07~08年のノベマスの話(3):0705~0710 ノベマスの黎明


 ストレートPのことを語ろうと思ってシリーズ化した記事を書いていたのだが、ノベマス全体の話が長引くので、タイトルを変更した。最終的にはストレートPの話に戻ってくる予定である。私は些細なことが気になってどんどん話が脱線する傾向があるので、今後もしばしばこういうことがあると思われる。
 前々回は海月Pの記事を引用して紙芝居クリエーターの登場がノベマス界に大きな変化をもたらしたことを示し、前回は愛識Pの記事を引きつつ、各月ごとのデビューPの人数を調べる事で実際のノベマス界の動向を見ようとしたが、いろいろ問題があって具体的な分析まで至らなかった。
 今回は、07年のノベマスに話を絞って、改めてこの分析を行いたい。
 


0、準備

 ニコマスでは立ち絵とメッセージウィンドウを用いた表現形態のことを、しばしば「紙芝居」と表現する。特に

・架空戦記において、プレイ動画パートと対比してこうしたパートを指す場合
・紙芝居クリエーターで作成した、この形態のノベマスを指す場合

に頻用される。
 重要概念として本論でも用いたいところであるが、これと別に、イラストによって構成された作品を対象として「アイマス紙芝居」というジャンル名があるわけで、「紙芝居」という用語を用いると、場合によって混乱の元になりかねない。従ってこのシリーズでは以下、最初の定義による表現形態を、仮に「グラ芝居」と名付けて呼ぶこととする。

 また、以下で各ノベマス作品を分析するにあたって、そのインターフェースによって、「台詞枠形式」(略して「枠」と表記)「サウンドノベル形式」(略して「ノベル」と表記)「字幕形式」(略して「字幕」と表記)の3形式に区別して分類している。このシリーズにおいて各用語は

・「台詞枠形式」…背景・立ち絵から独立した、専用の区画の上に文字表示する形式
(区画の表示位置や大きさを問わない。ただし区画自体が全画面表示されるものは除く)
・「サウンドノベル形式」…文字を画面全体に、背景・立ち絵に重ねて表示する形式
(縦書き・横書きを問わない。背景・立ち絵がなく画面全体に文字のみ表示する場合、画面全体に広がったメッセージウィンドウを持つ場合も含む)
・「字幕形式」…文字を画面の一部に、背景・立ち絵に重ねて表示する形式
(表示する位置、縦書き・横書きを問わない。背景・立ち絵がない画面の一部に文字表示する場合を含む)

と定義する。

1、07年のノベマスの表現形態

 では、上で定義した用語を利用しつつ07年初投稿のノベマスを見ていこう。前回述べたように、実際の当時のノベマスの概念を知るためには、「Novelsm@ster」タグの成立時期と、各作品にタグが付く時期の分析が必要であるが、私には無理なので、2010/8/26現在でタグがあるもの、すなわち現在ノベマスと見なされているもの全てを対象とする。

1ー1 07年ノベマスリスト

5月 
哀川翔P 5/26~『【アイドルマスター】 春香たちの夜』シリーズ (台詞枠)      
     9/19~『【アイドルマスター】チョットHな春夜 序章』シリーズ (台詞枠/字幕)
     
8月
mmP  (8/26『アイドルマスター 天海春香のお宅侵入(二回目)』)(サウンドノベル)  

9月
井川KP (9/10 『アイドルマスター HANSHIN M@STER』) (台詞枠)
陽一P  9/16『ノベルゲーム風アイドルマスター 「天海春香の憂鬱」』 (台詞枠) 
     11/21~『ノベルゲーム風アイドルマスター 「Bullet×M@sters」』シリーズ(サウンドノベル)
SM@I電機P  9/24~『アイマス顔グラ劇場「走れマコト!」』シリーズ(台詞枠)
ポルナレフP 9/26~『アイドルマスターでベタなラブコメ』(台詞枠)

10月
たりろーP  10/8~『永遠のアイドルマスター』シリーズ(台詞枠)
       10/29~『経営者いおりん』(台詞枠)
双海悠P   10/23~『【アイドルマスター】 「iM@Story」』シリーズ(台詞枠) 

1ー2 各作品の表現形態の特徴

 さて、よく知られている通り、ニコマスにおいてストーリー系2次創作の元祖となった作品が、哀川翔Pの『春香たちの夜』シリーズである。07年5月にこのシリーズが始まってからの半年間で投稿された、合計8人のPによる11のシリーズが、現在「Novelsm@ster」タグを持っている。このうちmmPと井川KPの作品は単発のもので、アイマスネタやアイドル紹介シリーズ等他ジャンルの作品として作られたものが、たまたまノベマスに該当する形態を持っていただけと言える。
 従って哀川翔P、陽一P、SM@I電機P、ポルナレフP、たりろーP、双海悠Pの6人が、もっとも初期のノベマスの形態を示したPということになる。哀川翔Pや陽一Pについて詳しく論じようとすると、また別に一項を立てなければならないが、簡単に各作品の特徴をまとめておこう。
 
・哀川翔P『春香たちの夜」』はその名の通り、ノベルゲーム「かまいたちの夜』をモチーフにした作品で、全画面の背景+立ち絵+下方に黒帯(文字表示用)という形態をとっている。
 注目すべきは、コミュ画像からキャラクターだけを切り抜いた完全な立ち絵の使用、ドラマCDの音源による台詞のフルボイス化等、最古の作品にもかかわらず技術的に多くの特徴を有している点で、ノベルゲーム的な演出、あるいは映画的な演出の表現に大きな力点をおいた作品と言える。

・陽一Pは、9から10月にかけて3つ、台詞枠形式の短編を書いている。背景に原作画像を、文字表示にメッセージウィンドウを用いた点で「グラ芝居」の元祖とも言えるが、背景と立ち絵が分離せず、一度に一人のアイドルだけが表示されてプロデューサー⇄アイドルの一対一の会話で進行する点で、より原作のコミュに近い。2、3作目には「im@s妄想コミュ」タグが付いている。
 一方、11月後半に連載開始した『Bullet×M@sters』シリーズでは、全画面背景+分離した立ち絵+全画面文字表示という、完全なサウンドノベル形式となり、内容も特定のモチーフを持たないオリジナルストーリーとなっている。

・陽一Pより早く、9月にサウンドノベル形式を採用したのがポルナレフPである。こちらも特定のモチーフ作品を持たないが、アイマスキャラでギャルゲーを再現するというコンセプトで作られている。一話目から複数のアイドルが同時に画面に表示されるのはこの作品が最初である。

・10月の双海悠P作品もまた、ギャルゲーの再現をコンセプトとした作品であるが、こちらは台詞枠形式を採用し、動画の最後に選択肢を設ける等、ニコニコ動画上でゲーム性を表現しようとする方向性が強い作品となっている。

・9月登場のSM@I電機Pは、ノベルゲーム的な演出をコンセプトとしていないため、この時点としては異色である。実際に海月Pの記事によれば、かなり後になってタグが付けられたようである。
 当初の画面中央にキャラクター画像と背景画像を並列に並べ、下方に文字表示するの形式から、全画面背景上にキャラクター画像と文字表示用の帯を置く形に移行していき、「グラ芝居」の発祥とも言える作品である。

・10月のたりろーP作品は、(おそらくプレイ動画パートを持たないため)現在「im@s架空戦記シリーズ」が付いていないものの、ゲーム『永遠のアセリア』をモチーフとし、投稿者コメントにも架空戦記であると書かれている。
 同作者の『経営者いおりん』もゲーム『たまごっち』を題材としているが、当時の架空戦記で一般的な、ゲームの世界観にアイドルを組み込む形ではなく、アイドルとプロデューサーが会話しながらゲームを解説・プレイしていくという、より広義の架空戦記あるいは紹介動画の要素を持っている。

1ー3 07年のノベマスの傾向まとめ

 実は私は、陽一Pや愛識Pの存在感が強烈なせいか、紙芝居クリエーター普及以前のノベマス=サウンドノベルが主流というイメージを持っていて、この原稿も最初はサウンドノベル→架空戦記由来のグラ芝居→紙芝居クリエーターという流れで書くことを想定していた。しかし調べるうちにその印象は修正を迫られている。

 初期の「Novelsm@ster」タグ概念の中核が、海月Pが書かれたように「ノベルゲーム風アイマスマスター作品」にあったことは間違いない。ただし、この「ノベルゲーム風」であるということは、各製作者間に共通のコンセプト・方向性があったことを意味しない。
 「ノベルゲーム風」作品を投稿した4人のうち、演出面では、ゲーム性の再現に力点をおいて台詞枠形式を採用した哀川翔P・双海悠Pに対し、陽一P・ポルナレフPは「読ませる」ことを重視したサウンドノベル形式を取っている。一方で作品内容においては、「アイマスキャラによるギャルゲー」を狙ったポルナレフP・双海悠Pに対し、ミステリーでかつドラマ的・映画的表現への志向が強い哀川翔P、ライトノベル的なものへの志向が強い陽一Pということで、4人の方向性はバラバラである。
 結果的にノベルゲームに範を取った作品が増えていったため、「Novelsm@ster」という統一されたジャンルが生じたものの、「im@s架空戦記シリーズ」ジャンルが特定の作品からの影響関係や流れで成立したのとは違い、当初からジャンル内に広い範囲の表現が内包されていたと言えよう。
 また、

・コミュの改変、捏造…陽一P『ツンデラーのリスト』他、たりろーP『経営者いおりん』
・グラ芝居…SM@I電機P『走れマコト!』
・架空戦記とのボーダー上に位置する作品…たりろーP『永遠のアイドルマスター』

と、その後のノベマスで増えていくサブジャンルの嚆矢となる作品が、上記の「ノベルゲーム風」作品と並行して既に登場していることも指摘である。
 それがどれほど認知されていたかは別として、後の「Novelsm@ster」ジャンルが示す多様性の萌芽は、07年のニコマスの中で既に出現していたと言えるのではないだろうか。
                                   (続)




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