個人的ニコマス視聴史5.5あたり:私が一番最初にマイリスしたアイマス作品


NP氏の本棚 私が一番最初にマイリスしたアイマス作品
おしるこ屋 【勝手に便乗】私が一番最初にマイリスしたアイマス作品

 こちらの二つの記事を読んでいて、私も自分が一番最初にマイリスしたアイマス作品のことを思い返していました。その動画との出会いは、私のニコマス視聴歴の中のある時期の思い出と深く結びついています。それはいつか書きたいなと思っていたことでもあるので、せっかくなので便乗して、というには少々遅れていますが、今書いておきたいと思います。



 それは08年の秋か冬か。隆盛を極めていたタミフル・ストレート・ペデューサー一派のノベマスに私が出会って、しばらくが経った頃。
 当時の私には、アイドルマスターというゲームについても、ノベマス以外のアイマスMAD(「PV」という言葉すら、まだはっきりと認識していない)についても、全く知識がありませんでした。だから、動画やコメントの端々に現れるアイマス関連の話題は、すべて未知の世界でした。
 アイマスについてもっと知りたいという欲求は次第に私の中で高まっていき、そしてニコニコ動画の中ではに触れたような出会いがありましたが、次に私は、アイマス動画について教えてくれるサイトがないかな、と考えます。
 私の最初の出会いの探し方は、いつも、とても単純でした。他に方法を知らなかったからです。この時もそうでした。「アイマスMAD」でヤフー検索。おそらく、そうしたのだと思います。今の私なら「アイマス」よりは「ニコマス」で検索するでしょうが、当時の私には「ニコマス」という言葉すら馴染みのないものだったのです。

 こうして、ある一つのサイト(「紹介系ブログ」という概念も、まだ私の中にはない)と、私は出会います。

ティンときた! -勝手にまとめるアイマスMAD-

 それはまさに、未知との遭遇でした。なにしろその時の私は、アイドルたちの名前をフルネームで正確に言えるかすら怪しかったのです。紹介されている動画、作者の名前、「特徴」と題されて動画ごとに付けられたさまざまな用語、文中に飛び交う言葉…、知らないことばかりでした。それはニコマスを形作る動画群との出会いでもあり、ニコマスを形作る概念群との出会いでもあり、「ニコマスを語る」という行為、「語られるニコマス」という事象との出会いでもあり…。
 最大の衝撃は、それが「現在進行形で動いているニコマス」との出会いであったことかもしれません。それまで、私にとってニコマスとの出会いとは、常に、既に存在するものを後から追いかけていく行為でした。ところが、そこにあったのは、今週こんな動画が生まれ、こんなことが話題になり、そしてそれのここが凄いんだ! という、今そこにあって動いている存在としてのニコマスでした。
 どんなにか私の目に、その世界が輝いて映ったことでしょう。圧倒的な熱量を以て描き出されるその世界に、知らないことだらけの私をも共振させるその明快な言葉に、どれだけ魅き付けられ、胸を躍らせたことでしょう。

 こうして、「ティンときた! -勝手にまとめるアイマスMAD-」は、私の生活の中の、欠かせぬ一部分となりました。長きにわたって(実時間としては半年ほどの間)、そこは私にとってニコマスを教えてくれる先生であり、行く手を指し示す羅針盤であり、ニコマスそのものでもありました。
 「Novelsm@ster」タグで馴染みの作者の新着をチェックし、ごくたまに気を引かれた未知の新作に手を出し、幾人かのノベマスPのブログを巡回し、何度も見ているお気に入りの作品を見返し、最後に「ティンときた! -勝手にまとめるアイマスMAD-」を訪れて紹介されている動画を見る。これが、09年上半期における私の日課でした。
 今でこそ私は、少なくともアイマスと名のつくものなら何でも抵抗無くみていますが、元来は保守的な性向の人間で、自分から積極的に新しいものを開拓しようとする方ではありませんでした。だから、頼りになる羅針盤を一つ手に入れた上は、別に新しい羅針盤を見つけよう気にはなかなかならず、従ってこの羅針盤が見せてくれる世界は、ニコマスそのものでもあったのです。
 
 当時の私が「ティンときた! -勝手にまとめるアイマスMAD-」からどれだけ多くのものを受け取ったか。書こうと思えば、いくらでも書くことはありますが、なかなか書きにくいことでもあって。それは、私が書きたいのはあくまで、動画に対してファンとして文章を書くのと同じようにファンとして書く文章なのですが、今私が紹介系ブログについて文章を書くと、どうあれそれは"ブロガーがブログについて書く文章"になってしまうからです。

 ただ、一つだけ、述べるならば。キリコさんという方のどこが凄いって、凄いところはたくさんあるのだけれども。一番凄いのは、そのいろんな凄さが、最終的に「読者にこの動画を見たいと思わせる」方向に全部集約されていたところだと思うのです。
 それは、文章や、そこに籠められた情熱や洞察は勿論そう。更新速度や紹介量もそう。それだけでなくて、たとえばスクリーンショットやGIFによる、絵で動画を表現する仕事をブログにおける"PV系"、文章で動画を表現する仕事をブログにおける"テキスト系"とおくならば、そのPVとテキストとの融合。あるいは、情報をいかに整理して一つの画面の中にまとめるか。テキストをいかに視覚的に見せるか。そういう、ある時期からテキスト系の動画において重要なテーマになってくること。それを、そのずっと前から、動画紹介という形で表現していたのが「ティンときた! -勝手にまとめるアイマスMAD-」というブログですが、そうした諸々の工夫で構成された記事は最終的に、動画を見たいという気持ちを喚起することに集約されていたのです。 
 なんでそう断言するかって、現にこうして動画を見たいと思わされ続けた読者が、ここにいるからです。


 さて、お題の話、「私が一番最初にマイリスしたアイマス作品」の話です。
 月日は経ち、09年の夏。いつものように記事を楽しく読んでいた私は、最後に紹介されている一本の動画に目を留めます。

ティンときた! -勝手にまとめるアイマスMAD- 今日のチラ裏 090701

一人のPが、ニコマスを引退する最後の挨拶として、16日間限定で公開した動画。
それが私と、tenPの「アイドルマスター 春香 エターナルワールド(初音ミク)との出会いでした。

tenP 「アイドルマスター 春香 エターナルワールド(初音ミク)」 (09/6/30)

 ドレスの春香と普段着の春香が交互に、初音ミクの歌う歌で踊る。本当に、ただそれだけの動画。ただそれだけで、こんなに素敵な魔法がかかるのです。
 ダンスが、ただ快感を呼び起こすだけでなく、これほどに意味を伝えられるものであることを、それもこんな風に優しく言葉を投げかけられるものであることを、そして春香さんがこんな風に柔らかく軽やかに微笑む娘であることを、私はこの別れの歌とともに、初めて知ったのです。

 不思議な動画です。優しいのです。そう、この動画は、なにもかもが優しい動画でした。歌われているのは、まぎれもなく別れの挨拶なのに、この動画の春香さんは、どこまでも優しくて、軽やかで、そして幸せそうで、動画全部にあたたかな空気が満ちていました。だから、あの時の私の心情を、心を奪われたとか、夢中になったと表現すると違う気がします。ただ、愛しかったのです。今この動画にいる春香さんが、愛しくてたまらなくて、それから私は、毎日この動画に通いました。

 記憶は日々薄れていくけれど、それでもあの時刻み込まれたいくつものイメージが、今でも目を閉じると浮かび上がってきます。高く掲げた腕をゆっくりと降ろす春香さん。目を閉じながら頭を振る春香さん。微笑みながら結んでひらいてのポーズでバイバイする春香さん。それらはまるで、この動画とこの歌とともに踊られるためにこの世に生まれてきたように思われました。やがて私はノーマルPVを見るようになって、それらの振りと再会しましたが、今でも私がこれらの振り付けを見る度真っ先に思い出すのは、この動画のこの春香さんなのです。

 けれども、「エターナルワールド」と共にあった、そんな短くて長い毎日にも、終わりが近づいてきました。
 動画削除が予告されていた日の前日、何もせず、ただ黙ってそれを見送るのが堪え難くて、この素敵な動画と出会えた喜びを、感謝の気持ちを誰かに伝えたくて、自分がここにいたということを残しておきたくて、だけど、私にそれを表現する場は無く、長文のコメントを動画に残す勇気もなく、私にできることは何もなくて。
 私にできたのは、まったく、本当に、ちっぽけなことでした。この動画についた、最後から3番目、ただ「ありがとうございました」とだけ書かれたそっけないコメント。これが、私のものだったはずです。これが、当時の私に書けた精一杯でした。
 それから私は、ついぞ開いたことのなかった自分のマイページを開き、自分のマイリストというものを生まれて初めて作り、この動画をそこに登録しました。
 私には何もできないから、せめてこうしてこの動画をここに残して、何年も後、誰も彼もがこの動画のことを忘れたとして、たとえそれがマイリス数「1」というたかが一つの数字分だけであっても、この動画を大切に思う気持ちがここにあると示せるようにしたい、そんなことを私は考えていました。

 こうして、tenPの『アイドルマスター 春香 エターナルワールド(初音ミク)』は、私が初めてマイリスした動画となりました。

 そして、とうとう動画が消えた、その日。
 昨日と同じように、ブラウザを開き、この動画を見て、春香さんが踊り終えて、あとはブラウザを落としてさよならするだけという段になりました。明日同じようにこの動画を見てももうこの春香さんには会えない。私がウィンドウを閉じたその瞬間に、いまここにいる春香さんは、永遠にこの世から消えてしまう。
 それを想像した時、惜しくてたまらなくて、恐ろしくてしょうがなくて、どうしてもその行為が、私にはできませんでした。私は、それを消し去る覚悟ができるまで、決断を先延ばしすることにしました。ウィンドウを閉じず、電源を落とさないままPCを閉じたのです。
 それからほんのひと時の間、PCを開けたら、その日のまま時を停めているこの動画を見て、何もせずまた閉じる、それが私の日課になりました。しかし、何日かのち、いつものように動画を見終えた後、無意識の動作でウィンドウを「閉じる」ボタンを押してしまい、慌てて開き直しても、もはやそこに映っているのはただ真っ黒な画面だけ。tenPとtenPの動画は、私の届かない場所に去ったのです。
 思えばそれは、私が「動画が消える」瞬間を、自分自身で体験した初めての経験でした。

 私は、動画をローカルで保存する、ということをしません。すべての動画は、すべてが一期一会であるという点において、私の前で平等です。それはひょっとすると、この初体験となにがしかの関係があるのかもしれません。


ジンジャーP 【初音ミク】 エターナルワールド 【オリジナル曲】 (08/11/25)


 今でも時々、この歌を聴きます。私が知るVOCALOIDの歌の中で、一番好きな歌です。そして、聴くたびに、この歌とともにいる春香さんのことを思い出します。ニコマスで私は多くのものと出会い、出会いはいつでも歌とともにあります。歌はアイドルとともにあり、アイドルは歌とともにあります。なんと素敵なことでしょう。


 話はこれで大体おしまいですが、その後のことを、少しだけ。
 私があの日、tenPの「アイドルマスター 春香 エターナルワールド(初音ミク)」のためだけに作ったマイリスト。「新しいマイリスト(1)」と題されたままのそれは、それからしばらくの間、削除動画一つのみを載せて仕舞いこまれていました。私が自分なりに好きな動画を集めたマイリストを作りたいと思い立つのは、もう少し後のことです。そして、私が紹介系ブログの世界を知り、次第に動画の見る専から、動画見る専兼ニコマスブログ見る専ともいうべき視聴者になっていくのは、ちょうどこの動画と出会い、別れた頃だったでしょうか。それはどちらも、私とニコマスとの関係を大きく変えていくできごとでした。

 私はいまのところ、ニコマス視聴者の中で、一番最後にtenPと出会った人間の一人になるのでしょう。tenPがどんな人でどんな動画を作ってきたのか、私は知りません。ただ大百科の記述によって、在りし日を偲ぶのみです。
 けれども、私はtenPが作った一本の素敵な動画のことを、知っています。この地上にただ16日間だけいた、素敵な素敵な春香さんのことを。
 その春香さんと出会えたのは、キリコさんという方が書いた、ただ一本の記事と出会えたからでした。この人がいたから、この一言があったからこの動画と出会えた、この出会いを何倍にも素敵なものにできた。そんな素晴らしい出会いを、私は何度も体験してきましたが、誰よりも長く、誰よりも多くそんな出会いを導いてくれたのが、「ティンときた! -勝手にまとめるアイマスMAD-」というブログだったのです。

 今、私の一番古いマイリストを開くと、何百と並べたなかに、他より何ヶ月も古い登録日付になっている動画が、ぽつんと一つあります。それはまるで、奇跡そのもののように、私の目には映ります。
 tenPという方がニコマスで動画を作り、キリコさんという方がニコマスで動画を紹介し、私という人間がニコマスと出会い、キリコさんと出会い、tenPと出会うことができた。一体どれだけの奇跡の積み重ねによって、私はこの動画と出会えたのでしょう。
 だから、動画が消え、記憶が薄れつつある今も、ここは私にとって出会いの記念であり、ニコマスと出会いはじめた頃の、ある時代の思い出の記念でもあります。ここにこの動画があり、私がそれに出会えたという縁が、いまでも、いつでも、私を幸せで包んでくれるのです。
 そして私は、この縁を生み出してくれた人、この縁を導いてくれた人に感謝します。いつまでも。


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