帰結なのかも知れません。

私自身は、『敗北とヴィクトリー』という動画は独創性が高いのではなく、平易な発想を、テキスト動画を構築する技術の高さと絵作りの労力・表現力の大きさによって、巧みに演出した点に妙味があると思っていました。
般若面というアイテム自体について追求する視点を持っていなかったので、アイテムの背景理解に基づいた金のPのコメントは、個人的にも大変勉強になりました。

もじゃ氏

運営として全体を見渡す立場にあった第四次ウソm@sから、さぼてんPのOPを含めて4作品を選出されています。意識的な業かどうかはともかくとして、それは主催者として何を以てウソm@sの核心と捉えているかの提示の意味合いを持つわけで、重い意味を持つ選択だと感じました。
「選考基準はフリー」とある通り、特定の場所に焦点を絞るのではなく、生主として広告主として関わっている広い範囲のニコマスの、全体を捉えようとした20選だと思います。
そういう人のそういう20選であるからこそ、ノベマスからガルシアP・平蜘蛛Pと並んで、他にDianaPしか選べなかった看板泥棒Pが入っているのが、とても自然です。また、ここで外せない一人として看板泥棒Pを選べることの背後に、広角的な視野と視聴量の存在を感じます。

maronzu氏

胸厚P『歌姫ってヤツは。』に、「言葉遣いに美学がある。」
平蜘蛛P『私が事務所に来た理由』に、「初めて実在する千早を見せてくれた」
やったん氏『雨のち晴れ ところにより双子』に、「双子を正面から描くことは難しい。」
bya氏『貴音とトロ』に、「貴音の正しい利用法が発見されましたw」
見ていないと書けないし、見ていたところで滅多に書けるものではありません、こんな言葉は。
全てのコメントを2行以下で構成する、つまり、AがBで、CはDである、という4要素だけで言い尽くす文章を書くということ。それで感情表現ではなく読解の提示ができるのは、語彙や文芸的センスだけの問題ではないのです。途轍もない。

わんたP

「5月途中から動画をほとんど観なくなった」と書かれています。全体を見渡しても、前回はノベマスの側に"濃い"チョイスが多く見られたのが、今回はむしろ貴音枠として2本が選ばれているPVの方が異彩を放っていて、過ごした半年が顕れていると感じます。
ともあれ、大百科記事でノベマスPの事蹟・個性を端的に表現するという、難しい活動を続けて来られた方ですし、元々ノベマスだけに収まらない視野・知識の広さを持った方でもあります。その見方・語り口は、とても示唆に富んでいます。
『とのばな』を選んだ人の中でも、シリーズの中から何故この回を選んだか、ということをこのような切り口で鮮やかに説明できるのは、この人ならでしょう。
ヘンリーPから最大のヒット作である『家の壁が千早になっていた。』を選びつつ、名前を挙げる過去作が『七六五家蜘蛛の会』や『アイドルは炬燵で推理する』ではなく『B@NANA』・『不思議の夢の伊織』であたる辺りにも、一筋縄ではいかない思い入れを感じます。
この20選の一つの眼目は、やはり金髪豚P『ノベマス失敗あるある 怒涛の30連発』の選出でしょう。この動画をも生んだ5月末の「ノベマス制作講座」流行のきっかけは、わんたPが『【最底辺ノベマス講座】えっ私の再生、低すぎ・・・?』を投稿したことだったからです。
わんたPの活動の軌跡を、多少なり知ってこの動画を観察すれば、ここにあるのは、制作者に対する注文というよりも、むしろ少しでも多くのノベマスPに日の目を見て欲しいという願いの発露であることが想像できます。
自分が素晴らしさを知っているものの価値が世に知られていない。そういう思いからくる、このようなやむにやまれる言動は、論理的に追求すればいくらでも矛盾を発見できるでしょう。
現実に、この動画自体、単体で作者の意図を充分に実現したとは思いがたいし、たとえば20選で他人から選ばれるという形での評価は受けませんでした。自身の20選に、「制作講座」ブームが生んだ最大のヒット作である金髪豚Pの動画を選び、その「わっかりやす」さを選ぶポイントとしたことには、複雑な喜びと苦衷が反映されているように感じます。(また、この選出は、この人の20選においては、金髪豚Pのこの動画以前の活動と境遇を踏まえてのものでもあるでしょう。)
しかしながら、結果としてわんたPが投じた石は、多数のPに「ノベマス制作講座」の筆を取らしめました。それは多くの有用な情報を可視化させ、むろPにノベマスPとなる道を指し示し、金髪豚Pにヒット作を生ましめています。私は、今回の20選において、「ノベマス制作講座」群に投じられた票は全て、わんたPに最初の動画を作らせた意思に投じられたようなものだと思っています。

さて、あまり見ていない筈の6月からの、改訂P『【ノベマス】 雪解け水 【短編】』の選出と、それへのコメントは、読み手としてのわんたPの、真骨頂とも言えるかもしれません。
改訂P久々の投稿である本作は、わんたPも書かれている通り、映像演出において以前の動画から大きな変容を遂げた作品です。そのような作品に対して、わんたPだからこそ書くことが出来たこの批評こそ、氏が見てきたもの、その結果として見えているものの確かさを雄弁に示しています。
なお、改訂Pの過去作が消えてしまっていることを、私はわんたPの20選で初めて知りました。
前期の20選novelsm@ster巡りの締めくくりの位置に私が置いたのが、改訂Pの動画に対する鰤の字Pのコメントでした。その動画と今の動画を見比べることが出来ないことは残念ですが、かつてのコメントと、今期わんたPによって新たに紡がれたコメントを読み比べられることを、感慨深く思います。


・コメントで見せる、楽しませる枠

ぐぐるP

ぐぐるPの文章について私がなんか言うこともありませんが、この人が『ブラックロォズ』を見てるのか! という事実がまず、感動的でした。
意識的で技巧的な言葉を詰め込んだコメント群の中で、『ブラックロォズ』へのコメントは、(表現している自己に対して意識的な文章であることに違いはありませんが)、作品に引きずり込まれていった様子がストレートに伝わってくる名文だと思います。
ゆき☆P『小鳥さんの 少女漫画のある風景【少女漫画紹介動画】』へのコメントも熱気が籠っていますね。しかし、いろいろやってますねえ、ゆき☆P。

おーふな氏

架空戦記・卓m@s中心のセレクション。ダイヤのマークで細かく区切られたコメントにみなぎる、独特のリズム感と勢い。
選者の造詣の深さを窺わせる、界隈の作品動向とゲーム内容とを踏まえた解説に説得力があります。
ノベマスからは、とたらいざP・HLCPを選んでの「微妙にズレた雪歩というのは◆ノベマス読む際の◆私のツボなのかも知れません」とのコメント。思わず頷いてしまいました。

実際、雪歩の性格付けに特色がある動画は、ことに2011年に入ってから増えていると思います。
雪歩が話をかき回す側にまわると会話に推進力が生まれやすいのと、ズレたりすっ飛んだりした言動を取らせてもどことなく本人らしさが出やすいというのか愛されやすいというのか、そんな傾向があるように思え、そうした性格付けが目立つことは、逆に雪歩というキャラクターの軸の強靭さを示している気がします。

hitomi氏

上で言及した、どきゆりP『敗北とヴィクトリー』をサムネ一選で選んだ方。07番から11番まで5本がノベマス枠。
綺麗に改行されたコメントは見やすく、各動画のアピールポイントが的確に説明されています。この動画の素晴らしさを知って欲しい、という誠実な思いが籠ったコメントです。

ZAKURO氏

こちらも丁寧で誠実さを感じるコメント。
名の通ったシリーズ物が中心ですが、人気作品を集めたというよりは、内容として間口が広く親しみやすい作品を選択する意識を感じる、配慮の行き届いた20選です。
概要の説明と、匂わせて興味を煽ることのバランスの取り方が巧みですね。

かくばるP

10作品のみ(うち6作品がテキスト系)の選出。それだけに、選んだ作品への思いの強さがにじんでいます。
烏賊素麺P『愛ちゃんのパパになって一緒にお風呂入りたい。』での愛パパ、及び愛パパと舞さんの関係性についてのコメントや、かげろ~P『律子育つ愛』での「アイマス原作における諸要素にしっかりと物語性を与えようという意志」という表現など、動画作者としての視線の鋭さと、日常からの思慮の積み上げ方を感じます。

Siz-Q氏

軽妙で生き生きとした短文コメント。読んでいるだけで楽しい。
「ブラジャー頭にのっけて真顔の舞さんが見れるのは雀姫伝だけ!」なんて、そんなまとめ方があったのか! と意表を衝かれますし、迅七P『まこりんの 初投稿のあと あるある【ピン芸だよ!】』での「やってる事は自虐なのに真が可愛いので悲壮感は抑えられている」など、鋭い指摘もさらりと出てきます。
なかでもレッドブルP『萩原雪歩の野球賭博概論』のコメントは、1行目で教養講座としての、2行目でストーリー動画としての魅力の核心を捉える隙のない構成、見事だと思いました。

早坂P

レビュー的なというかキャッチコピー的なというか、実に切れ味の良い文章。
何も難しいことをしているように見えないのに、平易な言葉の組み合わせでこういうフレーズが書けるとは、羨ましいことです。

早坂Pはじめ4人からの選出を今回の20選で得た、おぱマPの『「私は、高槻やよいが嫌いだ」』は、千早とやよい、各々の原作設定を踏まえた、二人のシリアスな関係の描写を特色としています。
ノベマスでの千早→やよいの関係というと、中の人イメージの影響の強さが印象論としてはよく語られます。実際に、そうした関係性を設けた作例が多いのも確かです。それと対比する形で、本作の独自性が評価されるケースが多いのは、理解出来ることです。
しかしながら、本作のようなシリアスな関係をテーマとするものであれば、桜飯P『【ちはやよい】春の訪れ』・弟切P『アイドルマスター 『ホームワード・バウンド』』・ガテラー星人P『【やよいノベマス】善意の境界上』・おぱマPの本作、更に近作ではアデリーP『【短編】とびらを、たたいて』といった一連の作品が存在します。その他、一例を挙げれば、コンビを組んで周囲にいたずらを仕掛ける利休P『奥様は14歳』シリーズ、同格の友人に近い関係にあるジャッカルP『千早の周りの懲りない面々』等々、ノベマスの中で、二人の関係が多彩な形で描かれてきたのは、言うまでもないことです。
従って私個人は、本作を賞賛するに、中の人補正の波に洗われるノベマス海中の孤岩、的な構図を以てする必要性はあまり感じません。
それはともかく、作者独自の咀嚼に基づいてキャラクター描写・関係性描写が行なわれる作品に傑作が多い点は、疑いありません。

機能美P

やはり、なんと言っても雀姫伝の項の「信じろ」→ドリPの項の「信じない」の流れに尽きます。
言葉をこねくりまわした結果、難しいことを表現できる人は、怖くはないわけです。教養や語彙や鍛錬や、もっと非情には能力の壁があって、真似しようとしても辿り着けないことは往々にしてありますが、それが構築される過程は想像の範疇内にありますから。
逆に、切り詰めていった結果シンプルなフレーズに辿り着ける人、というのも理解はできます。
こういう、生まれ落ちた瞬間から完成された芸になっている言葉は、怖いですね。



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