20選novelsm@ster巡りの御礼 / 何にもない、がある


 先週上げました「2010下半期ニコマス20選novelsm@ster巡り」という記事ですが、多くのブロガーの皆様、ニコマスPの皆様に温かくご紹介、反応をいただきましたおかげで、当ブログとしては考えられないほど多くの方にご覧いただけたようです。以下にご紹介、言及くださったブログ記事を記させていただきますが、もし私が把握していない方がいらっしゃいましたらごめんなさい。

Augenblicke:独断と偏見による2010下半期ニコマス20選Pick Up(2/2)
NP氏の本棚 彼女たちの斜め上から
ただそのために 現在『とにかく大好きなアイマス動画一本』アンケート開催中です
プリズムルート876:原作準拠主義の懺悔文とか色々
赤ペンPの添削日記 つまりは、貴方の祈りを。<その1>

皆様、本当にありがとうございました。また、取り上げさせていただいた20選参加者の皆様、ご覧いただいた皆様、コメントいただいた皆様も、ありがとうございました。他の記事も含めまして、コメントをいただいた方には、返信が遅くなりまして申し訳ありませんでした。

 さて、件の記事は自分自身の2010年の振り返りも兼ねていて、盛り込める話は全部盛り込んでしまえ、みたいなノリで書いていたので、こうして反応があってみると、説明不足だったり過程をすっとばして結論に至っていたりする箇所がちょくちょくあります。殊にペンタPからは真剣な長文の反応をいただいたりもしているので、これからいくつか件の記事の補足的な内容(に、なるといいなあ)の記事を書こうと思っております。


 さて、そんなわけで、と言いつつあんまり関係がなかったりする話題を一つ。言及をいただいた赤ペンPの記事は、どきゆりPの「結ぶ祈り」について語られたものですが、20選でのどきゆりPについてのマイリストコメントを拝見した時から連想していた別の動画があったので、ちょっとだけその動画を絡めた話をします。うん、ただの乗っかり記事ですね。まあ、一週間ぶりの更新が御挨拶のみというのも気が引けたので加えた、オマケのようなものです。



 以下の内容は、要するに「赤ペンPの記事を読んで、ああそういうことかと目から鱗の思いでした」というだけのことなので、赤ペンPの記事を読んだ方にはもう言う事がない、のですが、それでは記事にならないので、とりあえずマイリスコメントの方から一部だけ引用して進めたいと思います。

「絵の力が間を繋ぐ。その間の中で、見ているほうが勝手に頭を廻らせ色々考える。その頃合を見て状況が動く。それが決して突拍子のない事ではなかったとしても、動いた事でまた見ている側が考える。」
         (赤ペンP2010年下半期15選 どきゆりP「9月なのに暑い」へのコメントより)

 で、このコメントを読んで私が連想したのが、こちらの動画でした。

不在P プロデューサーのいない ある日の風景74


この不在Pの動画は、以前のノベマスpickup記事で取り上げて、その面白さがうまく説明できずにえらく苦労した動画でした。当時の自分のコメントに、

「不在Pの動画といえば "間" そして "投げっぱなし" が売り。
ですが、この動画に至っては3分間のうち2分40秒は白黒の一枚絵が映っているだけ。台詞も少なく、最大で20秒前後、何の台詞も表示されない時間があります。要するに視聴者は、20秒間何も動かない絵を見つめているだけで、それを面白いと感じているわけです。もはや普通に "間が良い" "間が特徴的" で形容できるような状態ではない気がします。」

と、ある通りで、何が写っているのかも判然としない白黒の一枚絵があって、たまに

律子「ねえ。 あんたいつもこんな事してるわけ?」
美希「うーん…… いつもじゃないかな。月に5、6回くらい」

などというどうということもない台詞が表示されるだけ、という動画。
動きがあるのが絵か、文字かという違いこそあれ、基本動かない・別に何も起こらない・何も説明されない・なのに面白く感じる、というこの面白さは、どきゆりPの「9月なのに暑い」「結ぶ祈り」と良く似たものを感じます。

 この両者の動画で起こっていることを見事に説明しているのが先述の赤ペンPのコメントです。「間の中で、見ているほうが勝手に頭を廻らせ色々考える。その頃合を見て状況が動く。」。
「間」という表現はノベマス等を語る時に時々出てきますが、この場合、それは全体が作品足り得ているから結果として「間」と呼ばれているだけで、それ自体はようするに、何も起こらないだけの時間です。何らかの力によって、何も起こらない時間にも「見ているほうが勝手に頭を巡らせ色々考える」状態を作り上げる。そしてその、何も起こらないのに「見ているほうが勝手に」考える状態が維持できる、ギリギリの「頃合い」に「状況が動く」。

 まず、この何も起こっていないのに「見ているほうが勝手に頭を巡らせ色々考える」力が、両者の動画の特徴になります。どうやって二人はその力を動画に与えているか。どきゆりPについては、赤ペンPが指摘されている通りですね。「絵の力」です。(えーと、ここでまた別の所から文章を引用して、「絵の力」について少し書く予定だったのですが、今出典の本を探し当たらなかったので割愛。)
 では、不在Pの方はどうでしょうか。不在Pの場合には、「この動画は不在Pの動画である」という前提知識そのものが、その力になります。不在Pは、「"間" そして "投げっぱなし" が売り」と、既に私は書きました。"間"が特徴的、"投げっぱなし"が特徴的。すなわち、普通の動画ならそろそろ台詞が入るだろう、というタイミングで台詞が入らない。こんな出来事が起こったら説明が入るだろう、と思ったら説明が入らない。最後にはオチがつくだろう、と思ったらつかない。常に視聴者の予測を少しずつ外して動いてくる面白さ。
 こうして、不在Pは視聴者の予測を外してくる人で、独特の"間"の持ち主で、だから何が起こってもおかしくない、と視聴者が予見することで、「見ているほうが勝手に頭を巡らせ色々考える」素地が出来上がります。どきゆりPもまた、以前からシュールな作品を作る人として知られていますから同様の事が言えますが、「絵」という要素のない不在Pの動画において、このことはより顕著だと言えるでしょう。
 
 次に、「頃合いを見て状況が動く」。これも重要な所です。
 我々がニコニコ動画で見て楽しもうと思っているものは、"動画"です。「動く」ということは、何らかの説明が可能な状態、ストーリーを読み取ることが可能な状態、すなわち視聴者に取って理解可能な状態です。動かない・何も起こらない時間は、その逆。視聴者は作者の作り出した何も起こらない時間を、"まーたこの人はこんな理解不可能なことをして"と笑いながら見ていますが、同時にその理解不可能な状態が、いずれ理解可能な状態に変化するだろうという期待を持って見ています。だからこそ、前回の「動き」と次回に起こるべき「動き」の、文字通り「間」を埋めるために想像力を働かせる。ところが、次に起こるべきと予測していた「動き」が全く起こらなかったらどうなるか。視聴者は、完全に理解不可能な存在を理解可能だと思い込んで面白がっていた事になります。
 "もしかしたらこの動画には本当に何も無いのではないのか・理解不可能な存在なのではないか"という、面白がっていた前提を突き崩されるかもしれない不安。その不安が頭をもたげてきて、視聴者が面白がりながら想像力を働かせる状態を維持し続けられなくなるギリギリのタイミングで、どきゆりP・不在Pは「状況」を「動」かす。だからこそ、「それが決して突拍子のない事ではなかったとしても」視聴者の心理に大きく作用し、「動いた事でまた見ている側が考える。」ことになります。
 ここに視聴者の想像力を介した、作者と視聴者の共犯関係とも言うべきものが生まれます。"一見理解不可能だけれど、最終的には自分に理解可能な(=面白がれる)球を投げてくれる作者"と、"理解不能な部分を、ちゃんと想像力で補って面白がる事の出来る自分"の共犯関係。これらの動画がシュール、シュールと言われつつ、実際には多くの人に受け入れられ面白がられているのは、ここらへんが理由である気がします。

 この共犯関係が行き着く所までいくとどうなるのか。最終的には、タイトルも説明文も絵も文字も音もない"動画"を眺めて面白がる、というあたりになるんでしょうか。現時点でも、蜂矢氏あたりがやると作品として成立してしまいそうで怖いですね。
 なお、触れるタイミングがありませんでしたが、コメントというニコ動の機能が、動画で何も起こらなくても"間"が維持できる状態を、持続させる方向に働いていることは言うまでもありません。

 これで大体終わりなのですが。これ、本当は「絵の力」で惹き付けるどきゆりPと、絵すらないことで惹き付ける不在Pの対比、みたいなことが主眼になって、独自性を主張したい部分になる筈だったんですけどね。いまいちうまくいきませんでした。
 ちなみに途中で出てきた引用したかった文章は、赤瀬川原平がダリの絵について書いたものです。ダリはまずその絵の細密さ克明さ自体が凄いのだ、まず絵自体に凄いと思わせる力があった上で内容の凄さがあるのだ、みたいなことが書いてあって(当然ながらうろ覚えです)、ちょうど赤ペンPの記事でダリの名前も出てきているし御誂え向きだふふふ、とか思ってたんですけどね。見事に頓挫したわけです。
 まあそんなところで。私は赤ペンPの記事の次回をwktkする作業に戻ります。


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