アーケード版アイドルマスターのオンライン稼働終了に寄せて


 最近ある生放送のコメントを見ていてハッとさせられた議論。
 あるアイドルの低ランクでのコミュを、EDまでのストーリー全体の中でどう位置づけるか、というような話題で。全く正反対の二つの意見が出てきた。その時になぜ意見が食い違ったのか分析したコメントがあって、大変興味深かったのだ。
 私なりに要約すれば、Xbox版アイマスでは、Eランク昇格に必要なファン人数1万人は、自然増だけでも簡単に越えられる通過点に過ぎない。それに対してアーケードでは、オーディションに負ければ、1万人の壁を越えられずにFランクで引退ということが現実としてあり得る。だから、全く同じコミュを見ていても、箱版とアケ版のどちらを想起するかで全然違う解釈になるのでは、というような話。

 昨日26時を以て、アーケード版アイドルマスターのオンライン稼働が終了した。私はニコニコからアイマスに入った人間で、アケマスのプロデューサーではない。
 だからと言って私に、オンライン稼働終了に対して感慨や感謝の念が無いというわけでは全くないが、それとは別に前から思っていたことがあるので、それをこの日に書いておこうと思う。



 2007年初頭、ニコニコ動画(β)~(γ)のサービス開始に際して、ニコニコ動画にはいくつかの人気ジャンルが出現した。Xbox版アイドルマスターを素材とするMADもその一つである。やがてそれは「ニコマス」と呼ばれる動画群を中核としたコミュニティと化した。
 ニコマスは、ニコ動の他の流行ジャンルの多くと異なる特徴を持っていた。それは、箱マスとニコ動に1年半近く先行して、アーケード版アイマスが稼働し、アケマスを基盤としたコミュニティが既に存在していた点である。 ニコマスに参入していったP達の中にはアケマス経験者が多数含まれていたから、アケマスのプレイ経験の中で培われた、アイマスへの知識や理解、コミュニティの文化・人脈といったものはニコマスに大きな影響を及ぼした。
 しかしながら、アイマスは一作ごとにパラレルワールド的な設定と異なるシステムを持つゲームとして展開していき、またニコマスには、視聴者が(ゲームを体験する事なく)新たなニコマスPになり得る自己再生産の機能があった。従って、アケマスにおける常識がニコマスのコミュニティ全体で共有される、ということにはならかった。

 私はこうした各人のアイマス体験の多様性と、それに基づくニコマス観の違いというものは、ニコマス作品をより深く理解するためにも、ニコマスのコミュニティ全体を分析するためにも、大きな鍵だと思っている。

 アケマスと箱マスに話を限定して、体験の違いがアイマス観・ニコマス観に影響を与えそうな例を挙げよう。
 たとえば52週=1年間という箱マスのプロデュース期間に重要な意味を持たせた作品は数多いが、アケマスにおけるプロデュース期間はランクアップリミットで決まるもので、52週という区切りに意味はない。箱マスよりもアケマスに自分のアイデンティティを置く人にとっては、こうした作品の感想は変わってくるかもしれない。
 あるいは、ほとんどの操作がリセットで無効化し得る箱マスと、基本的にプロデュースを始めたら完走するしかない、不可逆的なアケマスの違い。
 今挙げた例は、ニコマス作品の中でも特に、メタ的な要素を強く打ち出したいくつかの動画を念頭において言ったものだが、勿論こうした問題はメタ的な作品だけに適用されるものではない。そして今述べたのはゲームシステムに関する相違点だが、おそらくもっとも言語化しにくく、扱いにくいのは、オンラインで繋がっている中でプレイすることから生じる感覚や人間関係そのものである。

 当然ながら、アーケードを含むアイマス各シリーズのゲームシステムの違いを比較したり、プレイヤーの意識の違いに言及した言説はこれまでも多くあった。ただ、あくまで私の印象では、であるが、アケマスプレイヤーの中での共通認識や他のアイマスとの共通性・異質性全体を総括的に考察したり、もっと踏み込んでアケマスの文化や世界観がニコマスにおける作品の動向にどんな影響を与えたか、まで分析しようとした人はあまりいなかった気がする。
 それは、純粋にアケマスを楽しんでいる人には別にニコマスとの関わりを分析する必要がないからでもあろうし、また今日までニコマスと並走してアケマスのコミュニティが存在し続けていて、あえてそれを総括したり定義づけたりする必要もなかったからでもあろう。

 しかしながら、「オンライン対戦で繋がったアケマス」は、過去のものになった。それは体験者の記憶だけに存在するものになり、今後その体験者が再生産されることはない。
 私は、アケマスのプロデューサーにとっては当たり前だが、そうでない人には当たり前でない、言語化されていない文化・常識・感覚・世界観…、そういうものがまだまだあると思っている。まあ、別にそれが今後のニコマスの為に必要とか、そういう崇高な話ではない。単に、私自身がニコマスをもうちょっと深く理解するために、そういうことを誰かが書いてくれたらな、と願っているというだけの話である。
 ただ、私はアケマスのプロデューサーから、オンラインで繋がったアケマスとは何だったのか、そこに集ったプロデューサーとは何だったのか…、そういう総括を聞きたいと思っているし、そうした議論は多ければ多いほど良いと思っている。
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