伊織といおみきと、時々うさちゃんとかはるいおとかその他(1)


前回を踏まえて、07年~08年初頭の伊織ノベマスの話。

話が進まない上に伊織の話少ないよ、っていうね。
これはまた途中で放り出しそうな展開だなあ…。


(1)07/10~08/2

陽一P ノベルゲーム風アイドルマスター 「ツンデラーのリスト」 (07/10/5)

07/9/16にノベルゲーム風アイドルマスター 「天海春香の憂鬱」で初めてテキスト動画を投稿した陽一Pの、「ノベルゲーム風」シリーズの3作目。「im@s妄想コミュ」タグがついているが、視点の移動と一人称の地の文の存在、アイドル同士の会話の存在、9分30秒の尺など、既にコミュの模倣・捏造の域を越えたストーリー作品の形態を備えている。
現在「Novelsm@ster」タグを古い順に辿ると、陽一P以前にまとまった動画を投稿したPは哀川翔Pだけで、本作の時点でもこれにポルナレフPとSM@I電機Pが加わるのみ、そして「Novelsm@ster」というタグの成立が07年11月頃かそれより少し前と思われる(参照:乱れ花吹雪-狂い咲き-:ノベマス界隈その1)ので、本動画はノベマスがジャンルが成立する過程の最初期に位置する動画、そして伊織が主演する初のストーリー動画ということになる。(さらに哀川翔P「春香たちの夜」での伊織の出番の少なさを考えれば、ノベマスにおける伊織の事実上の初登場と言っても良い)
話の内容は、「ツンデレ」「バカップル相互リンク」のタグがついている通りで、09年以降連綿と作られ続ける伊織の甘々2828話の原型は既にここで出来上がっていると言えるが、初主演の動画がこの時期、このような形で存在するというのはなかなか興味深い。
というのは、一人のアイドルとのコミュニケーションをクローズアップする形式のストーリー動画をこの時期作っていたのは陽一Pだけで、その陽一Pも1作目春香、2作目やよい、そしてこの3作目で伊織を取り上げた後、春香主演オールスターの長期シリーズ作品「Ballet×M@sters」に移行するので、つまりこの時期この形でクローズアップされたアイドルは春香、やよい、伊織の3人だけなのである。
実はここで注目したいのは、最初に春香動画があった後次に伊織が来たと言う点だけで、間にやよいが挟まっているのは論旨上少々都合が悪いのだが、妄想コミュという形態とやよいの親和性(この後08年に時折出現する捏造コミュ系の動画においてもやよいは真っ先に取り上げられる。 Cf. けろP、弟切P、友哉P)を持ち出して納得しておこう。

春香と伊織の、というか春香に取り組むことと伊織に取り組むことの親和性はAugenblicke:2007年のガチいおりん(2)で既に指摘されているし、ちょうど昨日NP氏も言及されていた話なのだが、ノベマスの系譜においても春香と伊織の関わり合いもしくは呼応性の強さ(一本の動画内において春香と伊織の絡みが多いという意味ではない)は広く観察されるように思え、以後の動画を見ていく上で重要な視点となる筈なのである。


たりろーP アイドルマスター 経営者いおりん (07/10/29~11/1)

たりろーPは、07月10~11月に2シリーズ投稿した作品のどちらもが現在「Novelsm@ster」タグに分類されているのだが、動画説明文からは架空戦記を意識して投稿していたのが明らかで、後のタグ論争で「Novelsm@ster」に移ったのだろうと思うけれど、1シリーズ目の「永遠のアイドルマスター」が春香主演で、2つ目の本作は伊織のみが登場する。
この「経営者いおりん」は「たまごっち」とのコラボ作品なのだが、そのコラボの形態がいろいろと面白い存在である。特徴の一つめはPがアイドルと会話しながら「たまごっち」をプレイする、という形式で、もう一つはプレイ画面を外撮りして使うという点にあり、どちらも前例も直近の後続例もない試みだと思う。が、歴戦のプレイ動画ベースの戦記が全盛でそれ以外の動画形態が存在しない時代に、動画初心者のこのような試みがどんな批判に晒されるかは想像に難くない。その辺りの事情はRONRICO151氏のiM@S架空戦記リストに記録されている。
「アイドルマスターDS」の出現によってDSの外撮り画像が、ゲーム機というアイマス世界の外側のハコが映り込むことに起因する前衛性すらも帯びて、ニコマスに回帰してくるのは、あるいはこの動画の発想が内包していた斬新性を示すものと言えるかもしれない。


糸冬P 【アイドルマスター×太閤立志伝V】伊織立志伝第一回(前編) (07/11/13~12/24)

初の伊織主演のシリーズものにして、架空戦記タグ論争の的となって「Novelsm@ster」ジャンル成立の直接の契機となった「伊織立志伝」。つまり、ノベマスというジャンルはその出自からして伊織と共にあったわけだが、「経営者いおりん」にしろ「伊織立志伝」にしろ、あえて伊織を主役にする選択の裏には当然、春香(春閣下)主役が圧倒的に多い架空戦記の趨勢に対する意識があった筈である。その意味では、ここにも春香から伊織、という流れがあると言えなくもない。
勿論これは、春閣下以外のアイドルを主役にした動画全てに当てはまる話なので、伊織だけを特別視する理由にはならないのだが、稀少な主役作品どちらもが当時の架空戦記の枠内に納まらない要素を持っていて、片方は実際に枠を飛び出して別のジャンルを成立させてしまったのは興味深いことである。

さて、その記念すべき初主演シリーズであるが、アイドルに初主演を飾らせる作品としては、なかなか異様な動画であると言わざるを得ない。
すなわち、アイマス世界からアイドル一人だけを異世界に放り込んで生きさせる、というコンセプト。その作品の主演として11人のアイドルの中から伊織が選ばれたこと、そして伊織が主演する最初のシリーズとしてこの作品が生まれたことは、偶然ではないのだと思う。
異世界に生きる孤独と恐怖に対峙する主人公たるには、孤独との対峙を文脈として持っているアイドルでなければならない。また恐怖する弱さと克服する強さの両方を備えてなければ、物語の主役たりえない。
孤独と弱さ、そしてそれの克服は、以後ノベマスにおいて伊織にスポットを当てる際の重要なテーマであり続けるが、一個の世界丸ごとの重みをそのまま伊織の肩に載せてしまったこの作品の持つ緊張感と説得力は、現在でも孤高のものと言える。
そして、その孤独を克服し、伊織が自らの居場所を築き上げた先に待つのが世界改変という難題であるところが、この作品の、ひいてはim@s架空戦記という存在の複雑にして深遠なところである。


糸冬P 【アイドルマスター×太閤立志伝V】伊織幻戦記第一回 (08/1/1~6/15)

立志伝にて強制的な形でアイマス世界へ帰還した伊織は、幻戦記においては、再度訪れた戦国世界に対して自ら積極的にアプローチしていく。異世界にいる孤独、世界改変への疑問という、立志伝において伊織が一人で対峙していた問題は、幻戦記では雪歩が担当することになるのだが、ここに幻戦記という作品が最初から抱えていた難しさがあった気がする。
なぜならば、立志伝で伊織と共に異世界を体験した視聴者にとって、戦国世界は既に日常的な存在であり、加えて初めから伊織⇄雪歩という仲間がいる状態は孤独感を減殺し、つまり視聴者にとって雪歩の抱く恐怖と疑問はもはや共感の対象ではないからである。世界改変に対する疑問についての伊織の関心の低さは結末への導火線であったわけだけれど、気づけば伊織以上に視聴者が異世界に馴化し鈍感化していたのだ。
とまれ、今私がこの動画してもっとも感じるのは、上位世界を登場させるオチの衝撃などではなく、至極当たり前の話ながらIFの導入を進めれば進めれるほど現実から遠ざかっていくというシミュレーション戦記の持つ特性そのものの難しさだが、それは伊織と関係ない話である。

さて、幻戦記において、伊織の次に異世界へ飛ばされるアイドルとして選ばれたのは雪歩であった。伊織の次に雪歩。先に春香の次に伊織、という流れを強調し、今度は伊織から雪歩という流れ持ち出したのは伏線のつもりなのだが、この伏線が後になって機能するものなのかどうか、書いている私にもよくわからない。

関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

はるいおと聞いて

 いつもお世話になっています。NPです。非常に興味深い記事でしたので、思わずコメント致しました。本質的には春香派であると同時に、糸冬Pのノベマスと出会って以降、伊織のおかげで急速に自分のアイマス史が動き出した私にとって、このお話は重要なテーマのように感じます。


 こないだのコメントで「春香派と伊織派は相性が良いのでは」と述べましたが、実を言えばそこまで論理的に分析していたわけではなく、ただこれまで見てきたニコマス作品の中で春香派のPが作る伊織作品が実に印象的だったり、反対に伊織派の作る春香作品にハッとさせられたりというケースがいくつかあったため、その経験則から感じ取ったことを述べたにすぎません。あとは、何となく伊織派のP達の人柄に親近感を抱きやすいという個人的な理由もありますが。それにしても、Zeitさんがはるいおの親和性について指摘されていたことは知りませんでした。


ノベマスにおける伊織と春香の関係を見る上では、なんといっても「はるいお」作品の存在を避けては通れないと思います。春香と伊織のカップリングというのは、ニコマスの中でもかなりマイナーな方に入るようで、何しろそのタグの少なさをネタにしたノベマス(いおりんが、はるるんとイチャイチャしたいそうです:sm7888634)があるくらいですから。それでもはるいお第一人者である焼き肉P達の活躍によって、現在では大百科も整備されるくらいの知名度は有するようになりましたが、春香には「はるちは」が、伊織には「やよいおり」という大鉄板があるためか、どうもメジャーになりきれない印象です。

二次創作のカップリングは、キャラ同士が相補性(性格・能力・容姿・境遇等の要素において)を持つ場合にメジャーカップリングが生まれやすく、同質性が強いキャラ同士のカップリングはマイナー化しやすい傾向(あくまで傾向)があると個人的に考えています。 
例えば、東方二次創作にはアイマス以上にカップリングのバリエーションがあるのですが、Pixivのカップリングタグの傾向を見る限り、やはり原作での絡みが多く、かつ相補的なキャラ付けをされている子同士が組まれやすいみたいです。もちろんアイマスにはいわゆる「主従カップリング」が存在しないので、文化が違う東方二次創作の理論をそのまま持って来れるとは言い切れませんが、「はるちは」「やよいおり」「ゆきまこ」「みきりつ」といったメジャーな組み合わせが相補的なキャラ同士で成り立っていることを考えると、あながち的外れとは言えないと考えられます。
翻って見るに、はるいおが少ないのは彼女たちが相補性をあまり持たず、かといって完全に異質というわけでもなく、むしろ同質性を強く持っているがための結果と言えるかもしれません。この意見には色々とこじつけも入ってますが、それでも伊織と春香の本質にはなんらかの「共通性」が潜んでいるような予感はします。


しかし伊織ノベマス史の分析を行っていくのは意外と大変ですね。前に私も特集記事の題材候補に選んだことがあるのですが、上手い具合に法則性を見出せず、頓挫した記憶があります。ノベマスにおいて伊織はツッコミ役という鉄板ポジションを確立しているとはいえ、実際には作中で組んだ相手によって多種多様な表情を見せてくれる子なので、とてつもなく豊かな描写バリエーションが存在しています。その割に本人の性格が制作者間でブレないのは面白いですね。かつてPのどなたかが「伊織は二次設定以前に一次設定が定着した珍しいケース」「アケのころから性格が変わらないのは伊織くらいでは?」と評していたと記憶しています。

私は常日頃から「伊織はいちばんよくわからない子」であると思っていて、なればこそ「もっと彼女のことが知りたい」という欲求に突き動かされて2011年の伊織プッシュ年を設定したわけなのですが、こうして彼女のことを分析してみるとその実像はスルリと指先を抜けていってしまう気がします。容易に真の姿をつかませない気まぐれ猫のような魅力こそ、伊織の「深さ」だと思うのですが、なんか悔しいですね。そこを直感的につかめる人々こそが、伊織派のP達なのかもしれません。

本当に伊織は「ツンデレお嬢様」という枠組みではとうてい捉え切れない大器だと思います。

タイトル詐欺かもしれない

NPさん、いらっしゃいませ!
こちらこそ、いつもお世話になっております。

私も春香と伊織(または春香派と伊織派)の関係についてあまり筋道だった見解は持っていないのですが、おっしゃるような春香派のPが作る伊織作品が実に印象的だったり、反対に伊織派の作る春香作品にハッとさせられたりというケースを私もよく見ることと、あと私が知っている春香好きの人の中に、伊織も好き、伊織に割合関心があるという人が結構いる印象があるんですよね。それで、どうもこの二人には何か深いところで繋がるところがありそうだなと思っていた時に、ズバリとそれを指摘したzeit氏の文章を読んだので、衝撃的というか、ちょっとドキリとしました。

アイマスの場合、同学年の二人が相補的な組み合わせになるよう設定されているので、はるちは、ゆきまこ、やよいおりがメジャーになるのはごく当然のような気がして、深く考えたことがありませんでしたが、なるほど、相補的なカップリングのメジャー化は、アイマスに限らず二次創作全体で広く観察できそうですね。東方のカップリングついては全く疎いので、とても興味深く思います。

伊織を追っていても感じますが、アイマスのメジャーカップリング以外のカップリングは、もちろん公式の動向の影響も大きい(例えばSP→みきりつ、たかゆき 竜宮小町→いおりつ)のですが、プッシュしているPの地道な活動によってじわっと広がっていく要素がとても大きいので、まだまだこれから、カップリングとしてのはるいおは存在感を増していくでしょうね。一方で、春香と伊織の共通性あるいは対称性を考えていくということは、必ずしもカップリングとして二人を絡ませる指向を持つものではないのかもしれません。

これだけ多種多様な作品があり描かれ方がある中で、少なからぬ人が、伊織にはブレが少ないと感じているのはとても興味深いことです。それをもたらしてるのは何なのだろう、と考えだすと夜も眠れませんw。
伊織にかぎらず、アイドルを中心にして作品群を俯瞰するのは、技術や題材から変遷を辿ろうとするより余程捉えどころがなく、大変難しいことだなと思いますが、論として何一つまとまらなくとも、自分の中ではいろいろと得る所がある気がしています。

ちなみにですが、私が一番「わからない」のは、やよいですね。やよいがよくわからないので、やよいおりもよくわからない。記事のタイトルから、伊織の最重要のカップリングが抜けているのはそれが理由です。今の自分には、やよいおりについて何か書くことができないなあ、と。もちろん、難しいのはどのアイドルも難しいのですが、たとえば真、美希、春香、律子あたりは、各々のPが、自分のアイドルのどこがどんな風に複雑でどう深いのかを、言葉にして表そうとする傾向が強いと思うんですよね。なんとなくですが、やよいPは直感的に捉えているやよいの本質をその直感のままに投げてくる傾向が強いというか、動画や文章の表面をなぞっても彼らの見ている世界は見えて来がたいと言うか、そんな気がするのです。一番深いところで結びついているのはやっぱりこの二人なのかもしれないけれど、どちらの深い所もまだ自分に見えないのでわからない、それが自分にとっての現時点でのやよいおりですね。

ではでは、今後も伊織という大器に、少しでも近づけたらなと思っております。示唆に富んだコメント、とても勉強になりました。本当にありがとうございます!
プロフィール

Vinegar56%

Author:Vinegar56%

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
全記事一覧

全ての記事を表示する

検索フォーム
リンク
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数: