流れに乗ってガルシアP作品を振り返ったり振り返らなかったり
NP氏の本棚 Vinegar56%さんのテキスト系中心オールタイム百選をお勧めするお仕事。
徒然なるままに呟き 最近みて気になったニコマス動画
4/13分の新作紹介 - 見る専プロデューサー生活、始めました
【いつも】ぶら樽ネトゲ日記【ニコニコ】 三国志大戦3 BA
あちゃー人気が出てくる前にオススメしとけば良かったーと後悔してるノベマスがありましてな - 続・空から降ってくるので
LIBrary: 「とのばな」シリーズが素晴らしい
狡猾にわた、Vinegar56%の記事がお勧めされているのをアッピールする作戦…ではなく。
ホットですね、ガルシアPの「とのばな」シリーズ。この短期間に、ここまで一本のノベマスがこぞってオススメされるのも、なかなか珍しい。
というわけで、ブロガー界のガルシアPブーム到来? に便乗して、ガルシアPの過去作を並べてみたりします。
もちろん真面目にガルシアPの活動を振り返るならば、SS・ブロガー活動から語り起こさなければならないでしょうが、それは私には荷が重い。あくまで便乗してのっかるだけのお仕事なので、動画を貼るのみに。
ラスト・オーダー 【Novelsm@ster】
処女作ながら、「ノベマスの要素全てに心が行届いた作品ですね」という動画内のコメントが言い表す通り、あらゆるレベルで考え抜かれた構成が光る作品。「期待の新人」タグもむべなるかな。
具体的に挙げるならば、
・音楽
ガルシアP作品の特徴となる、視聴者を作品の世界に惹き込む秀逸なBGM選択。
・立ち絵
BB抜き、グラ改変を駆使し、かつ背景ともども細やかに色調調整を加えて作品の雰囲気を作り上げる、立ち絵加工技術。立ち絵の使用や切り替えの頻度自体は高くなく、絵として、また画面のアクセントとして立ち絵を生かす意識が強い。
・文字表示
一人称の地の文と、会話文とでのフォントの使い分け。また、立ち絵+背景+下面メッセージウィンドウの紙芝居形式を基調としながら、要所で背景画面への文字直接表示を併用して、テキスト情報の強調の仕方にメリハリを加えている。
メッセージウィンドウ左上部の色の使い分け、メッセージウィンドウ内の文字の並べ方の視覚的工夫も、注目に値する。(全画面文字表示の)サウンドノベル形式や字幕形式ではフォントや文字配列のデザイン性にこだわった動画は珍しくないが、メッセージウィンドウ内でこれだけ配慮が凝らされたものはなかなかない。
・演出
要所でのBB立ち絵のカットイン的な使用、シーン切り替え時のエフェクト等、派手ではないが動画にデザイン的な起伏を与える演出。
・簡潔な語法
これもガルシアP作品に一貫する特徴。一センテンスが短く断定的にまとめられ、またセンテンス内も(しばしば単語ごとに)読点によって細かく区切られる。これにより、情報が視聴者にダイレクトに伝わりやすく、またリズムが良いためにストレスを感じずに読む事が出来る。
凝縮された言葉は語られない部分への想像をもたらし、物語世界に深みを与える。
・台詞術
短文でも "そのアイドルらしさ" をうまく印象づける台詞回し。
実力あるノベマス作者の必須条件と言っても良い。
・ゲームに沿うストーリー
ストーリーが、「アイドルマスター」原作の実際のゲーム展開に裏打ちされている。これも、ガルシアP作品にしばしば見られる特徴である。冒頭で、律子がファン数100万人を獲得しながらBランクに終わった事が示される。この時点でまず、ランクアップ必須オーディションを落とした事が想像されるわけだが、実際にこの後に語られていくストーリーは、各アイドルがいつから活動を始め、何ヶ月目でどのオーディションを受け、どのようなランクになったか…、という、実際のゲームであり得る状況に沿って構築されている。
・律子への愛
魅力的で力強い、律子の描写とストーリー展開。
ガルシアPの描く律子は、悲哀や苦悩を知ってなお力強い、常に希望へ向かう爽快な推進力を感じさせる。
・ストーリー構成
複数のアイドルの物語と時間軸を重ね合わせながら、非常にわかりやすいストーリー構成。
なお、メインである律子とPの物語を構成するため、定番のニコマス的なトゥルーED後春香を、定石通り、しかしあまり嫌味を感じさせずに機能させている点も巧緻である。
『ぐるm@s!』 動画祭、開催!
企画の積極的な立ち上げ・参加、またその企画もニコ動以外の媒体も視野に入れて行なわれている点もガルシアPの活動を特徴づけている。
・「15行PoeM@ster」
テキストと動画の関係、また文字と立ち絵の機能を考える上で大変興味深い動画が投稿されている。
詳しい事はこちらの記事を、15行PoeM@ster特集
と、わたVinegar56%の記事を狡猾に自貼れぅ。(これがやりたかっただけ、という説も)
私達のステージ 【青春m@ster】
「青春m@ster」参加作品。
全画面文字表示のサウンドノベル形式、そしてシルエットのみの自作立ち絵という新たな表現手法へ、大きく舵を切った動画。
テキスト動画におけるシルエットのみの立ち絵には、いくつかの効果があると考えられる。ひとつは、顔や肢体の描き込みがなくなり、輪郭のみが意味をもつことによる、画面全体のデザイン性の強調。(えこPフォントを、またそれを駆使した機能美Pや青空文庫Pの作品を想起されたし) 同様に、色が持つ意味も飛躍的に重要度を増す。
ステージにおけるダンスバトルをテーマとする本動画において、シルエットの機能としてもっとも目を引くのが、躍動感の表出である。輪郭のみで、様々なダンスモーションをとるシルエットを映すことにより、その動的な印象が強調されている。この点、ダンスから切り抜かれた立ち絵が作品に動的な力を与えていた「15行PoeM@ster」作品の延長上に位置していると言えよう。
また、ポーズをとったシルエットの並びは(たとえば荒木飛呂彦の「ジョジョ立ち」の立ち絵が雰囲気を醸し出すように)スタイリッシュな雰囲気を動画全体に醸し出している。
上記のような映像面での効果と、熱いストーリーとが合致して、ノベマス史上でも類稀な熱量を感じさせるステージ描写が、構築されている。
逢魔ヶ刻“黒”異変 【第三次嘘大師譚】
「 偶像町幻想百景 」(参照: 偶像町幻想百景まとめwiki)の世界観による3次創作。
ウソm@s作品として始まり、現在第2話までが動画化されている。どちらかと言えば日常風景の一コマの描写がテーマとなることが多かった「偶像町幻想百景」創作の世界において、初めての本格的な伝奇バトルを試みた動画となった。簡潔と凝縮を旨とする文体は、このような題材の描写にもよくマッチする。
オーディション審査員やドラマCDの登場人物など、アイマス原作を踏まえながらオリジナルの想像の翼を付与された、シルエット立ち絵の大人たちの活躍は、『とのばな』シリーズの大人たちの活躍ぶりとよく似ている。とりわけ、町を守る審査員三人組の恰好よさ、強大な敵が迫る威圧感・高揚感は、『私達のステージ』のダンサーたちのスタイリッシュさとバトルの高揚にも相通じ、そこからさらに、魅力的な創作世界を咀嚼しての深化を感じさせ、出色である。
シルエットの効果について、承前。また、顔の表情という、性格や心理を強く印象づける情報を持たないために、代入できる人物像の幅が大きく、視聴者の想像を喚起することで、深みのあるキャラクター造型を印象づけられる。今作以降の顕著な特徴となる、重厚さを漂わせる魅力的な大人のキャラクター描写は、黒いシルエットのもたらす心理的効果とも影響しあっているように思われる。
非アイドルの年長の人間の、立ち絵付きでの描写(描き分け)は、純ノベマスが避け、不得意としてきた分野の一つであり、(武将や偉人が身近な存在である架空戦記、キャラクター間の人間関係がストーリー構築の基盤であるDSノベマスではまた事情が異なる)、ガルシアPのシルエット立ち絵を駆使しての人物描写は、一つのブレイクスルーであると感じられる。
ガルシアP作品を語るならばまだまだ他に言及すべき点はあるが、とりあえず、私がもっとも惹かれるのは、テキストと動画の関係に対して、大きな可能性を孕んだ表現の提示が次々と行なわれている点であり、その軌跡を通してノベマスの新たな世界が切り開かれつつある、と言えるであろう。
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