はるかは じゅもんをとなえた!(中編)


後編の筈が中編になりました。なんてこったい。


⑸09年後半


管見の限り、当該期には前編で述べた "ひとりぼっちの春香の救済" テーマ(・春香はPによってのみ救われる。Pと春香は物理的別離状態に置かれる、の2大ルールを満たすもの)が見当たらないように思われます。もっともこの時期は、前編で触れた『雨空』『糸』の連載の真っ最中でもあるので、前期からの連載作品のみでこの種の物語の需給がつりあっていた、ということかもしれません。従ってここで触れる作品は、別の時期ならば要件を満たさないとして無視している内容のものを含みます。


トモヤP アイドルマスター] 春香への日記 (09/7/20 処女作)

・ラストコンサート終了後、Pが事故に遭って死亡する。


枯木P シアワセの音 (09/8/9 処女作)

・事務所外の人物(記者?)の視点により、「A」というアイドルのプロデューサーが失踪した、というエピソードが語られる。

春香ドーム成功EDをめぐる諸言説を踏まえたエピソードを描きながら、視点を完全な外部におき、細かい事実を描かない、という珍しい作例。


ハリアーP 【ノベマス】Born to be iDOL【短編】 (09/8/2)

「春香ドーム成功ED後の世界」を描くのではなく、ドーム成功EDの展開に理由付けを与える、春香ドーム成功ED補完型の作品。ドーム成功ED後の ”一人ぼっちの春香の救済" ものの作品の思想は、この動画で語られるような言説を否定してそのまま裏返したところにあるので、本動画とこれまで見てきた動画は表裏一体の関係にある、と言えます。
「春香ドーム成功EDを迎えるまで」を描く作品は、他にも全期間に渡って例がありますが、当記事では扱っていません。


おしるP 【Novelsm@ster】Swanky Street~春香と彼の交差点【the pillows】(09/10/20)

・春香は現在も人気絶頂である
・春香はP以外の人にはプロデュースされたくないと思っているため、一人で活動している。
・Pは春香と同じ事務所で新人アイドルをプロデュースしている

というわけで、これだけでもここまでこの記事で述べてきたようなパターンには全く即していないことがわかりますが、うん、この記事ではただ当該期にこの動画が存在することに言及するに留めましょう。


ボン太くんP(動画)+鶴ぺたP(プロット) 【NovelsM@ster】幽霊春香さんシリーズ (09/10/23~最終更新11/2/8)

・ED後、春香が事故に遭って幽霊となる。幽霊春香の姿は千早にしか見えない。

当作品は、Pと春香の関係のみを取り出すと "ひとりぼっちの春香の救済" ものの構造がそのまま当てはまるものの、

・千早と春香の間に、Pが持たない特別な関係線が結ばれている
・「幽霊春香」という存在をめぐって生じる事態を解決する、というストーリーの性格から、Pと春香以外のキャラクターの行動にも焦点が当たる

という点が特徴的です。ストーリー中の一構成要素として "ひとりぼっちの春香の救済" を利用する作品と、救済にのみ焦点を当てる動画の中間に位置する、と言えるかもしれません。

前述の通り、前編では要件に合わない動画は無視しているので、当該期に突然、ドーム成功ED後春香へのアプローチが多様化したわけではありません。ただ、春香メインのストーリー上でPまたは春香が事故に遭う、というような、従来のニコマス的文法をより変則的に扱う傾向の強まりは、指摘できるかもしれません。


⑹10年前半


レストP 【novelsm@ster】世界で一人、愛を抱えて【短編】 (10/1/9)

・プロデューサー視点での、 "1年でリセットされる世界を記憶を保持したままループ" もの。


覆面作家P 白日、夢の残滓 (10/5/16)

覆面作家Pは10年4月末から5月初めにかけ、相対性理論の曲を用い、春香とPの関係をテーマにした動画を2本投稿しています。その後に出た、締めくくりとも言うべき動画が本作です。本作品については、台詞を一つ抜き出せば、その立ち位置が把握できるでしょう。

「私はプロデューサーさんの隣でないと駄目なんです。
 でも、私一人でいないとプロデューサーさんは
 私の隣にいてくれないんです。」

"ひとりぼっちの春香の救済" ものの、久々の正統後継作、ということになりましょうか。


錯誤P 【NovelsM@ster】~Sound M@ster~プロデューサー編その2 (09/11/21)

火谷絵理P irst Love - haruka story (10/1/23)

emanonP【novelsm@ster】もし、次があるのなら。【春香誕生祭】 (10/4/4)

無個性P【Novelsm@ster】ホワイトバレンタイン【短編】 (10/2/25)

シシカバブP(動画)+マルチP(原作) 【NovelsM@ster】思い出を紡ぐ記念日【即興企画】 (10/7/4)

10年上半期以外の動画を含みますが、上記いずれも、 "ED後の春香が、ひとりぼっちになりながらPに恋し続ける”、というルールを踏襲しながら、主としてP側からの能動的アプローチによって、救済または希望が明確にもたらされる内容の短編です。勿論これで網羅されているわけではありませんが、救済が与えられない・救済までの道のりが長い作品との間で出現頻度を見比べた時、また各作品の書き手のデビュー年代を考えた時、ある程度の作品傾向の流れが窺えそうです。


にわP アイドルマスター やさしいうたの物語  【Novelsm@ster】 (前編10/6/4、後編10/6/27)

・春香がED後、事故に遭う
・Pはアイドル全員と会話した後、春香に会う
・ ”1年でリセットされる世界を記憶を保持したままループ"

事故というギミック、春香以外のキャラクターとの関係性の描写など、前年より出現している手法の活用。また、これにより、「プロデューサーの春香に対する心理」に焦点が絞られます。馴染みのテーマの、2010年的アプローチでの再生。逆に言うならば、このようなアプローチを通すことで初めて、馴染みのテーマが2010年現在の視聴者に対する訴求力を持てた、ということでしょう。


すっきりぽんP(ポリンキース氏名義) アイドルは逃げる、アイドルは逃げる (10/6/6)

愛識P 【愛m@s】 あかいりぼん 【5mium@s2nd】 (10/6/13)

10年上半期はにわP以外にも、著名なノベマスPによる、春香とPの関係を描く動画が目立ちます。すっきりぽんP、愛識Pの作品とも、多分に過去のドーム成功ED後春香ものの歴史と文法に対して意識的であることが窺え、そこからパターンを外すアプローチが取られています。

ここまで当該期で上げた作品は全て短・中編であり、エグザスP・糸の人・ピヨ談Pの長大なシリーズが目立った前年までと、様相を異にします。需要においても供給においても、単純な原初的 "ひとりぼっちの春香の救済" テーマのみで長いストーリーを構築する動機は見出しづらくなっており、扱うならばせいぜい5~6分の短編で、というのが2010年の状況です。
一方で、春香とPの関係をストーリーの主眼とせずとも、物語を構成する1要素としての、Pに振られる春香/振られても恋し続ける春香、という設定は、相変わらず最も普及したギミックの一つとして存在しますが、それは例を挙げるまでもないでしょう。


⑺10年後半~11/2/24まで


寿司P(動画)+並(ならび)P(絵)【NovelsM@ster】 good bye and good songs 【春香】 (10/7/13)

sinseiP 雨やどりの夢 (10/10/10)

10年下半期においてドーム成功ED後春香を扱う作品としては、上記2作が挙げられます。特に後者は、「来ない待ち人をひたすら待ち続ける」という、 "ひとりぼっちの春香” のルールに忠実な情景を描く動画ですが、両作においてもアプローチ法・表現法の工夫が観察できます。不思議なことに、毎年下半期は、上半期に比べ新規のドーム成功ED後春香ものノベマスの登場が少ない傾向があるように思いますが、10年はとりわけそれが顕著です。

そして2011年初頭、Pと春香の関係を巡る作品群の意識は、「無印の春香」と「2の春香」の狭間で己の立ち位置をどう定めるか、という問題に集約され、ドーム成功ED後春香に関する問題意識はその中に分解吸収されて、『アイドルマスター2』発売前における最後の流れを形作ることになります。


アグモンP 【短編】世界が終わる日【春香】 (11/1/3)

おしるP 【Novelsm@ster】再び彼女に出会うために【短編】 (11/1/12)

にわP アイドルマスター 夏休みは終わらない / summer tune 20XX 【Novelsm@ster】 (11/1/15)

以上を踏まえて、ようやく本題であるところの『【アイドルマスター】糸電話 天海春香』の話に入りますが、また長くなってきたので、一旦切りましょう。なんてこったい。

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